(1月某日)

 ビジネスマン・クラス。倉敷の掲示板での渡辺慎二師範代@浦和同好会とのサプリメント談義が参考になると考え、整理してプリントアウトし、配って説明した。中にはすでに掲示板を見て稽古後に栄養分(ウィダー・イン)をとったところ、大変快調だったと報告してくれる人もいた。配った内容は以下の通り(渡辺師範代、書いちゃっていいですよね?押忍!)。

               *                *

 いつも稽古ご苦労様です。さて、このところビジネスマンクラスの稽古内容が激しくなっていることがあり、一部からは翌日に疲れてしようがないとの声も聞こえるようになりました。そこでとりあえず、サプリメントの知識について共有したいと思います。サプリメントは不自然で嫌だとお考えの方もおられるかもしれませんが、そもそも我々の稽古は、年齢からいえば基本だけでも十分な量です。そのうえ投げたり殴ったり蹴ったり息があがるほど暴れているのですから、破壊されたビタミンなどは不自然なほどに補充してやる必要があるかと思います。以下は倉敷支部の掲示板で浦和の渡辺師範代が開陳して下さったサプリメントにかんする知識です。ご参考まで。

(渡辺)まず第一に練習後にきちんと栄養(=食事)を取ってください。できれば30分、最悪でも1時間以内にです。30分っていうとずいぶん時間があるような気がしますが、練習終わって整理体操のストレッチとかやってシャワー浴びて着替えてとかやってると、あっという間ですよ。もう感覚的には練習「直後」です。

・・・私のトラブルの最大原因はこれでした。それまで私は独身で外食してたので練習後にすぐ食事が取れていたのですが、結婚してからは家で食事をするため練習後1時間半とか2時間、何も腹に入れてなかったのが悪かった。知識としては「練習後の栄養補給の必要性」を知っていたものの、それを守らないことでこんな痛い目に会うとは知らなかった。「何でこんなに疲れるんだろう。何でこんなに急に体力がダウンしたんだろう」って不思議でしょうがなくって「もう俺の体は限界か」って当時はすごく悩んでました。おにぎり一個、ジュース一杯腹に入れるだけでも全然違います。これは是非やってください。

 第二にはビタミン,ミネラルの多量摂取です。私はベジタリアンと言うわけではないですが、普通の人よりかなり野菜好きな方ですが、それでも運動量に比してまだ足りてなかったようです。今の野菜は連作や科学肥料の悪影響でビタミン,ミネラルの含有料が昔のものとは比較にならない位に減っているそうです。特に運動量が増えるとそれに比例して活性酸素の発生量が急増するので、この件についてはサプリメントの力を借りる以外には方法はないような気がします。余談ですが活性酸素はアルコールでも大量発生します。BCの方達は練習後ちょっと一杯という人が多いでしょうからこういうのはダブルダメージになります。

 第三は普段からの水分補給です。練習時には特にです。良く運動をする人の筋肉中の水分量は通常人よりも低目です(=平たく言うと慢性的な脱水症状気味。最近流行の体脂肪計は体の電気抵抗で脂肪率を測るが、高級機種になると「アスリートモード」というボタンがついている。つまり体水分が少ないので常人と同じ計算式で電気抵抗が測れない為)。この為パフォーマンス向上の為に積極的に水分を取ろうとする「ウォーターローディング」を唱える学者もいます。更に余談が続きますがクレアチンの効果の一つに筋細胞の水分保有量のupがあります(クレアチンで除脂肪体重がupするというその正体はこれ)。本題に戻すと練習中は水分と共に血糖値維持の為に糖分も意識した方が良いですね。スポーツドリンクなどを積極的に飲みましょう。もう少しマニアックになるとアミノ酸レベルの維持も加えたほうがいいかも。

 第四は練習前の食事。通常練習は夜7時位からだと思いますが、昼食を1時に取ったとしても6時間はエネルギーと栄養が補給されないことになります。自分の胃腸の消化能力と相談して、2.5〜3時間位前に軽くでも良いから食事を取りましょう。

 んー、取り敢えずこの位でしょうか。参考までに、これらを私がどう実践していたかを次回書こうかと思います。

TEAM U 渡辺)私の場合のサプリメントの実践についてです。

昨年のカムバック前のある日のパターン。

7:20 朝食+プロポリス・・・・@

10:00 プロティン・・・・A

12:00 昼食(会社の仕出し弁当+パン)

16:00 パン+プロティン・・・・B

18:30 オーバードライブ、アミノ酸・・・・C

18:30 トレーニング開始、オレンジジュース・・・・D

20:30 トレーニング終了

20:45 オーバードライブ、アミノ酸、オレンジジュース・・・・E

21:00 立ち食いそば・・・・F

22:30 夕食

24:00 プロポリス

@プロポリスは以前書きました体の免疫力を高める効果のあるサプリメントです。

Aこの時は増量中だったので間食代わりにプロティンを取ってます。

B夜の練習前のエネルギー補給の食事です。パンじゃなくてバナナ等の時もありました。

Cオーバードライブは活性酸素消去に絶大な効果を発揮するマルチビタミン剤の一種です。長田先輩に紹介されてから、積極的に取ってます。これを練習の前後に飲むのと飲まないのとでは次の日の疲れがホントまったく違うのが実感できます。アミノ酸は血中のアミノ酸レベルの維持の為。以前は「高強度,短時間のトレーニングでは糖質がエネルギー源になり、低強度,長時間のトレーニングでは脂質がエネルギー源になる」と言われていましたが、実際にはどのレベルのトレーニングでもある程度蛋白質(アミノ酸)が使われる(例えば軽いジョギングでも10%程度が蛋白質からのエネルギーを使う)そうです。その為の補給。

D練習中は水分と血糖値維持の為、100%オレンジジュースを2〜2.5倍に薄めたものを、随時飲みます。通常のスポーツドリンクを飲んでも良いのですがショ糖ベースのものだと糖の吸収が早すぎて血糖値が安定しないので、果糖ベースのドリンク(exエネルゲン)を飲む方が良いです。私は人工物よりやはり天然物を取った方が良いのではと思い、上記のようにしてます。これくらいだと通常のスポーツドリンクと同程度の濃度(吸収性)になります。

Eここで飲むオレンジジュースは100%そのまま。100%フルーツジュースは便利ですよ。炭水化物の補給になるし、ビタミン取れるし、クエン酸も取れる。飽きたらリンゴやグレープフルーツ等、味を変えられるのもGOODなところですね。

F増量中の為と本当の夕食まで時間がある為、軽食。

通常の場合ならAとFはいらないでしょう。Eはチョコバータイプのサプリメントなんか手軽かも。体を絞りたいなら全体の食事を軽めにして練習前にVAAMとか良いかも。

(松原@総本部) > 渡辺さん、詳細な体験情報有り難うございます。さっそくプリントアウトして次回のBCでみなさんと相談いたします(当方にも王者・稲垣さんに処方してさしあげている鈴村君というサプリメント&ウェイトの鬼がおりますもので)。さて、拝見していて、サプリメントに関しては私もほぼ同感でした。私の場合は、@稽古前にアミノ酸飲料(VAAM)を飲む、 A稽古終了時の十分なクールダウン、ストレッチ(ヨガ式)B終了直後にマルチビタミン、アミノ酸タブレットをクエン酸(スポーツジムで購入した粉末のもの。当初はリンゴ酢を飲んでいたが、現在はこれをレモン・ハイで溶かす)で飲む、といった具合にやっています。Aはサプリメントではありませんが、乳酸の排出ということではクエン酸と同じかな、と思っています。マルチビタミンはオーバードライブがなくなってから手元にあるやつを飲んでいますが、戻した方が良いかと思っています。以上、まったく素人の考えでありますので、大間違いならはずかしいですが、私の場合はこれで疲れなくなりました。

 

(秋山選手@倉敷支部)

昨日の稽古の後に、次の日に疲れを残さない食事というものを試してみました。まず、稽古が終わってすぐに(15分以内)にパンのひとかけらでも口にする。ウエイトトレーニングもしたので、ウエイプロテインをすぐに補給する。その際に、クエン酸を多く含むオレンジジュースでプロテインを溶かす。

すると、今朝は寝起きが良かったです。もう何回か試してみましょう。

 

TEAM U 渡辺) >松原さん

クエン酸ドリンクって「メダリ○ト」? それとも「リトルマジ○ク」?

別にどっちでもいいですが、もしこの手のたぐいのものを買っているなら、お金の無駄だから即座に止めましょう。

何故って、これらの内容物のほとんどはクエン酸を飲みやすくするための糖分と若干のビタミン等です。糖分は最初からスポーツドリンク等に溶かせばいいし、ビタミンは既にオーバードライブなどで取っている。だから実際にはたった6gのクエン酸の為に一袋¥300を払っているわけです。

だったら最初からクエン酸そのものを買いましょう。薬局で「クエン酸ください」って言えば、500g=¥1000で買えます。びっくりした?

(松原@総本部) 私が飲んでいるのは純粋クエン酸と○トル・マジックです。家では前者をジュースで割っています。もともと極真に在籍する知人の薦めがあってリンゴ酢や黒酢を飲んでみたのですが、効果はあるもののこちらも味の調整が大変で、それからは外での稽古後帰宅までに時間がかかる場合にはジムで買った○トル・マジックを愛用してきました。これは確かに割高ですが、袋に入っているので詰め直す必要がなく持ち運びが簡単なんですね。

 

(1月某日)

 24日、加藤清尚さんにお誘いいただき、東京・後楽園ホールにシュートボクシングを見学に行く。「シュートボクシングと散打の対決」が今回のテーマ。三月に北京で散打の中国ナショナル・チームの合宿があり、それに大道塾からも選手派遣が検討されていて、現在参加が決まっている名古屋の大川選手もわざわざこの試合を見るためにやってきた。先日引退式を行ったMAキックの港太郎選手が後ろの席におられ、加藤さんと談笑。この方、ぼーっとしていてつかみどころがないと格闘技マスコミには書かれていたが、私も少しお話させていただいた限りでは、大変まともな会話のできる人、という印象だった。礼儀正しく受け答えもしっかりしている。マスコミ受けする大言壮語が少ない、というのをマスコミの都合で言い換えるとつかみどころがない、ということになるのだろう(こうした経験は少なからずあることで、事前には報道からいやなヤローだと思っていた宅八郎氏に実際に会ったところ実に生真面目な応答をする常識人だと好感をもったことがある。ナイスガイだと思っていた小林よしのりが人間のクズだったのとは対照的だった。)

 さてシュートボクシング対散打だが、純粋打撃系のキックやムエタイとはかみ合わないと判断したシュート協会がグローブでの立ち技で投げ有りという共通点を持つ流派の対抗戦に今後の展開を求めてゆく中で選んだ相手なのだろう。ロシアのドラッカとも同様の対抗戦を進めるということらしい。しかし、ドラッカにキックボクサーが多いことからも分かるように、両者はなるほど似ている。しかし私の理解では、散打とシュートでは水と油である。前者はあくまで投げが中心で、それも柔道やレスリングのような大技ではなく相撲のいなしや小股掬いのような投げを得意としている。そうした小さな投げでポイントをかせぐ競技なのである。しかしこれにも言い分はあって、昨今の総合格闘技を前提とすれば、とにかく投げて上になればよいわけだ。他方シュート・ボクシングでは、バックドロップのたぐいの大きな投げしか認めていない。こちらは下が固い地面である場合にきかせるという想定なのだろう。つまり両者に然るべき見識があるのであって、事前によほどしっかりしたルール調整をしないと興業として盛り上がるのは難しいと思われた。私の予測は、シュート勢が打撃を出すたびにころころこかされて、しかもそれはポイントにとってもらえず、客はちゃんとやれーと怒りだしてモメるという筋書きであった。しかも散打勢が国家から正式に渡航を許されるということは、文部省に当たるところと折衝したのだろうから、きっと末端の選手・コーチまでにはどのようなルールの試合かは伝わっていないであろう。木本さんのいう「散打ハク撃」のつもりでやってきているのではないか。(ちなみに今回やってきた「武装警察」というのは、長春の張先生のルートで私が93年に北斗旗に演武で呼ぼうとして、直前になりギャラ・アップを求められ招聘を断念した団体だと思う。)

 案の定、ルールは会場入りしてからが大モメだったらしい。通常の5分、4分、3分の3Rに延長2分、1分、ヒジヒザ有りというシュートのルールが変更になり、4分、3分、3分の3R、ヒジ打ち、ヒザ蹴り無しというルールとなった。加藤さんによるとシュートの選手は直前になってルールを散打有利にされたということで、相当に怒っていたという。けれどもこれは推測にすぎないが、散打側にとっても同様のことではないか。まず来日以前にはどのような試合形式かはまったく選手は知らなかっただろう。彼らは細かく投げてポイントを取ることを目指しているのだから、それを得点にしてもらえないなら試合にはならない。投げは相当に疲れるから、5分1ラウンドは無理だ。ただしヒジ・ヒザにかんしてはまだ交渉の余地はあったと思う。彼らもムエタイとの対抗戦ではその要求を飲んでいるからだ。

 で、試合だが、これも予想通りになった。一方的に中国人が技をしかけるだけで、シュート選手は何もさせてもらえないのだ。まず玉杰(散打女子52Kg世界王者:中国少林寺散打)vs角田紀子(JSBAレディース1位:シーザージム)。玉はひたすらに横蹴りで距離を取り、近づくとタックルからすがりついてゴロリと倒す。ときおり大振りのフックを単発で出し、当たるのだが後が続かない。それが延々と続き、玉が次第に肩で息をつき始める。倒れて起きあがるのも大儀そう。これが三ラウンド続いた。これでは角田選手も観客もフラストレーションがたまってしまう。結局、判定は0-2(29-29, 29-30, 27-30)だった。私は別に散打の肩を持つ気はさらさらないのだが、一体どういう理由でこういったポイントになったのか分からない。ポイント競技なのにポイントの根拠がはっきりしなければ、野球で何対何か分からずにボールを打っているようなものではないか。

 森谷吉博(JSBAオウル級1位:シーザージム)vs 林 大里(散打55Kg中国王者:中国少林寺散打)。林は一見して投げの選手。前足のローまで取ってこかす。前足に体重が乗っているだけで、足があがっていなくてもヒザの横に手をかけてこかす。ハイも一本背負いの要領で投げる。ひたすら横蹴りと投げで、試合を終わらせてしまった。加藤さんは途中、何度か森谷選手に「そこでハイ!」と声援を送っていたから、チャンスはあったのかもしれないが、全体としては散打らしい試合展開ではあった。これを崩すには、まずはキック的な発想をかなり捨てなければならないだろう。しかしそうすると今度はシュート・ボクシング選手との闘いで戦力がそがれてしまうだろう。結局、プロとしては散打との対抗戦は難しいということではないのかと思う。判定は0-3(28-29、三者とも)で林の勝ち。

 メインは土井広之(JSBAシーガル級王者:シーザージム)vs 宵 成龍(散打67Kg中国王者:中国少林寺散打)。宵はどうやら打撃系らしいが、大して見るべきものがない。投げは林よりなかり落ちる。しかし1ラウンドに大きく持ち上げてシュート・ポイント。それ以外は両者膠着(宵が横蹴りからタックルの連続。疲れて早く立てなくなる。)3ラウンドに土井が逆に大きく投げ。で、判定は3-0(29-28, 30-28, 29-28)。不思議なことに、宵は1Rに投げによるポイントがあったのに、このポイントを入れてない審判がいる。メインまで負けにはできないということなのだろうが、こうした試合をポイント制でやっても意味がないのではなかろうか。

 総じて、小さな投げはポイントに取らないということがよく中国側に伝わっていなかったのではないか。それでもいちいち投げるから、疲れてしまう。散打ハク撃のポイントでいえばメインですら10ポイントは差があった。あと二試合はさらに大差であった。私はシュート側が理想とするような打撃戦の方が個人的には好みだが、ルールのもとで試合する以上はちゃんとルールの詰めを行い、ポイントも公正に取るべきだろう。

 しょうがないなー、ということで加藤さんと控え室を訪ねる。「大きく投げられちゃった」からしょうがないですよ、と森谷選手。今回コーチをしたという修闘のマッハ・桜井さんが、「何も考えずに行けばよかったんじゃない?」と言う。私もそう思う。散打相手に真面目に攻略法とか考えたら、その時点で彼らの戦法にはまってしまうだろう。変な試合だったなーということで、いつもの焼き肉屋で加藤・大川ご両人と夕飯を食べた。

付記。それはそうと、シュートボクシングそのものにかんしては、なかなか感心した。キック系競技と思っていたが(これまでにも何度か観戦したことがある)、蹴りよりもパンチの連打、なかでもボディを重視しているのが目についた。ムエタイではパンチであれだけボディをきかせることはない。投げがあることと関係するのかもしれないが、技術的にもパンチは大したものだと思った。それと、異常なまでのスピードとスタミナ。プロとしての自覚が感じられた。なかなか他団体との交流戦は難しい競技なのかもしれないが、頑張ってほしい。

 

(1月22日)

 メールが届いていたので見ると、こう書かれていた。

Subject: ご無沙汰しています

松原さん、こんにちは!どうもご無沙汰しています。元大道塾総本部の牧です。

本日、松原さんのホームページ「思考の格闘技」を発見しました。「中年空手家日記」に入りこんだところ、懐かしい皆様方の話題に思わず、時間も忘れてはまってしまいました。

盛況のビジネスマンクラス、加藤さんと高松さんの指導、上野さんの関東大会優勝、小嶋さん、石上さん、中田さんの審査での奮闘などなど、まるで自分も現場にいるような気になりました。道場の汗くささまで匂ってくるほどでした。石上さんが相変わらず足が短いこともわかりました。太田さんの「先輩、組手の幅が広いですね」にも笑えました。これからも詳細なレポート、楽しみにさせて頂きます。

しかし、ビジネスマンが今や百人というのはすごいですね。養老の滝も儲かって笑いが止まらないことでしょう。

それほど道場には顔を出さなかった私ですが、道場を離れて2年たった今も、心は大道塾生のつもりでいます。あとどれくらいで日本に戻れるのか、私にはわかりませんが、帰国後はすぐに再入門するつもりです。また一緒に練習させて頂ければ幸いです。

最後に、この場を借りて、先生始め、職員、寮生、道場生の方々のご健康と大道塾の益々の発展を影ながらお祈りさせて頂きます。

押忍!」

 この牧君、ある日筑紫哲也氏のTV番組を見ていたら、突如レポーターとして登場した人物である。現在はそのTBSのヨーロッパ特派員として現地に駐在しているのである。たしか千葉大の空手部主将だったとかで(そうだったよね?)、ビジネスマンクラスに属しながらも試合は一般にエントリーし、極真の部ではなかなかの成績を残した。ビジネスマンが一般部に挑戦する先駆者となった方だ。なりは小さいがなかなか獰猛な組み手をする人でもある。カラオケでも歌はいつも空手ソングという根っからの空手マンなのだ。

 さて私と彼の縁は、一種の奇縁である。くだんのTVニュースを家内の実家で見ていたところ、牧君が登場した。ところが彼の顔を見た実家の義母や義弟が、「牧じゃないの」、というのである。私としてはなんでビジネスマンの稽古生を呼び捨てにするのかと尋ねると、なんと牧君、義弟の小学校の同級生だったのだ。幼少のころから負けん気が強く、勉強もできたらしい。獰猛な組み手をするという私の証言に、家族は「あいつならそうでしょう」と頷いたのであった。 

 

(1月22日)

 忙しくて日記を書く暇もない。というか、稽古の新展開がない。水曜の荻窪道場は一時間だけなので二度ほどお世話になりに行ったが、土曜日のビジネスマン・クラスも本日が初参加(三部)。本当は仕事に専念しなければならないんだが、朝8時から大学院の入試の監督が夕方まであって、とても直帰する気にはなれなかったのだ。ただし入試監督といっても各部屋から返ってきた答案の枚数を調べたりする楽な方なので、現場の教室でずっと立ち仕事しながら受験生の監督をしている方々には申し訳ないが、合間に3セットほど腕立て伏せとジャンピング・スクワットをした。これは汗をかかないので背広でやれるのがいい。

 久しぶりの稽古なのでいろいろ面白いことがあった。

一。昇段試験失敗十回の記録を更新中だったMさんがついに黒帯を取得してしまった。この方、東北のTさんという方とともに大道塾の二大名物親父と称えられる人である。Tさんは北斗旗を観戦しに来たのに試合を見もせず代々木第二体育館でスクワットに励み、翌日「鬼の黒崎」格闘スクールの講習を受けに行ったという不思議な方である。ところが受講料を払うと資金が底をついたため、黒崎先生の奥様から借金して東北に帰ったのだという。いきなり尋ねてきた人に金を貸してしまわれるとは、さすがすべての格闘家の心の師・黒崎先生の奥様である。もっとも、訳が分からないので人払いしたいと思われただけかもしれないが(黒崎師範には、後に北斗旗を観戦していただき、「なかなか鍛えられてるね」とのお言葉を頂戴いたことがある)。
 さてMさんは横浜のはずれだかから日頃稽古には熱心に参加するものの、普段から基本に専念、対人稽古は一切しない。それなのになぜかいつも全身打撲状態だとか申告し、スパーの時間になるといなくなって、気がつくと白帯にうるさく助言している。それでいきなり審査の組み手に挑戦してボコボコにされるという猛者なのである。この人が、驚いたことに基本の後も稽古に参加するといいだし、前方回転受け身などやっている。さらには組み手までやるのだという。彼の稽古での組み手といえば、思い起こせば今を去る六〜七年前、朝の部で私がサンドバッグを叩いていたところ、後ろで女性の稽古生とうるさく喋っていた(もちろんMさんが一方的に話しかけていたのである。白帯は普通茶帯の先輩から話しかけられると緊張して聞くものだが、この方の場合、稽古中は話しするだけなので皆別の標的を押しつけて逃げ出すのだ)。にがにがしく思っていたが、窓の外を見ると某北斗旗チャンプが中をのぞき込んでいる。彼、私とMさんに向かって「はい、防具をつけてスパー」。というわけで計3ラウンド、攻撃に専念する稽古をさせていただいた。小生、スパーで相手をダウンさせたというのもあれが最後であった。それ以来、彼の組み手姿を見たことがないのだから黙々とサポーターを付けるのには正直、驚いた。で、いきなり面をつけさせるとこちらにも素直に従う。というわけで、三十分近く、面付きのスパー。目慣らし程度だったが、それでも画期的な出来事である。なかなか見直したぞ、Mさん。黒帯になったので覚悟を決めたのだろうか。

二。スパーの間、加藤清尚さんが板の間で自主トレをしておられた。私は寮生のF君とスパーしたが、こいつ、目つきがおかしい。顔はこちらを向いているのに目だけが左隅に寄っているのだ。どうやら加藤さんが「よし」とか小声でアドバイスするのに聞き耳を立てているらしい。真面目な奴だから、大先輩に尻を向けているのが失礼と思い、目だけ寄せたのだろう。左ミドルばかり蹴ってくるので、どうやら左ミドルだけに技を限定するように指示があったらしい。当方は今にして思うと蹴りを左手で捌いてそのまま右ストレート、左ボディとつなぐべきだったかと思うが、どうにも目が左によっているのが気になって反撃が単調になってしまう。こちらは目を真ん中に寄せて対抗すればよかったかしらん。

三。以前痛めた右肩が完治していない。腕立てのやりすぎか、また痛くなってしまった。空振りすると激痛が走るし、逆十字は肘がきまるより先に痛くなってしまう。加藤さんに伺うと、鏡の前でプッシュアップのポーズを取れ、とおっしゃる。やってみると、「うん、なーるほど。これは筋肉の付き方がアンバランスなんです」とのこと。ソウボウ筋が先に動いて支えてしまっていて、肩の筋肉が単独で動いていない。ベンチなどやりすぎるとこうなるのだそうだ。横になって肩のインナーマッスルをきかせる運動をご教示頂く。

四。庄屋で二部の飲み会が続いているというので、加藤さんとともに行ってみた。一度締めたのに、皆さんまた飲み直しして下さる。よく見ると前歯の欠けた人が二人いる。不気味な集団ではある。そこにいるOさん、大塚のゴールド・ジムの副支配人をしておられる女性で、しきりに私の飲み物を気にして下さる。美人で能力があり、気がつく。おーい、うちの独身諸君。彼女をゲットしたら稽古は気兼ねなくできるぞ。もっとも稽古相手のかみさんの突きけりを受けきれないかもしれんが。ビジネスマンクラスですでに半数が腕相撲で勝てないらしいから。
 彼女、このHPのせいでお客さんに「審査で女性をKOしたんだって」と言われて困っています、といささかお冠であった。「いや気にしないでよ」、と皮ジャンの肩を叩いたら、もっこりと大きな筋肉が盛り上がっていた。

 

(1月10日)

 引き続き仕事三昧で、新年初の稽古にも出ることができなかった。遊びといえばインターネットくらいのものだ。倉敷支部の掲示板「格闘空手への道」はえらく盛り上がっているので、毎日拝見している。そこで東スポ並に我が大道塾についても1999年MVPを投票しようという呼びかけがあったので、失礼ながら私見を掲示させて頂いた。以下の通りだ。
               *                  *

◇MVP 稲垣拓一選手

北斗旗後のパーティの盛り上がりはインプレッシブ。
小川選手は空前の7連覇、しかも階級を上げても続くものだけにMVPの声も出て当然。対外試合で面目を保ったのもさすが。ただし来年以降も連覇を続けたら毎年MVPになるのか?という疑問があるのと、ファンとしては小川選手に連覇という次元すら越えた「次」の夢を託したいから。超人は期待が大きくて大変だ

◇ベストバウト 稲垣vs山崎戦

つかみからのアッパー、頭突きからの背負いは「着衣の打撃系総合」が大道塾の本質だということを実証した。北斗旗史上に残る名試合だと思います

◇技能賞  飯村選手

決勝までパンチを出さなかったのには驚いた。

◇殊勲賞  辻村選手

前年王者に勝っての優勝に。加藤戦がフロックでないことを二回戦で見せつけた藤原選手も記憶に残った

◇新人賞  堀啓選手

二十歳台前半すら層の薄い現在、本戦で勝ち進んだ。体を太くして世界大会の秘密兵器に!

◇特別賞 加藤清尚選手

復帰には心を打たれた。技術を出し惜しみせず教えて下さる姿勢にも

                 *               *

 というわけで稽古は自主トレということになってしまうのだが、このところダッシュは寒くてアップが必要ということでお休み。最近凝っているのが、下にも書いた心肺機能アップ・トレ。とりあえず脈拍を上げるのが目的で、現在の私だと腕立て百やってジャンピング・スクワットをフルで30やるとゼハーゼハーいうようになる。この間たった3分、仕事の合間に一日4回ほどやっているのだが、なるほど平常の脈拍に戻るまでの時間が短くなってきたような気がする。空手でいうスタミナがある、というのはこの状態ではないのか。汗もかかないし、自宅でやるにはいい。腹筋、反復横飛びなども織り交ぜてやっている。次の稽古で体調がどうか、楽しみだ。

 

(1月3日)

 新年明けましておめでとうございます。

 とはいうものの、このところひがな一日中原稿を書いていて、とても正月を味わう状態ではない。授業がなくてやっとまとまった時間がとれたので延々と机に向かっているのである。昨日は家内の実家へお年始、そのまま妻子を残してきたので一気に集中する時間が与えられたが、時間はあっという間にすぎていく。
 実家で傑作だったのが、家内の親戚の四歳児。我が息子となかなかいいコンビである。息子は私が命名した「息吹」で、こちらは三歳児。家内は「春の息吹」と称しており、小生も一般には「ギリシア哲学で万物の源(プネウマ)」だとか「日本書記で天照大御神が八百万の神を息吹で産み出したという記述によった」とか言っているのだが、もちろん空手家のみなさんにはどういう意味かお分かりでしょう。第一回のWARSで長田賢一師範、第二回アルティメット大会で市原海樹選手がリング上で深く深く息吹きを放ったシーンに闇雲に感動してしまい、私自身は肺があまり調子よくないこともあり、いざというとき全身で空気を感じ取って冷静になって欲しいということで名付けたのである。ところが親戚の四歳児には空手でかないそうにない。この子、元旦に四歳になったばかりだというのにすでに25キロもある。そのうえパンチ、キックが滅茶苦茶強くて兄貴をぶっとばして泣かしたりしている。全身を投げ出すようにして「パーンチ」とかやるのだ。開脚は180度、それで蹴らせたら左右で軸足を返す回し蹴りを数十発、連発する。裸になって蹴り続けるあたり、大変な素材である。極真に取られないうちになんとかウチの少年部に入れたい逸材だ。桶川の在らしいが、大宮支部あたりに少年部はないものだろうか。

 ところで、「週刊現代」のこないだの健康の頁には瞠目した。六十何歳かの方の健康法が朝晩四百を二度ずつの腕立て伏せだというのだ。計千六百。一回約六分ですみ、直後は心拍数が百四十まで上がるが、五分で七十まで下がるという。数字にリアリティがあるから本当なのだろう。それにしても、ただ朝晩六分ずつの鍛錬で、他に走ることもないのに、年に二回はフルマラソンを完走しているという。ホントに六十余歳か?余程心肺機能が高いのだろう。これは果たして生まれつきか、腕立て伏せ健康法のせいか?と関心をもっていたら、えらい目に遭ってしまった。

 私は近所にメチャメチャ古いアパートを書斎として借りているのだが、夜中四時に社会・経済史関係の本を取りに行った。内側のボタンを押す式の鍵をきっちりと閉め家に帰ってみたら、なんと財布がない。アパートに忘れてきたのだ。泡を食って取りに行ったが後の祭り。鍵ごと財布を部屋に入れて、閉め出されてしまった。こういう日に限って家内は実家、家の周囲をぐるりと回るがさすが我が家は立派に戸締まりができている。と感心している場合か。寒空に、財布もなく、正月三日未明、呆然と立ちつくす私。二百円と香港ドルだけがポケットでちゃらちゃらとむなしく音を立てている。家内の実家には車でも一時間はかかる。こうなれば、朝まで待って大家さんに鍵を借りるしかない。ということで、チャリをふらふらと漕いで駅まで出た。正月に、足早に駅に急ぐ人、それに酒に酔ってクダをまく男女もいる。それにしても少なくとも七時までは大家さんを訪ねるわけにもいかない。それで思いついたのが、どうせ無駄な時間、寒いことだしトレーニングをしようということ。阿佐ヶ谷駅の二階の自転車へ通じる坂道に行く。この闇の中を、一気にダッシュで駆け上がるとなかなか良い感じ。そこで腕立てを40やった。心拍数が上がる。やけくそになって、ダッシュ+腕立て40を十セット繰り返した。なるほど、どんどん脈が上がる。記事は本当だな、と感心した。
 だが、このトレーニング、大変な欠陥がある。心拍を上げるにはいいのだが、十セットで汗ばんだというのに、まだ二十分しか経過していないのである。まだ六時前ではないか。しかしこれ以上やったら汗まみれになってしまう。シャドーもやったがなにしろ駅構内である。駅前のマンションの地下に移動し、「世界市場の形成」という本を読みながら、効率の良いトレーニングというのも善し悪しだぜ、と休店中のキャバクラの扉にもたれかかってつぶやいた。