(10月2日)

 北斗旗無差別関東予選。昼から高田馬場の新宿スポーツ・センターへ。息子が生まれてから日曜には世話もあって、予選はほぼまったくといっていいほど観戦できなかった。今日まで妻子が実家に帰っているので久しぶりに大手を振って行ける。試合場の砂かぶりの位置で観戦するのはまた違った趣がある。
 今回は参加すると思われていた中山正和選手が警察柔道で大活躍してしまったためにそちらに専念して欠場、稲垣拓一選手も昨年の好成績から予選免除なのに肩慣らしに出るという噂だったがやはり欠場。というわけで思ったほどの高レベルとはならなかった。村田選手はなぜか新潟予選に出てしかも負けてしまったというし。
 久しぶりに極真ルールの交流戦を見て、びっくり。うちはいつの間に掴み有りになっていたのか?聞くとずいぶん前からだそうで、試合でも掴んでの膝ががんがん当たって面白いようにKOが出る。そりゃ格闘ルールでの首相撲との連絡を考えればこちらの方がいいに決まっているが、極真ルールの膝については極真のビデオを見て掴みなしでこの数年、練習していた自分は馬鹿だった。これからは練習でも極真ルールでは掴むぞー。

結果:

1位:沖見正義
2位:稲田卓也
3位:藤澤雄司
4位:能登谷佳樹

武山卓己は本戦出場権を得たところで棄権。森直樹は藤澤に僅差で負けるがこちらも出場決定。

 

(10月某日)

 土曜日三部。最近、自分が指導する二部とは違うクラスに出ることがあり、他の指導者のやり方に学ぶことが多い。今日は若い寮生のE君がいたので、前半の寝技の時間(前半は隔週で立ち技と寝技をやっている)は私が仕切るべきところを彼に任せて指導方法を観察してみたが、なかなかよく考えていて参考になった。これまで寝技はそれ専門の団体とは違いさほど時間を割けないという理由で形の指導が中心だった。裸締めなら相手の首投げを後ろから切って背後から押す体勢で首を取る、といった具合である。けれどもこれは決まる時の体勢であって、それだけでは寝技の現実の「運用」には役に立たない。柔道でこんな寝技の練習をしている道場はないだろうし、うちの稽古生からも試合ではまったくどうしていいか分からない、という声が上がっていた。寝技は、決まる体勢よりもそれまでの過程において相手の体をどうさばくか、道着をいかにつかむか、体重をどう乗せるかといった、口ではうまく言いにくい技術が強さの核心にある。それで私の指導ではいわゆる「上と下」、ガード・ポジション直前から始めさせるスパーや初心者ならば一方が横四方になった体勢からの攻防のスパーなどを行ってきたが、E君はこれをさらに細分化する。まずは前方回転受け身、前後エビ、ワニをやったあと全員で中井先生のやるムーブメント。仰向けで足首回しと自転車漕ぎを60。次いでそれを応用するスパー。これがいい。
 @下が仰向けで手は使わない。一方は立ち、こちら側も道着をつかまない。猪木−アリ状態で上が周囲を回り、寝技に入る。下はなんとか足を間に入れるというスパー。A同じ姿勢で、上の者だけが道着の足付近をつかんでよいという条件。当然左右に振り回して足をさばいて寝技を狙う。一方、下は足首を回転させて道着を持つ手を切る。B今度は上が膝立ち、手でつかんで良い。下はつかみなし。上はやはり左右に振るのがポイント。下は足先を相手にからみつけたり間に入れることに集中する。Cさらに上が膝立ち、下はガード・ポジションすなわち足を上の胴に巻き付けてロックするところから始める。下はつなみなし。上は相手の膝の内側に肘を当てたり、足をかかえたりしたさばく。下は手でつかまないが相手の首に巻いて腹筋の要領でだっこちゃんするのがポイント。今日はここまで上下交代してやったが、さらにはD上は膝立ち、下も道着をつかんで良し、という次の通常のルールもありうる。
 私としては、上が足をつかんできたとき、下の者が道着を切ることを学んだ。また、相手の両足首をタックルの要領で抱え込み、ここから上体まで横転して崩れ袈裟固めに入るという技をやってみた。相手の白帯は柔道経験者だったが、これには驚いていた。
 打撃については様々な限定スパーが用意されているが、寝技についても全部を教えようとして形だけになるより、こうした実践的なやり方が重要だと思う。飯村師範代はこうした分解指導がじつにうまいが、寮生にも考え方が浸透しているのはレッスン・プロが養成されている証左として心強い。
 ちなみに今日は私としては、打撃のスパーでもパンチから手を組み合い、そこから首相撲の体勢で相手を投げるというレスリング的な発想をやめて、相手との間に腕を伸ばして空間を作り、柔道風に投げるということをやってみたら背負いが綺麗に決まり、キメもできた。また、そこから一気にマウントを狙わず、いったんニー・イン・ザ・ベリーで相手の腹に全体重をかけてやり、苦しんで腕を伸ばしてくるところをマウントでなく十字に入るのをやってみた。個人的には大収穫。

 

(10月某日)

  中国武術の世界大会が来月香港で開かれるが、我が国からはJOC傘下の武術太極拳連盟の仕切りで計19名が派遣される。そのうち型ではない方のフルコンタクト武術散打は木本泰司先生が主宰しておられる東京散打倶楽部が加盟団体として受け皿となっており、そこに所属する岡部武央選手と大道塾の長谷川選手が大会に参加することが認められた。何はともあれ、JOC関係での世界大会である。私は大道塾散打班長としてお世話させていただいている。このところ木本先生の指導が日曜は大道塾で、水曜は木本先生のお宅(指圧院を開業しておられるので施術室)にて行われている。私は両方に顔を出してみたが、基礎訓練である「站椿(タントウ)」と千歩がなかなか面白かった。站椿は太極拳の型のようなものだが、ちょうど中学の部活でやった「椅子」みたいな姿勢を十秒以上、それを何十種も繰り返し、延々一時間半は続けるというものだ。極真の数見選手がやっておられるのも木本先生によると站椿の一種だとか。もっとも、もっと長くやるものであるらしい。そこで木本先生の指導はたっぷり五時間は続くのである。「最後にはもどしてますよ」、と木本先生は仰る。私はせいぜい一時間分しかやっていないが、始めてじきに額に汗が滲んで来、太股がぱんぱんに張って、がくがくになる。片足を上げ一方の足の膝裏につけ、立った足は半ばまで屈伸する鶴のようなポーズなど、きついきつい。
 長谷川選手によると半信半疑だったが始めて以来北斗旗流のスパーも突如絶好調になったという。タックルも切れがよくなり、パンチも重くなって言うことなし。すっかり気に入って、若手寮生まで「長谷川先輩がえらいことをやっているらしい」ということで稽古に参加している。どうやら足腰の「練り」が出来たということと、打撃の姿勢ながらタックルを切る姿勢も含まれているということで、全身のバランスがよくなったらしい。これは中国でも滅多には公開されていないナショナル・チーム・レベルの「秘技」だそうで、木本先生が台湾におられたときに仕入れてきたということだ。日本にはちゃんとしたものが伝わっていないらしい。
 「千歩」はただ立ち技のフォームで千歩あるくだけだが、これも歩いているうちに姿勢のバランスがよくなってくるのが分かる。逆にいうと、移動稽古だと動くことに気をとられて、フォームがおろそかになっているということか。木本先生は「体は大半が水分でできているから、動くとそれが波打ちます」とおっしゃる。その波動をイメージしながらひたすらゆっくりと歩くのである。
 こうした稽古はウェイトでフォームからかけ離れた力ばかりを身につけている者としては、大いに学ぶところがある。我々の言う基本稽古は、これら站椿や千歩の概念からいえば難しすぎる応用稽古ということになるらしい。基本以前に体の運用を知らねばならないというのだ。フルコンにこうした発想が生かせれば結構なことではないか。せっかく散打班長をおおせつかっていることもあり、タックル切りや投げへの連動も入れて、将来的には北斗旗流にアレンジして、ビジネスマン向けの型を作りたいと思う。

 

 

(10月某日)

 90年代も押し詰まり、格闘技界もいろいろあったわけだが、私の流派(大道塾)の方針はスーバーセーフは着用するし社会体育は守るし、というところに落ち着いた。この方向で我々は来世紀、世の中を渡っていくわけである。しかしプロではないから派手じゃない、まして面で顔も見えないということで、実力がありながら格闘技雑誌が注目してくれないのは先方も仕事である以上は当然だ。
 となれば自分の流派のことは自分で騒ぐしかない。そこで、小生がこのところ機関誌『大道無門』に協力していることは、すでに報告した。マスコミではなかなか実現しない記事をどんどん提案して誰もが関心を持たざるをえなくしてやるぞっ!ということで、専業の伊藤さんとともに繰り出す企画の第三弾:

 ついに実現、「八巻建弐vs長田賢一対談」!!テーマ「今、強さとは何か」(仮題)。

 どうです、読みたいでしょ。この記事、格闘技マスコミも実現してないものです。極真世界チャンプ、八巻先生にインタビューします。企画記事「俺が強くなった理由」という続きものの巻頭に掲載するもの。私は何年か前から夢枕獏さんとの関係で八巻先生とは面識を得てきていますが、その縁で大道塾にお招きすることになり、快くお引き受け頂きました。これは当方がなにしろ極真とは袂を分かった団体であるから、大山倍達館長ご存命の折りには実現しえなかった企画だが、我々が極真ルールを修行に取り入れ、今も決してその重要性を忘れていないこと(むしろ顔面攻撃がある分だけ、技を軽くしないためには極真ルールには敬意を持つことが必要だと教えられている)、また松井現館長と東塾長の関係が良好であることが背景となっている。せっかくなので今回は対談もプラスします。当方も最高のカードをということで、長田さんとの対談に決定。ご両人の撮影もあり。

乞う、ご期待!! 

 

(10月某日)

 秋の昇級・昇段試験当日。本日は初段のIさん、Kさん、一級のN君が連続組み手に挑む。遅刻して必死にチャリのペダルをこいでいると、携帯に電話。早く来て仕切るように、との塾長からのお達しである。つくと柔軟が始まっている。あわてて着替えて号令をひきつぐ。基本からは塾長のお出まし。いつも以上にきっちり号令をかけるとKさんはむせている。皆、力が入っているようだ。突き・蹴りと進み、移動へ。パンチはステップ・イン・ジャブで壁まで、ステップ・バック・ジャブで元の位置へ・・・といった具合に二往復、それを種目を変えて5種、4連打を2種。蹴りは蹴上げからやはり二往復ずつ、しかも二往復目はパンチを入れて・・・と号令を掛ける側もややこしい。これを14種。声が枯れてくる。
 次いで目慣らし。N君、年齢なら8人でいいところを10人志願しただけあって良い気合い。だがちょっと力みすぎ?ガンガン蹴っている。目慣らしとはいえ当たる相手かも・・・と思うとついヒビらせようとするのは人情か。N君格闘ルール4・極真ルール4・寝技2、Kさん格闘2(寝技こみ)・極真1、Iさん格闘3(ただし寝技こみ)極真3、の相手を茶帯以下から選ぶ。人数が足りなくて自分もIさんの相手をすることになってしまった。
 N君で開始。「端で黙礼、中央へ、先生に礼、主審(私)に礼、互いに礼、構えて、始め!」の私の号令でスタート。各一分、連打は止めるが、それでもかなりの打ち合いに。N君、押してからの蹴りを狙っているのか、手を伸ばすがその後にパンチが続かない。クリーンヒットがなく、引き分けが続いてしまう。一敗三分けとなる。極真ルールは気合いで乗り切るが、スタミナが切れてしまう。寝技も負けありで二敗八分け。うーん、これが昇段試験の怖いところ。マラソンもこなす彼(ちなみに高円寺のライブハウスでは有名なパンク・バンドのドラマーだったらしいが現在は空手に打ち込んでいるナイス・ガイだ)が、取りにいくべきところで取れないで勝負に濃淡がつかない。そのまま自分の組み手を取り戻せなかった。小柄なので足を使うべきではあるが、下がると却ってつっこんでこられる。誰との試合を捨てるのか、どこでどう取るのか。考えさせられる。とにかくローでは相手を呼び込んでしまうしダメージも与えられないということだけは確かだ。前蹴り・膝蹴り・パンチしか効かないんじゃないか。暗い空気がたれこめた。
 Kさんは50になんなんとする方。細身で技が切れるがこのところはウェイトをやると体調を悪くするという。一人目で接戦、決め手なく引き分けると途端にスタミナ切れ。パンチをもらって尻餅をついたので無念の一敗。寝技込みは一分半できつい、きつい。スーパーセーフをぬぐと唇が1センチほど縦に裂けている。ところがここからが凄かった。極真ルールの最後、渾身のワンツーでラッシュ。相手を押し出して圧倒。これで一勝一敗一分け。規定は満たした。満場の拍手だ。
 最後は足こそ上がらないが、ビジネスマンにウィービングやダッキングなどを初めて持ち込んだセンス抜群のIさん。この人、テレビ業界の方らしくいつもふざけているが、キレるととんでもない気迫を出す。一人目は私がお相手するが、右でダッキングからボディを打って組み、大内で倒したものの、そこから返されて寝技で下になった。返そうとするが面をつけているとどうにも具合が悪い。そのまま立ち、飛び込んで肘を狙うが空を切る。うまさでしてやられた。結構ちゃんとやったつもりだが、さすが受験者の気迫は違う。一度ははねとばされて尻餅をついたぐらいだ。ここで私は主審に戻る。二人目とは壮絶な打ち合い。寝技でIさん、下になるもマウントパンチはガードしてくわない。引き分けたが、当人が「ストップして」というので顔をのぞき込むとダラダラと鼻血。これが止まらない。よく見ると、鼻が横に移動(!)している。面がずれたところにパンチをもらったらしい。
 仕方ないので白帯の女性同士の昇級試験に移るが、美人のくせにベンチで50キロを何回も挙げるゴールド・ジムのOさんが小柄な相手を蹴ると、きいたのかいきなりびっこをひく。これは困った。いつも男とやってるだけに、Oさん逆に手がでなくなってしまった。
 そんなこんなでIさん、再開。これからが真骨頂だった。嵐のようなラッシュで格闘ルール一勝。極真は私の声など聞こえていないのか、「続けて」を言う前に「がー」とか怒鳴りながら頭からつっこんで相手を場外につきとばして勝手に「キメ」のポーズをしている。人間、こうなると強い。特段手も足もでなかったようにも思うが、完全にテンションが上がってしまい、二勝一分け。立派な成績だ。満場、やんやの声援が鳴り響く。
 全部終わり、塾長からは「基本・移動も若い連中に見せてやりたいほどの良い出来で、スタミナ・技量ともに年々向上著しい」とのお言葉を頂戴する。うれしい。だがそれはそれ、IさんKさんは顔が酷い状態。さっそくタクシーを呼んで、外科に直行した。
 他人の昇段ではあるが、帰宅しても興奮が収まらない。次は自分か?と思うとつい高ぶってしまう。このところ50メートルダッシュを重視しているが、調子がいいので続けることにしよう。

 

 

(10月某日)

 一週間連日、ゲストありの大学院ゼミや新春の新聞対談(共同通信社。山崎正和先生と3時間一本勝負)などで稽古できず。ならばとこのところ、自宅周辺で50メートルダッシュをしている。これだとやめたくなればいつでも帰宅できるし、短時間ですむ。ただし、事前に太股の中まできかせるストレッチ、アキレス腱やふくらはぎのストレッチが必要である。何回か繰り返すうちにダッシュのフォームができてはきたが、その分、筋肉が深く使われるので、引きつりやすくもなっているからだ。終了後、自宅前でシャドー。もう、近所には何と思われてもいいもんね。
 で、久々の土曜稽古に出る。日中は息子連れで秋葉原から銀座に買い物に出たので昼寝もできず、調子は悪かったのだが・・・。なにしろ、歩いていると玩具を忘れた、喉が乾いた、飴をくれ、シッコ、うんち、風船が欲しい、揚げ句にだっこ、で寝てしまう始末である。疲れに疲れたが、そのままチャリにて平和台へ。
 ところが、である。投げのスパーから打撃のスパーに移っても、これがなかなか調子良いのだ。手加減していただいて稲垣先輩とまでもマス・スパーをやったが、ずっと動けた。ヴァーム効果もあるには違いないが、それでもいつもより調子良い。ダッシュの成果か?たんに仕事が一区切りついてホッとしているだけかもしれないが。
 終了後、いつもの養老に行くと二部のビジネスマンの主要メンバーがまだ飲んでいる。Sさんと隣り合ったので、いつものウェイト談義。この方、ビジネスマンにしてウェイト理論の達人である。朝から晩までの激務の合間に週に二回、30分だけでパンプアップさせるために実に考えに考えた体系で稽古しておられて、飯村さんも彼の指導でアメリカの新理論、「パワー・ファクター」を取り入れたほどだ。このところのフルコン界では、どちらかというとボディビル系のウェイトが主流となっているが、それは見せるための筋肉であって、空手のための筋肉とは言い難い。Sさん、ジムでは極真の何人かの選手にもアドバイスして、成果を上げているとか。
 著作権の問題があるだろうから詳しくは書けないが、たとえばベンチプレスでMAXの8割りくらいだと10回は上がる。それを30秒のインターバルでもういちどやって、完全にワークアウトさせてベンチは終わり、次の種目に移るというのである。負荷を下げるディセンディング・セットの場合はインターバルはなしだそうだ。私も最近はS式でやっているが、これなら時間をとらずにすむ。実にビジネスマン向きではないか。
 先週のIさんが飲んでいて、3勝3分けだけに昇段を許されたとうれしそう。それにしても、ビジネスマンもここまでパワーアップしてくると、昇段の連続組み手は大変だ。平気で頭から突っ込んでくるようになるのだから。Sさん、あまりみんなに教えないでくれ。