(2月某日)

 今日は審査である。私はビジネスマン・クラスでつねづね指導員をしているということで、こうした場合には主審をすることになる。本日は黒帯受験者が二人。A氏は日本拳法出身者で、これまでも審査で先輩の黒帯受験者をいじめてきた猛者である。しかし自分が受験するとなると、いつもとは勝手がちがう。B氏は道場歴十数年、私よりも古い方で、荻窪支部の常連である。彼とは私も普段からよくスパーリングをしている。

 それにしても、B氏の組み手には目を見張った。最初こそA氏に投げられて引き分けとなったものの、それ以外の4人には、格闘ルール・極真ルールとも全勝。さらに寝技の2人も引き分けで凌いで、堂々の昇段である。計7人の連続組み手だったが、寝技は上・下の二回あるから、9回闘わねばならない。B氏も40歳といったところではないか?以前は長身ではあるもののパワーに欠けるところがあったが、先日荻窪でスパーをしたところ、当たり負けしなくなった。勝手が違うのでどうしたかと思っていたが、どうやら相当ウェイトに励んだようだ。とくに格闘ルールは自分からはパンチを当て、相手がくるとすべて首相撲にからめとって膝蹴りを当てるという完成されたもの。スタミナも凄く、まったく切れなかった。どうやらアミノ酸系のドリンクを飲んでいるらしい。東塾長から試験終了と同時に「昇段を認めます」と言われ、「日頃の坂道ダッシュもきいたようです」、と感激の面もち。祝宴もそそくさと退席し、荻窪の仲間の元に知らせに帰って行った。こちらも頑張らねば、と改めて思う。

 

(2月某日)

 本日は年に一度の高段者昇段試験および全国支部長会議。初日の今日は、千駄ヶ谷の日本青年館の会議室にて、高段者・支部長の昇段連続組み手がある。私は相手役にとかり出された。上は60歳近い方から若い支部長は20代まで10人は受けたか。私以外にも森直樹選手(一昨年の北斗旗無差別準優勝)がお相手をしている。それにしても、東北からやってこられたA氏は、私あたりと組み手をしている分にはよかったのだが、森さんとやらされたのはかわいそうだった。左ミドルがもののみごとに腹を直撃すると肋骨が折れるようなすごい音がして、前のめりになった。これだから大道塾の昇段試験はたまらない。

 さて私は、3回のお相手。格闘ルールは30代後半のB支部長。先輩であるから、失礼のないように一分間、一気に行った。しかし先輩からは審査後、一気にくるなんて失礼だといわれた。私としてはビジネスマンクラスの昇段・昇級審査の要領でやったのだが。極真ルールは、さきほどのびてしまったA氏。回復してまだ続けるという。私も心を鬼にして行ったが、極真ルールの右ボディは普段使わないのにムキになって打ったら肩の筋が伸びてしまった。腕が上がらないほど痛い。A氏は後半、ガンガン出てくる。さすがである。寝技はB支部長と。普段あまり稽古しないんだ、とおっしゃる。私も稽古が足りていないが、寝技は体が覚えている。ガードポジションからスウィープしてマウントから逆十字を決める。

 と、隣のコートで歓声があがるので何かと見ると、東塾長が寝技でC支部長に一本負けした様子。昨年東塾長は7段昇段試験に見事合格したが、最後の最後にこのC支部長と寝技で当たり、初めての一本負けを喫した。どうやらふくむところがあったらしく、今年は立場変わって受験するC支部長の最後の相手に自分を指名し、登場された。ところが攻めに攻めたものの、詰めの局面でコロッと三角をくらったらしい。これには塾長も呆然。審査後風呂に入ると、さっそくC支部長をつかまえて「バカヤローなめんなよ」と肘打ちをくらわしている。C支部長もよせばいいのに「塾長に一本勝ちしたCでございます」などとニコニコ顔で言うものだから、先生は収まりがつかなくなってしまった。この日は恒例でいえば明け方まで飲むという恐ろしい会合なのであるが、塾長は夕方から飲み出したため、9時には「ちくしょー」を連発しながらC支部長に膝蹴りなどみまいつつ寝入ってしまった。これには一同「ホッ」。私は塾長がこの御年(50)まで勝ち負けに子供のようにこだわり、稽古を続けている姿を見るのが好きである。極真のさる高弟の方も、年輩の大先生で汗の臭いがするのは東塾長だけだと言っておられた。