(5月某日)

 大道塾の発行している雑誌『大道無門』の特集「4.8WARS総括」座談会に出るために授業後、池袋へ。ビジネスマンクラスに所属しておられる方が支配人だとかいうカラオケ屋でやるところがいかにも我々らしい。東塾長、夢枕獏さん、高橋英明新宿支部長(某大手銀行系シンクタンクの部長でもあられる)、総合格闘技プランナーにしてパレストラ番頭・若林太郎氏、そして小生。まずは乾杯!って、座談会でしょ?いいのかな。で、いろいろと反省点を述べる。塾長からは、もっと打撃に即した寝技を考えなければダメだ、相手につきあいすぎてる、との講評。小生は、前に日記に書いたこと、そして準備期間がなにしろ短かすぎる旨申し上げた。選手がルールについて飲み込めていなかったと思う。

 座談会そのものは粛々と進んだが、じきに活字にできない展開に。書きたいが・・・いやいや、危ない危ない。

 六時に集まったのに、気づいたら十二時に。「ラーメン、ラーメン」と叫ぶ塾長に続いて、ラーメン屋へ。そういえば、池袋は久しぶりだ。どうしていつも新宿だったんですか、と聞くと、「いや、一応館長(大山倍達先生)に遠慮してたんだよ」とのこと。なーるほど。没後何年かも喪に服してはおられたということか。退会しはしたものの、塾長として流派を率いるとなると、迷惑をかけぬよう遠慮しはするが、ご苦労が忍ばれるのだそうだ。いい話だな、とちょっと感動した。だがラーメン屋を出ると、塾長、すぐに寿司屋の暖簾をくぐっている。これはつきあいきれない。感動がさっぱりさめて、コソコソとタクシーに乗り込んだ。

 

(5月某日)

 土曜日の稽古、2部、加藤師範代の指導。内容は多彩だが、なんといってもビジネスマン32名があの狭い(塾長、失礼!)道場にひしめき合ったので窮屈だった。その大人数でそれなりに納得のいく稽古をさせて下さったのには、感心した。要するに極真コースの人と格闘ルールコースの人に交互にスパーさせるのだが、スパーの限定の仕方も面白かった。年輩者は休みを入れた方が集中して良い動きができる、と改めて思う。本日は終了後、『大道無門』誌から、関東大会優勝の快挙を成し遂げた上野正選手のインタビューおよび、本部ビジネスマン・クラスの飲み会の紹介がある。といっても、インタビュアーは私であるが。このメンバーとの稽古だけで上野選手は本選出場を果たした。我々は上野選手のレベルでガンガンとスパーをこなすとともに、年輩者のペースにも合わせた稽古をしている。これはもっぱら激しいスパーに偏る若い選手たちの稽古方法にも一石を投じたのではないか。稽古後、全員で写真を撮ったが、壮観。

 飲み会はいつもの「養老」にて。奥の間が貸し切り満杯状態である。しかし、やはりただの酔っぱらい集団だなあ。仙台に応援に行くのに、巨大な旗と「上野」と書いたカードを作ろうなどと中高生の運動会のノリで盛り上がった。応援の反則規定が次回大会から出来るのではないかと心配だ。

 

(5月某日)

 読売新聞の「読書」委員会に出席。二週に一回で、井上章一さんも出席された。関西からのお出ましだから、二回に一回ほどの割か。会そのものでは珍しく私にヒットする本がなく、今回は二週続けて書評なしとなった。で、会が終わると某ホテルで恒例の飲み会となる。井上さん、「また、しょうもないことをお尋ねするのですが・・・」とプロレス談義。お会いすると我々はこの手の話しかしない。「松原さんはプロレスには冷ややかだから・・・」と仰るのだが、私が冷ややかなのは擬似格闘技系のプロレスについてである。闘龍門は大好きなのだ。この日は先だっての桜庭の話に集中。ビクトーとやって圧勝したのには、本当に驚いた。高田は・・・となるとむにゃむにゃではあるが。両者が同じ道場というのは意味深だなあ。女子プロレスの話などしていると、政治学者の某先生が「いやあ、プロレスって奥が深いんですね」と仰る。井上さん、すかさず、「底は浅いんですけどね」。この反射神経!さすがただものではない。

 

(5月某日)

 北斗旗体力別選手権の応援&ミヤギテレビの解説のために仙台入り。大道塾全国支部長会議に出席する。今回の議題の目玉は塾の憲法ともいえる定款の設定と、日本パンクレイション連盟加盟の件。後者は実は私は二ヶ月前から知っていたのだが、極秘事項であった。国際松濤館の金沢弘和先生からお話があり、2004年のアテネ・オリンピックにて古代オリンピックの総合格闘技・パンクレイションを正式競技として復活させようという運動がアテネで起きており、これに参加しないかという誘いが松濤館にあったが、打撃系の総合格闘技にも取り組んできた大道塾空手とともにそれに取り組みたい、とのこと。

 そもそも空手のオリンピック化は伝統派もフルコンタクト派も長年の夢であったが、次回のシドニーでライバルのテコンドーが正式競技に採用されたため、夢は絶たれることになった。そこで次に正式競技化の可能性があるのは総合格闘技だとの話になっている。中国の散打もその候補だが、パンクレイションの場合はルールが未定であるため、連盟加盟者の提案次第では変更の可能性がある。アジア・ブロックの長は金沢先生であるが、先生は大道塾のルールが二十年近い歴史を持ち安全性も実証されており、プロ的でもないという点から、アジア・ブロックの提起するルールとしたいと名言された。

 で、会議後私は「伝説の空手家」長田賢一さんと立ち話。先の区議選に突如立候補されたのだが、惜しくも落選。それでも地域で政治について考えていきたいとのこと。私はちょっとした知り合いである樋口美智子さんという東洋大学の政治学助教授が宮城県の浅野知事から乞われて県に招聘されたことを思い出し、長田さんに紹介している。宮城の政治にはなかなか興味深いものがある。

 ビジネスマンクラスの面々が東京から大挙してやってきてすでに飲んでいるというので、合流。女性会員まで来ている。で、カラオケへ。さらにパブに移ると、なんとそこに東塾長および国際松濤館の金沢先生が。金沢先生と歓談させていただき、その懐の広いご人格に触れることが出来た。我々フルコン出身者は伝統派というと色眼鏡をかけて見がちだが、認識間違いを思い知る。さらにラーメン屋まで塾長とご一緒する。ご機嫌の様子、これまでの塾運営での苦労が未来からさす光で報われる思いをしておられるのだろう、ラーメン屋のサンダルをはいたまま国分町に飛び出し、通りを闊歩する姿に塾長の気持ちが表れていた。

 

(5月30日)北斗旗空手道選手権大会体力別速報/宮城県スポーツセンター

○交通事故による足切断の危機から、失った骨を牽引して伸ばすという大手術を経て奇跡の復活を遂げた加藤清尚選手、無念の一回戦負け!内容的には押しなら、スリップぎみのところにパンチをもらい、腰をつく。効果をとられ、判定負け。審議要請が入った(入れたのは私だが)が、主審は判定を覆さず。

○飯村健一選手、肘・膝の連打で軽重量級も制す。小川英樹選手は軽量級5連覇につづき中量級も2連覇。

○ビジネスマンクラス・上野正選手は一回戦を突破の快挙。 

 各級の決勝戦は以下の通り。

◎軽量級   辻村元伸(延長、判定勝ち)高松猛

◎中量級   小川英樹(本戦、送り襟締め一本)高田久嗣

◎軽重量級  飯村健一(延長、判定勝ち)岩木秀之

◎重量級   山崎進(延長、判定勝ち)稲田卓也

○私個人としては、加藤さんの敗退には納得いかないものがあるが、それはそれ、勝負の判定が一定でないのは時の運か。むしろ、もっとも感動した飯村さんの試合ぶりについてさらに書いておきたい。正直言って、飯村さんのムエタイ流の試合ぶりは、数年前までは北斗旗体力別中量級の決勝まではいくものの、無差別だとカウンター狙いに終始して、積極性に欠けるところがあった。しかもボクシングに専念しておられる間に寝技がウチとしてはほぼ完全解禁となって、失礼ながら「もう飯村の時代は終わり」といった見方が支配的だったと思う。ところがあの、クールというかおちゃらけているというか、いつも飄々とした受け答えしかしない飯村さんが、突然ウェイト・トレーニングに集中し、パレストラで打撃の指導をしていることもあり寝技にも関心を持たれたのにはおどろいた。当然「技オタク」らしく、パワーは二倍アップ、寝技もうるさいくらいのことを言うようになった。復活に当たって、ご当人はまたどこまで本気か分からない反応しか返ってこないが、それでもブランクを埋める覚悟は相当なものだったと思う。

 私が感動したのは、とくに今回の一回戦である。あのテクニシャン・飯村が、体調が悪かったこともあろうが、ズンズン前に出続けて、膝と肘をひたすらに出したのである。ポイントも取ったし、いつもなら最後は適当に流すところも、ゼーゼー言いながら突進する様には目を疑った。いつも餌を仕掛けては相手の出に併せてカウンターを狙う省エネ・飯村とは別人の阿修羅のごとき突進ぶりには胸が熱くなった。歳はとっても、この熱い思いは通じるものだと思う。厚い胸、寝技にもひるまぬ堂々たる試合ぶり。これがあの飯村か!?尻上がりに調子が上がり、対・長野戦ではタフな長野選手に膝をきかせたし、対・岩木戦では肘の連打・乱打で戦意喪失させた。実に立派な優勝であった。といっても、勝利者インタビューは、いつもの通り「勝ちは娘にささげます」といった調子で飄々としてはいましたが。娘さんの写真、とくに私の家内が贈った「うさぎ」をお嬢さんが囓っている写真を皆に見せびらかしておられました。おめでとう!