| (8月某日) 大道塾の雑誌『大道無門』の内容を大幅刷新するために、自分から手を挙げて編集に加えてもらうことにした。とにかく、読み物を増やさないと、このままで800円をいただくというのは気がひける。で、私としては、他の媒体で華やかに採り上げられることもない選手たちゆえ、書店売りの機関誌でこそドカーンとスポットライトを当てるべきだと考える。そこで提案したのが、特集。「変貌し続ける『稀代の業師』飯村健一ストーリー」。このあいだの優勝を一つの節目としてみると、飯村師範代のこれまでは三期に分かれそうだ。その各期について、インタビューする。なにしろ編集部員は一名で私はそこまではかかわれないから、特集はすべてインタビュー構成にしようと思う。あと、写真を単純にはめこむだけ。で、十ページを当てようと思うのだが、結果は如何に?他に特集「小川英樹をいかに倒すか」、十人ほどにインタビューする。また、「散打との遭遇」などを提案する。 |
| (8月某日) 夏休みに入り、ほぼ毎日稽古している。といっても、道場稽古も夏期休暇に入ってしまったので、もっぱらウェイトとサンドバッグ。今年二月に久しぶりに極真ルールで審査の相手をして肩を痛めたのは、ベンチをやりすぎたため一方向にばかり筋肉がついたものと考え、このところベンチは80キロほどの軽重量を高回数上げるに止めて、肩やバックプレス、さらにストレッチを念入りにやっている。それと、肩はなんといってもサンドバッグだということで、週の半分はジムで一時間以上はサンドバッグを叩いている。そもそも入門当時、長田賢一さんがビデオでサンドバッグを遊ぶように叩いているのを見て、いつかこうなりたいと思っていた。もちろん長田さんとは比べものにはならないが、ステップしながら相手を想定し、パンチと蹴りを交互に出しているとなかなかいい感じ。ある日の自主稽古のメニューはこんな具合だった。 縄跳び 3ラウンド 蹴り ステップと防御をつけて50 パンチ 連打、防御を気にしつつ4ラウンド 1−2からの蹴り、合計100、股上げからのロー100 合間には腹筋からの1−2 |
| (8月某日)
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| (8月某日) 雑誌『大道無門』の次号の特集「散打との遭遇」を作るため、夕刻に道場へ。ビジネスマンの森君の姿も見えるが、選手も武山・長野・山崎となかなか壮観。私は稽古を横目に二階に上がって記事の作成。「東京武術散手倶楽部」会長の木本泰司さんにご足労頂いてお相手願う。まずは木本氏がこれまで書いてこられた散打(武術散打)記事の転載を許可してもらう。機構としては、「国際武術連合会」というのが中国武術の国際組織で、これはIOCに加盟許可を得られる寸前であるという。そこに属する日本の組織が「武術太極拳連盟」で、ここはJOC傘下。それにこの六月、「東京武術散手倶楽部」が加盟許可となった。大道塾は現在唯一のその賛助団体であり、私は大道塾散打班長として、倶楽部の副会長でもある。次回は十一月に香港で世界大会があるが、これは四月の他流試合とはルールが違って純粋な散打である。大道塾からは少なくとも一人が参戦する。おそらくびっくりするような大物の登場となるだろう。乞う、ご期待。そこで木本さんからルール解説を受ける。土俵のような台から落としたら3点、後ろ蹴りが3点など、意外なポイントがつく。で、長谷川選手の試合を見ながら、点数がどうなっているのかを計算してみる。フルコンタクト空手の常識でいえばあの試合はせいぜい効果を取られて負けといった内容だったが、実にポイント制で算出したら0−9であった。これだから判定は怖い。びっくりした。 さらに東先生も交え、場所を焼き肉屋に移して、座談会。ここで出た話題が、中国選手の得意は腹への横蹴り(ソクタン)と膝への関節蹴り(セッタイ)、さらに右手は顔中心を縦にガード、左手は真下にガードで飛び込むというブロックの仕方だということ。つまり、膝を牽制しながら顔をガードしつつタックルにくるというのは散打の定石なわけで、これは中国の相撲に似た武術「スワイジャオ」の技術である。これはヒクソンのやってるのと同じなのだ。これまでスワイジャオは柔術と同じだという報道がなされたが、普通そうした言い方をすれば寝技が共通という意味に取るだろう。そうではなくて、タックルに来るまでの型のことだったのだ。我々としては、このブロックを崩すか、ソクタンをしのぐことがとりあえずの課題となりそうだ。特集は充実した内容になりそうである。 |
| (8月29日) 今日の本部は、いや、暑かった。むしむしする。風がない。そのうえ道着は長袖・長ズボン。スーパーセーフにサポーターをつけると、まったく我慢大会である。 3部、前半は投げ技。打ち込みだけでもうフラフラ。立ってるだけで気力が湧かない暑さ。乱取りは若手と。やられる前にカニばさみなどという姑息な手を使ってお茶を濁す。後半のスパーでは、黄帯の顔面パンチをこちらは極真ルールの制約で反撃するという限定スパーでがあった。途中まではテンカオや前蹴りで調子づいていたのだが、突然スタミナ切れで失速、最後1−2をガーンと食らってやめ。スーパーセーフも悲鳴を上げたのか、ひびが一直線に入って割れた。これ、空手関係者ならどんなにメチャなことか分かるはず。なにしろ1トンの衝撃に耐えるという謳い文句の面だから。最後緑帯の寮生とやるように高松師範代から指示されたが勘弁してもらう。脱ぐと、汗を吸った道着の重さがハンパではなくなっている。3キロとか体重が減ったのではないか。自主トレしていたかの加藤清尚さんすら低血糖状態で立ちくらみしたとか。これでは耐久力をつける鍛錬とはいかない。気力がなえると技術が荒れるという面もあるのだから。 稽古後、なかなか動く気にすらなれなかったが、小一時間してから養老の滝に行くと、2部のビジネスマンがまだいた。しかし皆、顔色悪いよ。脱水してビールを注入したのだから当然といえば当然か。 |
| (8月30日) そういえば先日、『週刊宝石』の編集の方からメールが来て、プロレスラーと格闘家(といっても、7割プロレスラー、あとK−1選手とヒクソン)の写真集を出版するに当たり、一部の写真を掲載するので文章を書いてほしい、とのこと。一応打診で、そののちに締め切りが設定されるところだったのだが、小生、5分で書き上げてしまったのでそのまま返送しておいた。ただし「プロ」格闘技の現状について書いたのであって、必ずしもそれは私自身の武道観と同じではない。打診しただけなのにいきなり原稿が帰ってきたので編集者氏は相当驚いたらしく、PRIDE−7のチケットをくれるという。やってみるもんだ。ちなみに原稿の内容は・・・
『九○年代の格闘技』松原隆一郎 一九九○年代に入ってからの格闘技の世界の顕著な趨勢として、格闘技とプロレスの境界が崩れたことがある。八○年代のプロレス界は、猪木からUWFまで、プロレスの枠の中でいかに本物の格闘技らしく見せるかをめぐりしのぎを削った。その時点ではキックボクシングにせよレスリングにせよ純粋な格闘家は、興業プロとして十分な所得を得ることができなかった。彼らは格闘技以外のアルバイトに励むか、アマチュアとしてオリンピック競技にかかわるか、極真空手のようにレッスン・プロとして一般練習生の指導に当たるかしかなかった。それが一変する。 打撃系では極真からヨーロッパのキックまでヘビー級選手に対戦させ魅力を引き出したK1の出現、寝技系ではルールの規制を最小限にした他流試合であるアルティメット大会の成功。ここで「誰が一番強いか」という言葉がプロレスラーの専売特許ではなくなった。高田延彦のように、プロレスラーでありながらヒクソンとの格闘技戦に挑む者も現れた。結果は惨敗だったが、それでもレスラーの中で腕に覚えのある者は挑戦を続け、高田の弟子である桜庭などは格闘家に連勝するに至っている。逆にケン・ウェイン・シャムロックのようにプロレスに転出する格闘家もいる。 アンディ・フグ対ピーター・アーツなど想像するしかなかった夢のカードの出現は、官庁の統廃合をも思わせる。規制を撤廃して観客サービスを重視すれば、プロ格闘技の興業が成立することは明らかとなった。もはや何が起きてもおかしくはないのだ。 |
| (8月31日) 中井裕樹先生のパレストラに出稽古。中井さんは先頃ブラジルで開かれたブラジリアン柔術の世界大会黒帯の部で、惜しくも僅差で一回戦敗退とはなったが、晴れて黒帯を授与された。ヒクソン・グレイシーを筆頭に世界に三十人だかしかいない黒帯の仲間入りである。おそらく寝技だけならこのルールで柔術家に勝てる柔道家というのは世界大会レベルでも滅多にいないのではないか。ジアン・マチャドぱアブダビ・コンバットで桜井速人に勝ち優勝したとしてこの世界では最強の一人に数えられるが、彼すらも今回は一本負けしている。なにしろ道着ありの寝技大会では頂点を極める大会なのだ。バーリトゥードも含め、裸の寝技試合でいくら強くても柔術ルールでは勝てなくなっている。締め落とされたホイスもしかり。バーリトゥード選手がK1で勝てないのと同様のことが起きているわけだ。ホイラー・グレイシーが優勝したのはさすがではあるが。 本日は6時半過ぎからの参加。マウントからブリッジを防ぎつつ正面の十字締めに入るコツと、カメでバックマウントを取らせないよう前方回転しつつ旋回してガードポジションになるコツを教わる。後者は相手の足を入れられないよう、裾をもちつつ巻き込んで反転し、後ろ袈裟固めになるところまで。うーむ、誰が考えたんだか知らんが、まったくシンプルかつ人体の理にかなっている。すばらしい。こんな秘技をいとも簡単に公開される中井さんの信念には改めて驚く。あまり広くない道場に立つ隙間もないほど(40 人?)の若者が集まるのも当然だ。それだけに熱気で、クーラーがきいてはいるものの、暑い。 ムーブメントには参った。中腰の走り、コサックダンス、タックル切り、前後ブリッジ、そのまま前後反転、前転・後転、逆立ち歩き、・・・・と書ききれない(ほんとは覚え切れてない)動きをやっただけで気持ち悪くなってきた。とくに後転はダメ。脳がシャッフルされるようだ。先生は、前方にコケてそのまま反転、ブリッジするなど難なくこなされるが、身体能力の高さには唖然。 極真と胸にある道着を着ている方が親切で、そのあと打撃のマスと、寝技のスパーにつきあってくれた。私としてはいろいろ試してみたが、最後に相手にバックマウントを取られ、裸締めで絶対絶命になったところで、相手の足首をこちらの足で極めるのに成功。気持ちよかった。この極真の方、私の力が強いと盛んに仰る。そうかなあ。道着を脱ぐと他の人にも筋肉が凄いといわれた。格闘技も種類が違えば体型が違うということか。もっとも、このところサンドバッグばかりやってたせいで、肩が妙に盛り上がってきてはいるが。 |