ブルーノ・アマーブル『五つの資本主義』(藤原書店)
市場化を「改革」とみなし、制度や慣行・規制などの「構造」を基調として解体する構造改革は、世界の潮流となっている。規制を緩和し解雇を容易にして、金融は銀行から株主中心へと移行させ、公的部門でも緊縮財政や民営化が推進されている。国際金融基金(IMF)や世界銀行が経済破綻した国々に融資と引き替えに課したからだが、日本では長期不況への手詰まりから自発的に採択、大陸欧州(とくに独仏)でも受け入れへの圧力が強まっている。
けれども制度が市場を縛る足かせでしかないとは、断言できない。日本や大陸欧州では、ながらく制度が市場を支え、成長を実現してきた。それゆえ両地域では制度重視の経済研究が進んだ。青木昌彦の「比較制度分析」は、オン・ザ・ジョブ・トレーニングやカンバン方式といった制度を市場取引という「ゲームのルール」とみなし、企業間関係から金融、官僚制に至る組織が相互補完にある状態を分析している。またフランスでは「レギュラシオン学派」が、労使関係を中心として制度が調整されてゆく動態を論じた。
問題は、制度が市場にとって不可欠として、解体せずに改革する方針をどこに見出すかだろう。青木は制度が「かつてのゲームの結果(均衡)」として、経済の中で自生するとみなした。けれどもそれだと、欧州の労使関係におけるような厳しい対立が記述できない。しかしレギュラシオンを継ぐ著者は、労使関係だけを特筆するのでは資本主義の多様性が見失われることに配慮し、青木説に「ルールは経済とは別次元に属する政治対立の中で生成する」という自説を加え、制度経済論の集大成を図っている。圧巻は後半部で、多様なデータを多変量解析にかけ、そこから制度を分類して、資本主義を「市場ベース」「社会民主主義」「大陸欧州型」、「南欧型」そして日韓の「アジア型」という五つの「型」に類型化している。
製品市場の競争過程で消費者の嗜好を見落とすなど細部については異論もあるが、経済を英米の「市場ベース」だけからとらえる単純化への反論として、貴重な成果である。
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