口上

 私は現在、東孝師範を塾長とする空手道大道塾に所属してます(九六年に六人組み手を行い、現在二段)。大道塾はいわゆるフルコンタクト系空手の道場ですが、東師範の提唱する武道の理念から二つの際立った特徴があります。

 一つは、社会体育として武道をとらえるというものです。いわゆるプロ的な選手、強い選手を育てることだけが道場の目的ではありません。道場には様々な稽古生がおり、彼らは平等に武道に励んでおります。稽古や試合は激しいですが、試合結果だけを求めるのではないのです。我々は稽古や試合、審査をできる限り長く継続し、それを社会生活を営む上での精神的な柱として生かそうと考えています。

 そもそもこれまでの我が国のスポーツはプロ・スポーツでなければ学校体育かもしくは企業スポーツでした。  つまり社会人がみずから親しみ、日々の生活の糧とするためのスポーツではありませんでした。これはクラブ・スポーツが地域に定着しているヨーロッパとは著しく異なる点です。我が国でもそれに異を唱える動きがあり、Jリーグとして実現しています(この点については、朝日新聞に掲載の拙稿を参照のこと)。なかでも武道は、ただ教えるだけでは凶器を世の中に配布しているようなものですから、道場にはその使用と心構えについて管理する義務があります。それゆえ我々は、空手を「社会体育」としてとらえ、社会人がみずから親しみ、また自らを慎むものと考えています。それゆえただ強いからといって、それだけで良い空手家とはみなしません。

 したがって道場には年功により全体をまとめる役割の分担は存在していますが、一流選手も無名の稽古生も、また社会人も女性も学生も寮生(住み込みの選手)もなんら差別なくそれぞれの技量に応じて稽古に打ち込んでいます。実際のところほとんど皆が対等といっていいでしょう。私は現在四十二歳であり大学の教員であり物書きでありますが、道場においては一人の二段の稽古生という立場で扱っていただいています。なごやかに、しかし激しく、ということです。

 (なお、私の「社会体育観」はあくまで松原個人のものであり、大道塾の公式のものと一致するとは限りません。私見はプロ・サッカーをめぐる最近の論議に関連づけて、朝日新聞に書きました。また、武道についてもいくつかの文章を書いています。1. 2. 3.

 大道塾の特質の二つめは、フルコンタクト空手を基盤としながら、しかし実践でも通用する総合格闘技としての武道を追求するということです。空手だけに基礎的な練習は打撃にあります。しかし実践では柔道家やレスラーが相手となる場合もありますので、投げ技・寝技をしのいだうえで打撃を使わねばなりません。したがって実践で通用する打撃の技術を自分なりに工夫するということになり、柔道を大幅に取り入れる者、突き蹴りにとくに力を入れる者、寝技に熱中する者、掌底でパンチを打つ者など、発揮される技術体系はまったく人それぞれに異なります。しかし打撃・投げ・寝技のうちで不得意なものがあればそこをつかれますから、全体的に修得する必要があります(といっても、たとえば全員が首相撲ができなければいけないわけではありません。相手がムエタイ風に組んできたときに相撲のように押し倒すという防御技術をもっていてもいいのです)。一言で言えば、「打撃系総合格闘技としての空手」ということになります。

 大道塾には一般のクラス、選手クラスとともにビジネスマン・クラスが併設されています。私はどのクラスでも稽古していますが、とくにビジネスマンクラスでは総本部だけで八0人を越える仲間たちと気持ちよく汗を流しています。以下は、大道塾およびビジネスマンクラスの紹介・報告、および私の空手家としての日々の記録です。

 

T.大道塾とは

→大道塾のサイトをご覧下さい。DAIDOU

 私が属している総本部は、地下鉄有楽町線の「平和台」徒歩5分にあります。電話は03−3931−6856

です。

 

 

U.ビジネスマンクラスについて

 総本部ビジネスマンクラスでは、約26歳以上、上限なし(平均は40歳強か?)の方々を対象に、年齢とコンディションに合わせて無理なく稽古することをモットーとして週に2度の稽古を行っています。また、各支部でもビジネスマンクラスは併設されています。

 稽古時刻は毎週木曜日午後7時から(指導は98年度北斗旗体力別全国王者、高松猛2段)、および土曜日4時30分から(現在、特別企画として「小さな巨人」加藤清尚3段による指導が隔週に行われています)および7時からの計3回各2時間です。最近百名ほどの大所帯となり、一般部の関東大会に挑戦するほど技量も向上しました。終了後は有志による宴会が恒例となっています。 我々のクラスは、夢枕獏さんの『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』(講談社文庫)のモデルであり、さらに奥田瑛二さん、藤岡弘さんによりNHKでドラマ化されました(『ビジネスマン空手道』)。