『アメリカの歌をもとめて』石川好著・中央公論社刊・一九五〇円

 これは、現在最良のアメリカ・ウォッチャーが、そのアメリカによって逆に期待を裏切られていく悲痛な魂の記録だ。

 著者はまず、92年は、新大陸発見およびレコンキスタから五百年であり、パールハーバーから50年、EC統合の年でもあるとして、この年の大統領選挙では何かが起こると想定し、四年前の88年暮れに筆を取る。雑誌『中央公論』に毎月、92年へむかうアメリカの軌跡をレポートしてゆくのである。

 著者は、「アメリカの世紀の終焉」が進みつつあるのだとしても、アメリカは最大人口を誇るベビーブーマーたちによって一時息を吹き返すに違いない、それは60年代の公民権運動でし残したことのやり直しを通じてである、と期待する。ところが、リパブリカン・デモクラットの誕生、ゲイの家族論争、人種問題、女性問題としての対イラク戦争、と事実を報告する中で、その事実の連鎖は、期待されたようなゴールから次第にはずれていってしまう。大統領選挙立候補者たちは、草の根から民衆の希望の歌声を指揮するという偉大なアメリカの精神を体現できず、前政権の経済政策を非難するのみだからだ。

 こうしてこの物語は、今年の大統領選挙を待たず、昨年三月に中断される。「歌は別の土地で歌われる」として、著者みずからが日米のはざまでの草の根の実践活動に携わってしまうからだ。レポーターの実践は、絶望の歌であれ書き続けることではないか、と思うのだが。 

(月刊宝石)