『20世紀の思想』加藤尚武/PHP新書
今世紀も残すところ三年。思想という長尺の営みについても、そろそろ総括の必要が迫られている。けれども哲学をはじめ現代の思想は、専門化が進みすぎて散り散りに断片化している。
本書にもあるように、英米系では論理実証主義からプラグマティズムへ、大陸の独仏では現小学から解釈学へ、マルクス主義はコミュニケーション理論へと代替わりした。そして互いに無視するか一知半解で批判しあっている。それぞれの長所と短所を中立的に判定しレフェリーを務めるのには、ただならぬ教養が必要となる。
哲学界の重鎮・加藤氏がその任に適しているのは衆目の一致するところだろう。さすが氏の手になる今世紀思想家列伝だけあって、ミル、マルクスの重要性を再確認し、レヴィナス、フーコー、ハバーマスも受け止め、フッサール、サルトル、丸山真男を切り捨てるという荒業が飛び出す。ポケットに入る小さな本の中で展開される、思想の系統だった概観を眺めて、嫌みなほど難解な原文がこんなに分かりやすく要約されるのも、哲学に過度に期待しなくなった今世紀末ならではだ、と感じる。
評者としては、デリダを解釈学としてとらえる手があるのに驚いた。
(月刊宝石) |
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