『新しいアジアのドラマ』川勝平太監修/筑摩書房/2600円

 かつてアジアは、近代市民社会でないため資本主義を受けつけず、貧困を運命づけられるとされた。日本が高度成長するや、例外としての日本の特殊性のありかが研究された。ところが八十年代から、日本が円高ゆえにNIESに直接投資を行い輸入を増やしてその成長を牽引すると、続いてNIESが立場を替えてASEANに高度成長をもたらした。各国は、群れなす雁のように舞い上がり、大陸中国すら離陸しそうな勢いだ。

 アジアの奇跡は誰もが予測しえず、研究は一から出直さねばならないが、それだけに洞察と着想に溢れた議論が可能になった。本書では、監修者を始め一流の経済史家たちが三日にわたって集い、アジア経済の五百年について白熱の討論を繰り広げている。

 十五世紀には、先進地域だった中央アジアの強すぎる影響からの脱出が重大事だった。ヨーロッパは資本主義的生産と戦争による国際関係の調整のシステムを発明して独立し、日本は鎖国経済と徳による平和的統治を機軸として離脱しえた(川勝)。日本の経済文明は、かつてマッチ・石鹸・時計など欧米の製品をアジアの需要に合わせて模造する「変電所」だったが、現在ではウォークマン・ファミコンと「発電」も行うに至った(角山栄)。中国では、沿岸省市周辺の局地経済圏が成熟することによって内陸にまで市場化のダイナミズムは伝わるだろう(渡辺利夫)、など。

 高階秀爾(美術史)・李御寧(元韓国文化相)・大橋良介(美学)など、コメンテーターも多士済々だ。

  (月刊宝石)