『テクノスタルジア』香山リカ/青土社/一八〇〇円
結婚を遠ざける女性、吉本ばななの描くもの、TVが人間の存在を脅かすわけ、オウム真理教事件のもたらしたもの−−。日々患者と接する現役の精神科医が、これらのテーマを鮮やかに説き明かす。 一見したところ互いに関連もなさそうなテーマ群である。だがこれらの文章を貫くものがある。八〇年代のニューアカ・ブーム−ポスト・モダン思想の日本的流行−の後始末に取り組むという、著者が自身に課したテーマがそれだ。
しかし、私など凡才は知らなかったな。アカデミズムに異議を唱える大学助手たちがマイナー文化のライブを見ての帰り、パンク野郎らと中華食べたのがそのブームの内実だったとは。著者は円卓を囲みながら、これでやっと「エディプスの三角形」や「少年少女のビルからのダイブというイメージの美」という、自分を苛む「無意識の構造」から解放されることができる、と考えたのだそうだ。
だが、こうした考えは、提案者の哲学者・ドゥルーズ自身の飛び降り自殺によって挫折した。結局、ブームは何の解放ももたらさなかったのだ。けれども、と私は思う。解放を目指す格闘は、続けられるべきなのだ。今度は、「見る」だけのプロレス的格闘によってではなく、みずから参加する格闘技によって。
(月刊宝石) |