『評判記』松原隆一郎(2001.1)

 ロバート・キヨサキの『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書店)が大変な売れ行きだという。最近流行りの対句のタイトル、鈴木成一によるシンプルな装丁、子供に語って聞かせるスタイルの「誰でも分かる経済もの」。これら売れ筋の条件に加え、超低金利が続き年功賃金や年金など所得にかかわる既存の制度が揺らぐ日本の現状だけに、「アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学」という副題で、売れるべくして売れたという観がある。

 ただし読み進むと、そうした先入観は微妙に揺らぐ。手持ち資産が生むキャッシュフローでぜいたくするのが金持ちだから、勤め人として株主を儲けさせるだけでなく副業も持ち、税で政府に貢献するより節税に励み、借金して消費する生活には見切りをつけようというのは分かる。だがその方法となると、みずから会社を興し株や不動産に投資し、資産をしっかり管理することだというのだ。

 これ、バブルの時期によく聞かされた不動産屋や証券会社のセリフじゃない?アメリカで好景気に乗りたまたま儲けた成功者の自慢話とも読めるのだ。それを郵貯大好きの日本人が聞くという構図。日米間の経済慣行の違いもあり、即効性のノウハウなどなきに等しい。感化され年初から投資を始めた人は、損したのではなかろうか。

 個人投資については『ゴミ投資家』シリーズ(メディアワークス刊)が詳細なノウハウで定評を得ているが、その戦略は海外のタックスヘイブンで口座を持つこと、と極めてマニアックである。

 キヨサキ本には、別な一面がある。「学校で良い成績を取り、大企業に入る」というのは時代遅れの教育で、貧乏人の「ラットレース」にすぎない、という主張だ。『不平等社会日本』(佐藤俊樹・中公新書)という閉塞感があるだけに、この学歴批判が爽快に感じられるのかもしれない。