| 『現代思想の困った人たち』小浜逸郎/王国社/一六〇〇円 オウム事件で世間が騒然としていたころ、文筆界でもちょっとした騒動があった。産経新聞に連日掲載されていた匿名コラム「斜断機」上で、執筆者同士が猛烈な罵倒の応酬を始めたのである。それが芹沢俊介と小浜逸郎の両氏であることが明瞭だった。なぜといって、吉本隆明氏が何を言おうが褒める文を書く人は芹沢氏しか思い当たらなかったし、小浜氏の方は匿名で書いたことを署名原稿でもわざわざ同じ表現を用いて書き改めていたからである。 本書はその匿名コラムでのケンカを、小浜氏が実名を挙げて行ったものである。要はオウム擁護の吉本氏をたしなめたところシンパの芹沢氏から反論を受けて応戦したというものだが、内容的には実は重要な論点が多く含まれている。とくに貴重に思えるのは、小浜氏が自分に向けられた批判に思想的に応じている点だ。もちろん罵倒には罵倒を返しているが、それで終わればただのケンカである。筆者はそれらの不毛を苦々しく感じてきた。言論とは業界の仕切りのことだとしか理解していない輩もいる(例、大月隆寛)。 ともあれ、このケンカを助走としたからには、小浜氏は本丸の吉本批判を敢行せざるをえなくなった。けだし見物ではある。 |