『変わる消費者、変わる商品−消費財の開発とマーケティング−』陸正著/中公新書
コンビニエンス・ストアに立ち寄ると、棚には無数の商品が整然と並んでいる。ある日棚にあった商品が、翌日には忽然と消え、別な商品がその場所を占めている。いつまでも居残る商品もある。見慣れた光景だが、こうした商品の消長の背景には、企業の一喜一憂がある。
かつてある経営者は、日本企業は良い品を安く売るのだと言った。けれどもその「良い」や「安い」は、スポーツ選手が「速い」とか「強い」とかいう意味で客観的に評価される事柄ではない。ともに他の商品との比較によって決まり、しかも比較するのは作り手ではなく消費者なのだ。消費者にとっての「良い」「安い」の基準を発見するのがマーケッターの役割である。
本書では、群を抜いて的確なマーケティング戦略で数々のヒット商品を生み出して来た花王の元調査部長として著名な著者は、ある商品が市場に現れ定位置を占めるためのノウハウを、淡々と述べている。
商品の評価やパッケージ・デザイン、ネーミング、価格づけにかんする調査の手法。広告の種類の選択から作り方、投入頻度の決定についての知見。新製品の売上予測と購入者への追跡調査の方法。これらをコンパクトに紹介し、事例として花王がかかわった紙おむつ・生理用ナプキン・洗剤などの開発の経過をドラマチックに描いている。教科書でありながら、高度化した商品社会の裏面をかいま見せてくれる本だ。
(月刊宝石)
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