| 『東京味』大谷浩己/四谷ラウンド/一四00円 ガイドブックの書評をするというのは書評のルール違反だと思われるかもしれない。たしかにこの本は体裁こそガイドブックではある。しかしお店の紹介の合間に見える著者の食についての思いと見識の高さには胸を打たれるものがある。たんなるお薦め本とは、目線の高さが違うのだ。 基本となっているのは、『日刊ゲンダイ』に連載された「A級グルメ超穴場」。上限一万円で行ける都心のお得な店を紹介した名物記事だ。それに現時点での再取材を添え、値が張っても行く価値のある店の情報も加わえてある。とりわけ現在の東京を彩る飲食店の状況分析が出色だ。 たとえば。魚料理に限っては、質や鮮度の点で東京のフレンチは本場をもしのぐ。イタリアンでみるべきはオードブルとパスタまで、メインは落ちる。中華は、広東よりも四川が高度。しかも大型店より独立系小店に注目すべし。ああなるほど、と膝を打ってしまう。食から東京の素顔も見えてくる。 食べるだけなら万人がプロのはず。グルマン・ライターならではの見識がここにはある。能書きたれる料理人に客がへつらう風潮を批判し、食そのものを楽しもうとする著者の見栄のない姿勢は有り難い限りだ。 (月刊宝石) |