「『空手バカ一代』の研究」木村修/アスペクト/一四七〇円
史上もっとも多くの読者に影響を与えた漫画とは何だろうか。『鉄腕アトム』?『ドラゴンボール』?だが、こと人を「動かした」点では、『空手バカ一代』に勝る漫画はないだろう。この漫画に感動した無数の読者が、モデルである極真会館におしかけた。道場に入り切らない入門者を「まびく」のが大変だったという。 漫画の冒頭は、「事実を事実のままに完全に再現することは、いかに、おもしろおかしい架空の物語を生み出すよりも、はるかに困難である」と始まる。しかし現在では、当の漫画が脚色だらけだったことが分かっている。壁を蹴って相手に飛び蹴りする「三角飛び」は、作者・梶原一騎の荒唐無稽な想像の産物であった。しかし、この漫画が提出した「最強の格闘技を求めて旅する」というコンセプトは今も生きており、アルティメット大会やK−1といった異種格闘技戦に人の目を集めるようになって、相撲やボクシングという確立された格闘技の枠組みを破壊しつつある。
そんな『空手バカ一代』の脚色が何であったかを、既刊の無数の資料をつきあわせて「研究」したのが本書である。この研究のおかげで、物語の中から、歴史の真実がほの見えてくる。次は、実録・大山倍達伝が読みたい!
(月刊宝石) |