| 『東京サイテー生活−家賃月2万円以下の人々』大泉実成著・太田出版・一二〇〇円
つげ義春の『李さん一家』の枯淡の境地を求めて、西武線・富士見台から徒歩 10分の所に、木造四畳半+流しの板張り一畳+トイレ共同=二万円で仕事場を借りた。壁は極薄、隣の電話は内容が全部聞こえる。蟄居して原稿なんぞ書いていると、バブル時代が実在したとは信じられない。だが同好の士はいるもので、このルポルタージュには、「たけし軍団」の佐竹チョイナ以下、著者も含め 22人のサイテー人間(家賃二万円以下の人々への讃称)が登場する。皆、ただ者ではない。月収十六万円で銀座に務める美人OLは、広いと掃除が大変、風呂は銭湯でなければ狭くていや、トイレがある部屋は臭いとの理由で、一万八千円の部屋で個性的な日本画を描いて暮らすが、もっとマトモな所に住め、と上司に幾度も忠告されたという。以前は代々木公園に住んでいたパンクロッカーもいる。バブル経済には無縁の地味で堅実な人々と思えるかもしれないが、ほとんどが二十代で将来売れるのを夢見るアーチスト予備軍、夢が現実から相当ズレていそうな人もいる。けれども、彼らの夢のバブルな部分も、せいぜい青春の苦みといったところで、笑って読める。笑えないのは、彼らの背後にチラッと見える、同じアパートに住む孤独な老人たちの姿だ。(月刊宝石) |