受講生のU君からこんなメールをいただいた。

*******

先生の授業を受けて始めてからはや約二ヶ月がたちますが、全体的な印象として、言い方は悪いのですが、

「ふ〜ん、そうなんだ。。で?」と言う感じで終わってしまうのです。

それは自分が経済について何も分かっていないからだとは思うのですが、、、

そこでお願いがございます。

もしよろしければ、今までの授業で扱った範囲の中で、「ここは特に理解が必要不可欠だ!」と先生がお考えになるところを例題として出していただけませんか?

どうも具体的に問題に当たってみないとイメージがつかめないもので。

******

は一方的に喋っているだけなので、受講者諸君のこうした感想についてはあまり理解できていない。したがつてこれは、大変ありがたい要望だと思う。そこでさっそく、教科書に沿って例題を作成してみよう。

(第一章)

@経済学では、「経済」と呼ばれる人間の営みについて、様々な概念によって解釈している。それぞれの概念は、時代を追ってそれに対応する現象が登場したことに敏感に反応しつつ多くの学者たちが形成してきた。第一章では、近代における経済を構成する、そうした概念が説明されている。そこで、次のそれぞれの概念の意味について、簡単に説明せよ。

1.経済システム
2.財
3.サービス
4.生産・流通・分配・廃棄
5.生産要素
6.中間財・資本財
7.フロー・ストック
8.社会的分業・組織内分業
9.社会生活と私生活、プライベートとパブリック
10.家事の外部化
11.流通の四タイプ:交換・収奪・贈与・配分
12.市場経済
13.貨幣
14.兌換紙幣・不換紙幣
15.貨幣商品説・貨幣国定説
16.貨幣の価値尺度機能・価値保蔵機能
17.利子・利潤

Aあなたが一人で畑を耕して作物を作ることと、「経済システム」というときの「経済」とは、どこが違うか。

B市場で取引される財には多様なものがあるが、すべてを同等に扱うべきだろうか。「生産要素」に注目して論じなさい。

(第二章)

C生産要素にかかわる次の概念について、説明しなさい。

1.生産要素の対価
2.賃金労働
3.減価償却
4.社会主義・資本主義
5.公共資本

D「生産要素」を商品化しようとすると、さまざまな「制度」が必要になる。制度が時代とともに変化すると、経済体制が大きく変わる。では、以下の経済体制の特徴はどのようなものだったか。とくに「生産要素」の三要素とされる労働・資本・土地(自然)の変化に触れつつ論じなさい。

1.原始社会
2.共同体と国家
3.封建制
4.産業資本主義
5.自由主義経済
6.独占資本主義
7.社会主義の試みと崩壊
8.政府が介入する自由主義経済

(第三章)

E市場にかんして、次の問いに答えなさい。

1.市場とはどのような場か。そこで貨幣はどのような働きをしているか。
2.市場価格とは何か。それはどのような水準に決まっているか。
3.需要とは何か。供給とは何か。

F効用にかんして、

1.効用とは何か。
2.限界効用とは何か。
3.商品に対する効用を貨幣単位で表示するためには、どのような条件が必要になるか。
4.限界効用逓減は、なぜ生じるのか。
5.ある人のある商品に対する限界効用が価格に一致するのは、どのような理由からか。
6.消費者余剰とは何か。図を用いて説明せよ。
7.市場需要曲線はどのように描かれるか。また市場における消費者余剰について、図をもちいて説明せよ。

G生産費にかんして、

1.生産費を固定費用と変動費用に分けることができる。それぞれ、どのような性質を持っているか。
2.生産量と固定費・変動費の関係を図示せよ。
3.限界費用とは何か。
4.限界費用が逓増するのはどのような場合であり、それは何故か。
5.ある企業が利潤を最大化するために、価格と限界費用との間にどのような関係を想定するか。
6.生産者余剰とは何か。図を用いて説明せよ。
7.市場供給曲線はどのように描かれるか。また市場における生産者余剰について、図をもちいて説明せよ。

H市場均衡について、

1.市場均衡とは何か。
2.それはどのような過程を経て到達されるか。ワルラスの想定について、説明せよ。
3.市場均衡と社会的余剰の関係について説明せよ。
4.均衡の存在とは何のことか。均衡の安定とは、何のことか。

I関節税や補助金が企業に対して課されるとき、社会的余剰は増えるのか、減るのか。

J規模の経済とは何か。

K完全競争とは、どのような状態を言うか。

L供給独占について、

1.独占者は、供給量をどのように設定しようとするか。
2.独占状態では、社会的余剰は価格=限界費用という完全競争状態に比してどのようになっているか。

M寡占とは何か。それを分析するには、どのような理論があるか。

N商品間の関係について、

1.代替財とは何か。具体例を挙げて説明せよ。
2.補完財とは何か。具体例を挙げて説明せよ。
3.代替生産物とは何か。具体例を挙げて説明せよ。
4.結合生産物とは何か。具体例を挙げて説明せよ。
5.所得効果とは何か。代替効果とは、何か。具体例を挙げて説明せよ。
6.ある商品は、価格が上がったときに需要量が増えたという。そのような商品は何と呼ばれるか。そうした現象はなぜ起きるのか。説明せよ。

O一般均衡とは、どのような状態を言うのか。

(第四章)

P労働力にかんして、

1.需要は、どのような水準に決まってくるか。また、供給はどうか。
2.労働力にかんしては、たんに市場取引がなされるのみならず、取引が安定するよう制度が作られる。それはどのようなものか。説明せよ。

Q資金市場にかんして、

1.何が取引されるか。そこでの需要と供給は、どのような要素から形成されるか。
2.利子には、リスク・プレミアムが含まれることがある。それはどのような場合か。
3.企業金融について、短期と長期では、どのような相違があるか。また、直接金融と間接金融には、どのような違いがあるか。
4.株式市場にかんして、配当とは何か。公開およびそれにかかわる創業者利得とは何か。

R資産市場において、

1.ある資産の「見込み収益」と「利子率」、「資産価格」の間には、どのような関係があるか。式および数値を用いた具体例を挙げよ。
2.現実の資産価格が、1の理論値よりも大きくなることがある。それはどのような場合か。


◇解答

第二章まで解答を作成したので学習に役立てて下さい。

教科書を参照すれば解答が明らかであるものについては、省略する。

 

1.経済システム       (省略)

2.財            (省略)

3.サービス      (省略)

4.生産・流通・分配・廃棄 (省略)

5.生産要素 (省略)

6.中間財・資本財 (省略)

7.フロー・ストック (省略)

8.社会的分業・組織内分業

分業とは、人々が生活するために必要な労働を分担して行うことによって有用な

結果を生み出すことである。その分業が組織内のみで行われるのが組織内分業であり、異なる場所や組織の間で行われるという社会的過程を有するのが社会的分業である。

9.社会生活と私生活 プライベートとパブリック

家族は経済の単位であるが、自然な状態ではその中において雇用や市場など商品経済の論理すなわち財やサービスをお金で売買する関係が成り立っていない。それに対し家族の外でも共同体においては商品経済が成り立たないことがあるが、近代化が進むと共同体は商品経済によって浸食されてゆく。このように商品経済の及ぶ範囲によって仕分けされるのが、家族の内としての私生活(プライベート)、と外にある社会生活(パブリック)である。ただしさらに商品経済が進むと、家事が外部化されることもある。

10.家事の外部化 (省略)

11.流通の四タイプ:交換・収奪・贈与・配分 (省略)

12.市場経済

生産と消費の大部分が売買によって行われ、また流通の大半も売買を通じているような経済システム。

13.貨幣

それ自体が有用性ゆえに消費の対象となることがなくとも、一般受容性を有するが故に交換の媒体として機能し、また、価値の尺度や貯蔵手段ともなるようなもの

14.兌換紙幣・不換紙幣

政府が金や銀との交換を保証しているのが兌換紙幣、金銀との交換は保証しないが貨幣として受け取ることを法で強制するのが不換紙幣

15.貨幣商品説・貨幣国定説

貨幣商品説:貨幣はもともとそれ自体に商品として価値があるものから生成するという説

貨幣国定説:国家が貨幣として承認し、それを商品の代価として受け取らねばならないと法で定めることであるものが貨幣になるとするとする説。

16.貨幣の価値尺度機能・価値保存機能

価値尺度機能:貨幣の単位を「ものさし」として、商品の価値を計り価格として表すという貨幣の機能

価値保存機能:貨幣には、貯めても価値は変わらないため、手に入れてもすぐに他のものと交換せずしまっておいて、必要なときに使うという働きがある。これを貨幣の価値貯蔵機能という。

17.利子・利潤

利子:お金の貸し借りにおいて、借り手が返す際に、最初の額に加えて余分にい払う額のこと。

利潤:商品を売却した売り上げ額から、その商品を得るのに必要とされた経費を差し引いた差額。ただし経費とは、商品を作る企業においては原料や燃料、賃金や減価償却費などだが、転売を目的とする商業においては仕入れ値のことである。

Aあなたが一人で畑を耕して作物を作ることと、「経済システム」というときの「経済」とは、どこが違うか。

  一人で作物を作るときに生産性を上げるために加えられる工夫を「経済」と呼ぶことがあるが、二人以上が参加する場合、組織的ないし社会的に分業が行われ、その分業のあり方が「経済システム」と呼ばれる。

B市場で取引される財には多様なものがあるが、すべてを同等に扱うべきだろうか。「生産要素」に注目して論じなさい。

扱うべきではない。

K.ポラニーによれば、一般の商品は売却されることを目的として生産されるが、労働や土地はそうではない。また、資金の元となる貨幣も、中央銀行組織において資産の裏付けを背景に生み出される。それゆえ一般の商品のようには市場において容易に売買されず、売買に際してさまざまな制度が媒介している。

(第二章)

C生産要素にかかわる次の概念について、説明しなさい。

1.生産要素の対価

 生産要素のサービスを売却したときに得られる単位時間当たりの収入のこと。労働に対しては賃金、土地に対しては地代、資本に対しては利潤がそれに相当する。

2.賃金労働 (省略)

3.減価償却

 資本ストックは、利用されるにしたがって次第にその価値が磨滅してゆくが、その資本の消耗分を補い、いつか新しい資本で置き換えるために貯えておくこと。

4.社会主義:資本ストックの大部分が政府や公共機関によって所有され、かつ利用されている経済体制

資本主義:資本ストックの大部分が私企業や個人によって所有され、商品としての財やサービスの生産・提供のために利用されている経済体制

5.公共資本 (省略)

  

D

1.原始社会

動植物の採取や狩猟などによって生活が営まれ、全面的に自然生活に依存していた。それゆえ人口はあまり増えなかった。いくつかの家族からなる比較的小さい集団で生活していたが、自給自足を主とし、異なる集団との接触はほとんどなく分業も行わなかった。

2.共同体と国家

農業や牧畜が成立。協力して生産するための社会組織として、共同体が生まれ、交易、さらには商業が行われるようになった。消費する以上の余剰生産物が生産されるようになったため、王や神官・僧侶のように自らは財の生産に従事せずに他の人々が生産した財を消費する人々が現れた。さらには日常の暮らしを越えた政治問題を解決するために国家が成立し、共同体間の紛争を抑制し、領域内を外敵の侵入から守った。

3.封建制

生産の中心は農業であり、それを担う農民は武力を有する武士や騎士に支配され土地に縛り付けられ、領主に対して年貢の納入や労働の提供を行う。農民は自給自足の生活に甘んじるが、武具や贅沢品を作る職人、遠隔地と交易する商人も現れ、彼らの暮らす都市も成立する。身分制度も現れ、武士や農民・商人は、生まれながらの階級として受け継がれてゆく。

4.産業資本主義

近代になると、労働や土地・資本が市場でやりとりされる資本主義の経済システムが西欧に誕生する。それとともに身分制や封建的土地所有が解体され、所有権が法によって守られるようになると、資本を増やそうとする産業資本家が現れ、企業を組織し技術革新をめざすようになる。産業革命によって蒸気機関の開発や機械の改良、鉄道の発明と工業技術が大いに発展した。1870年代以降、イギリスを中心とする西欧諸国は産業資本主義にもとづく強大な経済力を背景としてアジア・アフリカ諸国を軍事侵略し、植民地として、多大な資本を植民地・従属国に投下した。植民地・従属国において土地や労働力・自然資源を支配し、自国の工業品等の市場とした。

5.自由主義経済

国内では取引の自由、国際的には貿易の自由が原則とし、市場への国家の介入を最小限に抑えようとする経済システム。人々が各人の利益を追求することで経済全体が発展した。それをアダム・スミスは「見えざる手」と呼んだ。けれども一方では資本家に富が集中し、貧富の差が拡大していった。

6.独占資本主義

19世紀の末になると産業資本主義がさらに発展し、とくにアメリカやドイツでは第二次産業革命により鉄鋼や化学工業などが産業の中心となって、工場では巨大な資本設備が運用されるようになる。この段階では個人の資本ではまかないきれなくなり、多くの人々から資金を集める株式会社が登場したが、その中から競争相手を抑えて市場を独占する巨大企業(独占資本)が出現し、自由主義経済において市場の競争を制限していった。

7.社会主義の試みと崩壊

資本主義における資本家の優位を抑えるべく、資本を国有または共同所有とする経済システム。1917年のロシア革命によって現実のものとなった。国家が資本を管理して計画的に生産活動を行い、労働者は国家をはじめとした公的な集団に帰属して働き、貧富の差の解消が図られたが、現実には逆に一部の人々が経済力および政治権力を支配するようになり、経済効率も低下して、1980年代末に崩壊すると、ふたたび市場化が行われた。

8.政府が介入する自由主義経済

自由主義経済でしばしば不況(恐慌)が発生したのを機に、政府は財政・金融政策を軸とする景気変動緩和策を獲るうになった。これをケインズ主義と呼ぶが、同時に国家は社会保障制度の確立も目指すようになり、福祉主義の面も見せることとなった。自由主義と社会主義の双方の面を併せ持つということから、混合経済体制とも呼ばれる。


G4.

分業の利益にもとづく規模の経済がなくなり、資本や土地に対して労働が過剰になったため混雑がおきている場合、労働の増加につれて限界生産力は逓減してしまう。

H4.

需要曲線と供給曲線が平行であったり、交わっていてもその均衡点が負の値を持つときには均衡が存在しないことになる。そうした状況ではなくて正の領域で需給が一致しているときに均衡は存在する。