『ヒジュラ インド第三の性』石川武志/青弓社/2060円
インドにヒジュラという不思議な人々が存在することを知る人は多くないだろう。彼らはカーストから外れ、しかも男女というジェンダーすなわち文化的な意味での性からも逸脱している。その大半は去勢した元男性だが、先進国における性転換した現女性とは異なって、結婚式でパフォーマンスしたり赤子に祝福したり祭りで踊ったりして報酬を得る、「第三の性」としての伝統的な役割をもつ。
石川氏は写真家としてヒジュラを十年以上も追いかけ、研究者でも行いえていない水準の実地調査をなしとげた。なにしろ彼らは閉鎖社会を築き、しかも近づく一般人は世間から変態とみなされるのである。そんなヒジュラに数限りない門前払いに会いながら、「蝿」のように食い下がって五十数枚の貴重な写真とともに書き下ろしたのが本書である。
実は筆者は石川氏からカルカッタのヒジュラについて伺ったことがある。あれは確か八十六年頃のこと、本書によればデリーのヒジュラ取材の頃だ。さらに後の取材によって、伝統的な存在としてだけでなく売春を余儀なくされたり逆に寺院に住み神の化身として崇められる者もあることが明らかにされている。薄手の本ながら、これぞインドの多様性を知らせる労作である。
(月刊宝石) |
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