2000年9月の観劇歴


ファントマ 「666 The number of the beast」
9月26日(火) PM7:00〜 扇町ミュージアムスクエア

作、演出:伊藤えん魔
出演:美津乃あわ、浅野彰一、宇田尚純、伊藤えん魔、盛井雅司、マリリン門野、岡村まきすけ、山田徳春、足立直美、夏美、千田浩之、小川功治朗、小川啓子、村本英子、藤木吾呂、仲林亨、森成代、西川さやか、柏原紀子、杉本有理子、稲田有美、砂利知恵

ヴァンパイア伝説を下敷きに、呪われた血を持つ純血種のヴァンパイアとそれを研究しようとする冷血な医学博士、そして「切り裂きジャック」と恐れられた生まれついての殺人鬼の戦いを描いた物語。初のヴァンパイアハンターを祖先に持つ博士によって研究のために眠りから蘇らせられたヴァンパイア、カーミラ。その呪われた血ゆえに迫害され続け最愛の夫レタストを人間に殺されたことから、自らを永遠の眠りのなかに置いていたのだ。ヴァンパイアと人間の混血であるダムピールたちの劇団に助けられたカーミラは、自分を蘇らせた博士の陰謀と、そして切り裂きジャックと恐れられている男の本当の姿を知っていく。
公演パンフレットに伊藤えん魔氏が書いているとおり、ファントマのお芝居の主人公は必ずアウトローであり何らかの悲しいさだめを負って生きている。彼等はいつも自分に正直に生きようとし、そして自分の仲間のためには自らの命をも投げ出すことを厭わない。筋の通った生き方ゆえに、ギャグで塗り固められたお芝居の内容もただバカバカしいだけになってないし、最後にはなんだか自分の生き方まで考えてしまいたくなるのだ。
物語としてはとてもおもしろかったし、役者さんたちの個性も生きていて見どころが多かった。美津乃あわさんはいつもにも増して迫力があってキレイで、異端の生き物って感じがとても出ていてよかった。盛井さんの気色悪いキャラクターが異彩を放って目だっていた気がした。それ以外のギャグが少々物足りない感じがしたのと、席が後ろのほうだったので聞こえにくいセリフがたまにあったのが残念だった。あと浅野さんの活躍がもっと見たかった気もする。


演劇集団キャラメルボックス 「また逢おうと竜馬は言った」
9月25日(月) PM7:00〜 新神戸オリエンタル劇場

作、演出:成井豊
出演:南塚康弘、岡田達也、田嶋ミラノ、大内厚雄、首藤健祐、前田綾、細見大輔、坂口理恵、岡内美喜子、篠田剛、佐藤仁志、佐藤雅樹

脚本を読んでいたのでとてもおもしろいことを知っていたからとても楽しみにしていた公演。「竜馬がゆく」を読んで心の支えにし、本のなかの竜馬と会話しながら彼を目標に生きている、でも現実には失恋続きで仕事もヘマするちょっとダメな主人公が、同僚の夫婦喧嘩に巻き込まれるうちに絵の密売にまで巻き込まれていってしまう。そんななかで自分の行うべきことを見つめ直し男らしく成長する姿を、ギャグやアクションを盛り込んでいきいきと描いてあるのだ。登場人物を幕末の史人になぞらえ、その人物の強さや弱さを丹念に描写していくのも見事だと思うし、全編笑いが絶えないほどのネタが満載だった。とにかく、脚本がよくできていると思った。
同僚の妻ケイコに惚れてしまった主人公岡本が、最後に彼女を奪おうと思えば出来たのにそれをせず、ふたりの幸せと自分の信念のためにふたりを引き合わせ仲直りさせるシーン。竜馬が薩摩と長州に同盟を結ばせたシーンと重ね合せながら、かつ岡本がケイコから感謝のしるしとして受け取った帽子の代わりにケイコの夫がケイコに新しい帽子を贈るという見事な描写で、ふたりと岡本のそれぞれの出発を感動的に表現していた。せつないような、よくやったって言ってあげたいような、そんな感じがした。
以前深夜にこのお芝居をテレビで観たことがあって、だから脚本を買い求めたのだ。そのときの記憶に残っているキャストでは竜馬役を上川隆也さんが演じていた(これは95年の再演時のキャストらしい)。上川さんは数年前の正月特番時代劇「竜馬がゆく」でも竜馬役をやったほどのハマリ役だったので、岡田さんがどんな竜馬を演じるんだろうかととても楽しみにしていた。岡田さんの竜馬は軽快でちゃめっ気があって、でも芯のとおった迫力を併せ持った個性的な男で、史実とは違うのかもしれないけどわたしはとてもいいとおもった。他の役者さんたちも、まだ若手の人がおおいらしいのだけどとても実力があってのびのびと演じていて、劇団としての層が厚いなあと思った。


BIG FACE Presents 「筒井ワールドFINAL大阪ラウンド」
9月10日(日) PM5:00〜 HEP HALL

原作:筒井康隆
構成・演出:伊沢弘
監修:川和孝
出演:並木秀介、藤倉みのり、上世博及、山崎カカト、倉田知美、日野原大輔、井内伸輔、西村貴治、田谷亘司、根上純一、沖正人、小林令門、名倉右喬、風間竜一、上山克彦、朝本紗ゆり、伊沢弘、紅萬子、星野史帆、木村有、筒井康隆、亀山忍、妹尾洸、黒木晃、松田和也、花村宗冶、桜山優、石本伎市郎、坂下しのぶ

1995年に1回目公演があったという筒井ワールドのファイナル公演。演目は「通いの軍隊」「陰悩録」「ヒノマル酒場」の3本。夫が好きな割にはわたしはあまり筒井康隆氏の本を読んでいなくて、この3本もどれも未読だった。客席の年齢層は比較的高く、出演者の家族らしい人もチラホラといった感じ。
「通いの軍隊」なんだか暗転が多いなあと思った。軍隊という死と隣り合せの職業を通いで採用してしまうというバカバカしさとゾッとするような感じと、そして「誰がなんのために戦争なんてしているのォ?」と唖然としてしまうようなオチも、迫力のある演技とセットで乾いたいい感じになっていたと思った。
「陰悩録」上山克彦氏の独断場といった感じの短編。生理的嫌悪感を催させるような気持ち悪い描写と徹底的にシモネタなオチ、主人公のなんだか被差別的な境遇などいろいろ気持ちの黒板を尖った爪でひっかきまくるような仕掛けがちりばめられていた。観終わった後はさすがと思う気持ちとスゴイもん観たと思う気持ちが半々といった感じ。
「ヒノマル酒場」登場人物も多く、まさにスラップスティックといった感じ。価値観を押し付けるマスコミに対する痛烈な批判が込められていて、でも酒場の人達も逆の意味でテレビ番組の影響を受けていて、ドッキリカメラと間違って宇宙人を潰してしまうなんてブラックだ。もちろんデフォルメなんだけど、でもマスコミの人ってああいう感じがすることがある。なんか、ヘンにエラそうっていうか「取材されてありがたいと思え」みたいな感じ。ブチ切れるとゴリラになってしまうご隠居を筒井氏が演じていて、やはりいい味だしてたと思った。最後の、竜巻がグルリッと全てを巻取ってしまうようなオチも面白かった。
他のお客さんは本を読んでから来ていたみたいだった。本と舞台とどちらがいいとかそんなことは言えないけど、今回に関しては読んでなかったわたしでも充分楽しめた。役者の貫祿が違うって感じで、いつものHEP HALLと同じとは思えないぐらいだった。


MOTHERLESS CHILDREN #2 「グリフトの手口」
9月2日(土) PM2:00〜 近鉄小劇場

作・演出:G2
出演:ますもとたくや、西村健、阿川領一、宮村陽子、高倉良文、福山亜弥、河居綾子、伊東妙子、三上市朗(劇団M.O.P)

G2プロデュースによる、MOTHERの若手役者によるプロジェクト公演。倒産しかけの地方銀行に天才詐欺師グリフトからの詐欺予告が届いていた。その頃とある支店では銀行から1億円が消えていた。そこにやって来るのは本部からの監査員、頼りなさそうな新入社員、約束をすっぽかされた支店長の娘、取り立てに来たチンピラ、支店長と訳ありの女、そして5億円預金したいというグリフトらしき男・・。
最初のほうは話がつかみにくくてそのせいでなんだかセリフも聞き取りにくい感じがした。でもだんだん話が分かってくるにつれてテンポよく進んでいく話に入り込んで行くことが出来た。舞台を3つの部屋に区切っていてそれぞれでごたごたとした話が進んで行くのだけど全然ややこしくなくて分かりやすく、おもしろかった。人間の描き方についても、確かに支店長と課長はダメでマヌケな男たちなんだけど、そのマヌケさゆえに憎み切れない感じがした。お話として観ていると「それぐらい気付くだろ〜」と思うのだけど、実際あんな場面にあったらわたしでも慌ててバカなことをしてしまうかもなあなんて思ったりした。
ストーリーは展開が多く、最後まで観ないと誰と誰がホントにグルになっているかとか黒幕は誰なのかとかそういうことがわからないようになっていた。詐欺に関する情報をごちゃごちゃと盛り込んだりせずあえてワンアイディアをメインに絞り込んだことで話が分かりやすくなっていたと思う。ラストのオチ、個人的にはハッキングぐらいは今なら子供でもやっちゃうとおもうけど大人まで味方につけての大仕事をやり遂げるのはかなりキビシイんじゃないかなあと思ったけど。
役者たちは若いけど粒ぞろいで、現実に引き戻されるような無粋な場面は一つもなかった。ゲストの三上市朗さんはさすがに貫祿があってすごかった。それに他の役者たちも全く負けていなくて、きっちりかみ合っていた感じだった。特に支店長役のオッサンぶりがすごくはまっていたますもとさんがおもしろかった。




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