2002年6月の観劇歴


オカモト國ヒコPRODUCE
アンテナ劇場。 「マリー・ルーのすべて」
6月16日(日) 17:00 よしもとrise-1シアター

脚本、演出:オカモト國ヒコ(エビス堂大交響楽団)
出演:梅本真理恵(売込隊ビーム)、晴田海(劇団満遊戯賊)、山本操(エビス堂大交響楽団)、田所草子(タントリズム)、市川晃次、植田浩輔(エビス堂大交響楽団)、木内義一(Theater@Men's Works)、山根基嗣(camp.06)、徳永健治(劇団満遊戯賊)

ある田舎の港町。養父母に育てられている少女マリー・ルーは、街で一番の美女と評判のココ・ナッツビーと出会う。ココには、病気で言葉も分からず車椅子で生活をする弟がいた。ココに恋をしてしまうマリー。正しい場所と正しい時間を求めて町に出たココとマリーの14年に渡る長い物語。
冒頭からあまりにも下卑た動きをするマリーにちょっとげんなりした部分もあったけど、確かに小さな犬っころ的可愛らしさはうまく出ていたと思った。じわっとくるような場面もいくつかあった。マリーの、人間的知性はあるけどやっぱりバカで、だけどけなげで命を張ってココを守ろうとする強さ。場面の流れが唐突に思えるところもあったけど、梅本さんの熱演もあって「バカだなあ・・」と思いながらもちょっとじんわりした。
でも、ココがあまりにも身勝手で酷いことばかりするので、ココには全然感情が流入できなかった。弟のため、と偽の自己犠牲精神で好きでもない金持ちと結婚しようとするが、弟が行方不明になったとたんに(自分から結婚すると言ったくせに)黙って逃げ出す。町を出る時には口汚ない捨てぜりふを吐き、そのくせ「正しい場所と正しい時間」などと言われても、観てる方は「は?」って感じになる。ギャグで言ってるならいいし、ほかの面で潔さがあるなら分かるんだけど。株が暴落し、女優としての仕事が破綻したココをその金持ちが助けてくれたのに、自分の都合でまた黙って逃げ出す。ココの描き方がというのもあるし、金持ちの男が捨てキャラになってしまっていて正に犬以下の扱いになってしまっている気もした。
不確定性原理が物語のモチーフとして使われていた。全体的に視点が中央に集中しすぎていて、時間軸のつじつまが合わない感じがしたり、周りの部分が雑に見えたりして、テーマが生かしきれてない感じがした。
長い物語(上演時間も2時間を超えた)だった割には、集中力を途切れさせることなく観ていることが出来た。見せ場がうまく分散されていたということもあるし、物語として「軸」の部分がしっかりしていてぶれがなく、思わせぶりなシーンがなかったところが良かったと思った。
役者は個性のあるはっきりした演技をする人達が集まっていてとてもよかった。特に、タントリズムの田所さん。脇に回って全体を引き締めていたと思った。


KOKAMI@network 「幽霊はここにいる」
6月8日(土) 18:00 近鉄劇場

作:安部公房
演出:鴻上尚史
出演:池乃めだか、橋本じゅん、北村有起哉、西牟田恵、谷原章介、木野花、中坪由起子、岡田正、古川悦史、林和義、中島陽子、生方和代、花井京乃助、佐瀬弘幸、玉井聡、太田緑、巌大介、吉富亜希子、中川雅子

安部公房が44年前に書いた戯曲を鴻上尚史が演出、主演には池乃めだかというこちらの興味をものすごーくそそる取り合わせに惹かれて、安部公房だいすきの家人と共に観に行ってみた。
サギ師・大庭三吉は、深川という青年と偶然出会う。深川は、他の人には見えないが戦友であった友人の幽霊と一緒に旅をしていると言う。大庭は深川の話を聞いて幽霊を利用した新商売を思い付き「死人の写真を高く買います・・」というビラを貼って回る。市長選挙や大庭の家族、過去の事件、大庭をマークする新聞記者・箱山などを巻き込んで、街は大騒ぎになっていく・・。
舞台は戦後まもなくの頃、ということでちょっと古臭い部分があることを想像していた。が、私はあまり「古臭さ」を感じることなく物語に入っていくことが出来た。演出の力なのかもとの戯曲がそうなのかは(戯曲を読んでないので)分からないのだけど。登場人物達の衣装が(一部を除いて)原色鮮やかで突飛なデザインのものだったのでこれが時代のにおいを消す方に働いていたからかもしれない。
ここで「幽霊」が示すものはこの物語の中ではそのものずばり死んでも成仏できずさまよう霊のことであり「死人の写真」を買い集めることでふつうには思いもつかない「商売」を考え出した大庭の逞しさと戦場で死んでしまった友人の幽霊と共に生きる深川の弱さ(=辛さ)を紡ぎ出していく「見えないもの」だと思う。けど、「幽霊」は別の姿でここにいてもおかしくないし、その「幽霊」を商売にする人だっていてもおかしくないのだと思える、そういう部分でもこの物語は古いと片づけられない気がするのかもしれない。
出演していた役者は個性的な面々が揃ったという感じだった。特に気になったのはやはり主演の池乃めだか(関西人だからね・・)。戯曲の持ち味を壊さないようにギャグは控えめだったと思うけど、それでもやっぱりいつものネタで笑わせてくれてました(ギャグのウケ具合は西高東低だったと推測しちゃうんですが)。演技力ということとは別に、舞台の上で注目を集めるということがどういうことなのかとても分かっている感じがした。コトバもはっきり聞き取りやすかったし。やはり主演級のキャスティングの面白さは大いにあったと思った。
今、この戯曲がタイトルになっている書籍はすべて絶版らしいので、図書館で借りて読んでみる予定。


劇団☆世界一団 「スペースラブ」
6月7日(金) 19:00 よしもとrise-1シアター

作、演出:ウォーリー木下
出演:年清由香、平林之英、吉岡晶子、小松利昌、赤星正徳、希ノボリコ、工藤丈徳、井田武志、安元美帆子
声の出演:菊地秀之(タントリズム)

宇宙人の発見・捕獲のために地球を出発した宇宙船マリオン。2年間の調査を終えて地球へ帰還中。宇宙人を発見できなかったクルー達は退屈と諦めでちょっとだらけ気味。あとちょっとで地球に戻れる、そんなマリオンの進路に突然現れた生身のまま宇宙を漂う少女ヒッチハイカー。彼女は地球人なのか宇宙人なのか、そして彼女の目的は・・。
この作品は劇団の再々演ということで(私は前回の再演も観た)、今回東京の多摩パルテノン演劇フェスティバルでグランプリとスタッフワーク賞をダブル受賞したという。確かに、完成度は高かったと思った。
最初におことわり。前回観た時も同じことを思ったのですが、私はこの作品の物語は好きじゃないのです。なぜならば、登場人物が行なうことが「自分語り」ばかりに感じられるからです。登場人物達の軌跡は、最近のCMにあった「自分だけがシアワセならいいと思ってた」から「自分の半径3メートルの人がシアワセならいい」に変わった程度にしか感じられないからです。それはたとえばラストシーン近くでホオズキがハッカに「(自分のことを)叩いてよー」といいながら自身の頭をピコピコハンマーで叩き続けるあたりに感じるわけなのです(でも、車椅子の宇宙飛行士ココロのエピソードは切なくってスキ。バカだけど、強くてカワイイと思った)。
でも、脚本が「まずい」と思ってるわけではない。物語が私の好みではないとしても脚本・演出は素敵だと思うところが沢山あったし、舞台としてとても魅力的だと思ったのは確かだ。最初のシーンでカウントダウンしながら語られる一見繋がりのないバラバラなキーワード群がエピソードの中に現れてくるというあたりもとても効果的だと思ったし。
宇宙船の内部をあらわしたセットがコンパクトながらも効果的で、宇宙空間をあらわすためのマイム(他の俳優が力となってあらわしていた部分がたくさんあった)もスムーズで、演劇っぽい表現の醍醐味を感じた。アドリブっぽいところがちょっと流れなくなってた感じがしたけど(でも客席はものすごーくウケてましたよ、むしろ異常な程に)、決めるべきところはちゃんと決まっていたし、めりはりつけるところは格段に良くなってきてると感じた。
女優さんたちが魅力的だなと思ったのは今回も。マウスッチョ、床をはうその姿は客席からほとんど見えない・・。床って前に座っている人の頭で隠れるから、ちょっと残念。


ファントマ 「黒いチューリップ」
6月2日(日) 14:00 近鉄小劇場

作、演出:伊藤えん魔
出演:美津乃あわ、浅野彰一、腹筋善之介、伊藤えん魔、盛井雅司、マリリン門野、坂本さやか、廣末真穂、須美高志、松田陽子、斉藤潤、山浦徹(化石オートバイ)、千田浩之、野田嘉人、秋山良子、山本誠子、山根美輝子、藤田玲子、北野りえ、山口真史、浅沼晋太郎、西川昌吾、中村浩六、砥出恵太、住吉晃生、大熊篤、橋本拓也、齋藤直人、栗林真弓、樋口なつみ、白野景子、小嶋かおり、清瀬亜衣、田村絵梨子

実は99年の初演も観ていて、美津乃あわ扮するロクサーヌ=黒いチューリップと醜い鐘つき男カジモドの繋がりがうまく演じられていて良かったと思いつつ、少々冗長な感じも受けていた。今回の再演で、どんなふうに作品がグレードアップしているのかとても楽しみにしていたのだ。
舞台は革命直前のフランス。貧富の差がますます激しくなり、貴族たちは贅沢の限りをつくし、教会は堕落し、平民たちは空腹と絶望にうちひしがれていた。そんな街に現れたのは、金満した貴族から金品や宝石を見事な手際で盗み出し貧しい人たちに分け与える羲賊「黒いチューリップ」。その正体は謎。そして、ノートルダムの醜い鐘つき男カジモドと共にノートルダムの森で暮らす下級貴族ロクサーヌは、皆からバカと言われるマヌケな娘であったが、彼女には秘密があった・・。
近鉄小劇場という広い舞台で、観ていた席も良かったのかもしれないけど、役者たちがのびのびと動いていてとても話が分かりやすかった。多少声が聴こえにくい役者さんもいたけど、重要な部分は複数で話させるなど聴こえにくさを解消するための工夫がされていて、特に困ることはなかった。衣装も素晴らしかったし。こういう大層な物語を学芸会ノリから救うにはまず衣装が重要だってことをいつもファントマを観ると思う。
物語の主張もストレートで優等生的だけど、ギャグ満載のこの舞台ではあまり嘘臭いという感じを受けなかった。一方に片寄らず大きな視線で全体を見渡した感じで、きびきびとしたこのお芝居の雰囲気にあっていたからだろうか。寓話的なものはいくつか差し込まれていて、そのあたりは考えようと思えばいくらでも深く考えることができるけど、観ている間は登場人物の誰かに感情流入していられるので重苦しい気分にならずにすんだ。主演級の役者たちはさすがに華のある演技で、衣装に負けていなかったと思った。
ただ、やっぱり長過ぎると思った。2時間30分を超えるのはいくら近鉄小劇場の椅子でもちょっとしんどい。それに、時間はとても長いのに物語としては「詰め込み過ぎ」の印象があったのだ。随所にギャクをちりばめ笑わせるのはこの劇団のよい持ち味だとは思うけど、もう少し整理してもいいのではないかと思った。特に、役者のアドリブでまわしていたと思われる部分(クイズを出してそれに答える)は物語の中から浮いていたとまでは言わないにしてもあんなに長くやる必要あるのか?と思ってしまった。
上記の部分や暗黒朗読など、ファントマの笑いにもお定まりのパターンが出来てきている。それが悪いことだとは思ってない。けど、客席の反応はもういっぱいいっぱいなんじゃないかと思った。パターンが出来て、まだ何もする前からウケてもらえる状態っていうのは、正直なところサメてしまう。4年もファントマの公演ごとに足を運んでるあたしでさえそう思うのだから、はじめて来たひとは笑えないだろうなーと。現に、初めての人を連れて行っていたけど「面白いんだけど、周りの人たちのテンションほど可笑しいと思えないし、笑いそびれる」と感想を言っていた。ギャグのパターンに関しては転機じゃないかな。
公演としては満足したし、コストの面から見ても充分すぎるぐらいに楽しませてもらったと思う。安っぽくなく、これだけの壮大な物語をみせて、なおかついっぱい笑えたんだから。シラノ役で客演してた腹筋さんも、ロベスピエール役で客演してた山浦さんもとてもよかった。次も行くよ。




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