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伊藤えん魔プロデュース 「超能力やくざ」 12月14日(日) 14:00 一心寺シアター倶楽 作、演出:伊藤えん魔 出演:末満健一(ピースピット)、山田伊久磨(EHH∃)、久保田浩(遊気舎)、浅野彰一(ファントマ)、コング桑田(リリパットアーミーII)、星見陽介、斉藤潤(ファントマ)、財団法人のりおchan(EHH∃)、伊藤えん魔(ファントマ)、盛井雅司(ファントマ)、山根美輝子(ファントマ)、山口弘美(劇団赤鬼)、三谷恭子(売込隊ビーム)、美津乃あわ(ファントマ)、今奈良孝行(EHH∃)、川浪ナミヲ(劇団赤鬼)、西川昌吾(ファントマ)、小島宏之(ファントマ) N-Trance Fish(尾沢奈津子、神田直子、森下美樹、斉田美和、中辻美穂、足立七瀬、今川直子)
やくざの下っ端として生きてきた的場恭介は、ちょっとしたいざこざでけんかをしたある日、謎の女に手渡された薬を飲んで超能力に目覚めてしまう。超能力を使いながら組織を登りつめていく恭介は、関西の組との抗争の中心に立たされていくことになる。その抗争と恭介の超能力をめぐって、様々な組織や能力者たちが動いていた。そして、恭介の超能力には隠された秘密が・・。 伊藤えん魔プロデュースで、出演者にもファントマのメイン俳優陣が顔をそろえていて、作品から受ける肌触りはやっぱりファントマに似ていると思うけれど、やっぱりどこかが明確にファントマの公演とは違う気がする。ギャグとシリアスとのさじ加減や役者の力点が違うのだろうか。ファントマほどこってりしていない分、笑いが軽快な感じがした。ただし上演時間は少々長かった。 物語はSF+やくざもの。SFは好きなので超能力に関する部分やタイムトラベル能力で遺伝子を拡散するあたりのえぐさはとても面白いし分かりやすかったのだけど、どうにもやくざの組織が理解できず・・。どの組がどこの組と繋がっていて誰が一番偉くてなんでドンパチやってんのかなんてあたりがなかなかつかめず、どうやら私にとっての苦手分野だったみたいだ。細かく分からなくても話についていけない程にはならなかったから良かったけど。 この話のようなやくざはファンタジーの産物であって実際にこんなふうかどうか分からないし、いずれにしても現実としてのやくざを肯定する気はまったくないけれど、ラストに大切にしていた恋人を報復によって失い、それでもなお自分の行き方を貫こうとする姿は潔くもあり恐ろしくもあって考えさせられた。 男の世界の物語のなかで、3人の女優がそれぞれ個性を発揮していた。気丈ながら心安らぐ存在である恋人役の山口さん、すっとぼけて可愛く戦慄的なラストとの対比をみせた三谷さん、淡々とした恐ろしさを全身から発散していた美津乃さん。主演の末満さんは台詞が聞き取りにくい感じがしたけれど立ち姿の存在感がとても強くて素敵だった。 ニットキャップシアター 「虹のカマドウマ」 12月12日(金) 19:00 アトリエ劇研 作、演出:ごまのはえ 出演:大木湖南、松岡純子、坂口修一、板橋薔薇之介、安田一平、西恵、朝倉詩、よこえとも子、門脇俊輔、ハカイダー、根本航佑、加藤光穂
前作「喉骨のフルート」の続編にあたる話で、どん亀と先輩のその後の物語。劇団は解散しコントのコンビを組んでいたふたり。フリーペーパー掲載のいざこざでコンビを解散し、そのまま1年もふたりは会うことなく過ごしていた。どん亀がバイト先で知り合ったバンド青年から「相談があるから部屋に行っていいですか」と言われ、そのままアルバイト先の喫茶店をくびになった日。アパートの部屋に奇妙なおっさんが闖入してきた。おっさんは勝手に「男 救う会」と看板をかけ、どん亀たちを勢いに巻き込んでしまう。救う会が救出使用としていたその相手は、一回りも年上で子持ちの女性と結婚していた先輩だった・・。 観終わって、なんというか男の人って辛いんだなあなどと漠然と思った。もちろん現実には女も辛いのだが、男の人の辛さは女のそれとはまったく種類が違うという、まあ当たり前といえば当たり前のことを感じた。非常に軽薄で、でも本人なりに真剣に家庭を守ろうとして、過去の馬鹿で自由だった自分をすぐに頭から締め出してしまうことのできる先輩。不器用で馬鹿正直ゆえにいつも面倒なことや不運なことを一手に引き受けてしまうどん亀。そして、姑息な手段で元妻を取り戻そうとしたが惨めなまでに拒絶されてしまう哀れなおっさん。ほんとにアホで、哀しくて、でもそういう部分を持って生きてる男たちがちょっといとおしくも感じられた。これからはほんのすこし男の人にも優しくしてあげたい、と思った。優しくしたとしても理解しあえないのかもしれないけれど。 ラスト近くの過剰な演技も、後に続く救いのようなラストシーンとの対比をより鮮明にしていた気がした。どん亀がもがく姿は、現実が辛くて時としては明確な救いなんてないんだっていうことを思い出させ、ほんとにつまらないものが光明として未来を照らしているように感じられることもあるということを思い出させた。余韻のある、うまいラストシーンだなと思った。 ナイロン100℃ 「ハルディン・ホテル」 12月5日(金) 19:00 近鉄小劇場 作、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演:犬山イヌコ、みのすけ、三宅弘城、大倉孝二、松永玲子、長田奈麻、新谷真弓、廣川三憲、村岡希美、藤田秀世、大山鎬則、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、植木夏十、眼鏡太郎、佐藤竜之慎、皆戸麻衣、廻飛雄、柚木幹斗、小林高鹿(ペンギンプルペイルパイルズ)
10年前、発展しゆく町に華々しくオープンしたホテル・ハルディン。「オープン記念として、10年後の同じ日にまたお越しいただいたお客様は、無料で同じお部屋にお泊りいただけます。」そして10年、ツアーでホテルに泊まっていた当時の客たちが、雪が降る中、ぽつぽつとホテルに現れる。10年前の事件と、それぞれに変化した事情を抱えながら・・。 ナイロン100℃の10周年記念公演。休憩をはさんで3時間半を超える上演時間は確かに長かった。でも、観ている間はまったく長さが気にならなかった。冗長な部分も、それがこの物語なのだと思えたからだ。 物語のほとんどは、10年前に開業したホテルで起こった事件を中心に描かれる。ナンセンスといえばまさにそのとおりで、人の視点やコンプレックスやこだわりの違いでずれてしまう世界に戸惑う人たちと、それを観て笑いながらもひやりとしてしまうこちら側の気持ちとがあって、デフォルメされた狂気の行動の中にも思い当たるような部分があって。笑ってばかりもいられないという気持ちになったのだ。ナタで自分の足をぶった切ったりはしないけど、ぶった切ってしまいたい気持ちは痛いほど分かる。また、ラストシーンの、10年前に投函されなかった手紙が読み上げられるというあっけない幕切れが、ひどく心に焼き付いてしまった。あんなにエキセントリックではないにしても、同じように感じる場面に出会ったことを思い出すような。 今までに観てきたナイロン100℃の公演で感じたいろいろな持ち味がすべての場面にふりかけられていて、役者もみんなめいっぱい動いていて、記念公演にはふさわしい内容と出来栄えだったと感じた。 |

