2008年1月の観劇歴


ナイロン100℃ 「わが闇」
1月14日(月) 13:00 シアターBRAVA!

作、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ、峯村リエ、坂井真紀、岡田義徳、大倉孝二、長谷川朝晴、三宅弘城、みのすけ、廣川三憲、松永玲子、長田奈麻、吉増祐士、喜安浩平、皆戸麻衣

親戚の遺産を引き継ぎ田舎の広い民家に引っ越してきた一家。作家の父、父に憧れ住み込みで働く男、立子・艶子・類子の三姉妹、そして母。母は心に闇を囲い精神を病み、長女は幼くして父と同様作家としてデビューする。父と母は別居し、父は新しい女を家に連れ帰り、母と父の別居は縺れ、母は父の目の前で自らを切り死ぬ。それから20年、父の伝記的映画を撮るためにやってきた撮影の男。それぞれに問題を抱えた三人姉妹を巡る、家族の物語。
休憩10分を挟んで3時間20分ほど、長かった。しかし長さによる身体的疲労はあっても、内容は長さを感じさせないものだった。いろんなところでケラさんが「今回の作品はいつもとちょっと異なる」といったようなことを仰っていた気がするが、違うような同じような…という印象。かなりシリアスな内容だけど、言葉やちょっとした動きで笑いを誘う場面も多くあり、全体的には重苦しさは感じなかったし長さを無駄だとは感じなかった。
家族の在りよう、そしてそれが壊れていくさまの描写が鋭い。ケラ氏本人も当日配布のキャスト表で様々な人たちからの影響について書いておられるように、たとえばチェーホフ「三人姉妹」や永井愛氏の影響などが強くあるようだった。でもそれはあくまで影響であり、同じモチーフを描いているということだ。似ているようで全然違うと思った。登場人物にくどくどとした説明をさせず情報を共有していく流れの自然さを強く感じた。特に理由が語られないまま病んでいく母親の描写、あの「正しくなされていなければ気が済まない」女性のいらだち感は黒く塗りつぶされる映像の効果もあって圧巻だった。また、誰かに型にはめられるというより自ら姉・妹としての役割にはまり込んでしまい苦悩する姉妹の表現も同様だ。いつもながら舞台にかぶせる映像の効果は絶大だ。
これから先何が起こるのか彼女らがどうなるのかは語らない…という一見投げ出しているようなラストの中に人生のリアルが表現されていると感じた。どうなるかは語らない…と登場人物に語らせつつ、ひとつの答えが明示されていたからだ。カメラという「他者」を通して語られたフィルムの映像より、写真の裏に直に書き付けられた言葉こそがそれだと思う。人生はひとつの山を越えても続くし、物語のようなメデタシメデタシはありえない。辛さの中にこそ幸せがある、と言い残した父の言葉を抱いていき続けていく三人姉妹たちは、物語を超えたリアリティを持ち続けると思う。




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