詩のページ
このページでは童話作家・北村正裕の詩作品を紹介します。
夜汽車の憧れ
星の砂の浜辺に打ち寄せる
月夜の海の涙色の水は
さざ波の光の
透明な憧れでいっぱいだ
でも
水平線に浮かぶ船の静かな煙は
きっと 美しすぎて
汽笛の声よりも悲しい
だって
夜行列車が走る遠い浜辺の
はだしの少女の面影を
水晶の流れ星は知っているから
まだ見ぬ夜汽車の憧れを
追い続けて消えて行くから
(北村正裕詩集「夜汽車の憧れ」より)
白鳥
そのとき 僕は
明日への道を歩いていたのだ
風は青く澄み
明日への道は あまりになだらかで
僕は 悲しさのあまり 空を見た
夜空からは
センチメンタルな星屑がこぼれ
すれちがうバスに
僕は 虹色のあこがれを投げてやった
その夜 僕は 夢を見た
夢の中で 僕は
険しい山々に囲まれた
湖のほとりに立っていた
湖には瀕死の白鳥が 助けを求めていた
僕は 湖に飛び込むと
夢中で 白鳥に近づいていった
それなのに白鳥は
僕が近づくと
少しずつ 少しずつ
沖のほうへと逃げて行き
やがて 僕は
湖の深みにはまってしまった
すると どうだ
瀕死のふりをしていた白鳥は
見違えるほど元気になって
おぼれる僕を見て よろこんでいるのだ
翌朝 目覚めた僕は
いつもの通り
明日への道を歩き始めようとして
背後に 険しい山がそびえているのを見た
この山の向こうにはあの湖がある
と僕は思った
明日への道に背を向けて
それから 僕は 歩いている
いくつかの山を越え
いくつかの湖を過ぎて
そして 山々が険しくなればなるほど
あの白鳥の湖が近いような気がして
僕は うれしさでぞくぞくする
(北村正裕童話集「オデット姫とジークフリート王子のほんとうの物語」より)