童話作家・北村正裕の部屋 <メルヘンの部屋 <何もない遊園地 <

 

6 ロム博士の話

 

 魔法使いサリーおばあさんの小屋の中で、サフィとミオが目を覚ますと、

サリーおばあさんは、既に起きていて、何やら真剣な表情で、例の水晶玉のような石が放つ光を見つめていた。

「おばあさん、何見てるの?」

 サフィがおばあさんに声を掛けた。

「おや、目が覚めたかい? ちょうどいいところだった。そろそろ、おまえたちの出番だよ」

「おばあさん、何があったの?」

 ミオも心の声で尋ねた。

「どうやら、光の城の連中が動き出したようだ」

 サリーおばあさんは、石の光を見つめながら、そう、つぶやいた。

「そうだ! こうしちゃあいられない」

 サフィは、あわてて起き上がった。

「さあ、ミオ! 行こう!」

「そうだわ。急がなくっちゃ! サリーおばあさん、どうもありがとう。私たち、今から、出発します」

「僕たち、光の城へ行くんです」

「わかっているよ。サフィ、指輪は、しっかり持っているね」

 サフィは、サリーおばあさんが、何もかも知っているようなので、驚きながらも、右手の中指にはめた、あの悲しみの指輪を、おばあさんに見せた。

「ほら」

「うん、よしよし。でも、サフィ、その指輪は、悲しみを引き寄せる強い力を持っているから、よくよく、注意しなくてはいけないよ」

「うん、わかった。おばあさん、ありがとう」

 とは言ったものの、いったい、何をどう注意すればいいのか、サフィには、まるで、わからなかった。だが、今は、もう、出発の時間だった。

「さあ、あたしも、そろそろ、小屋をたたまなけりゃいけない。一流の魔法使いが、こんなに長々と、砂漠に小屋を出しっぱなしにしておくわけにはいけないからねえ」

「小屋をたたむって、どんなふうに?」

 サフィが尋ねた。

「今すぐに見せてあげるよ。さあさあ、それじゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」

「うん。おばあさんも、元気でね」

「あたしは、大丈夫さ。なにしろ、あたしは、一流の魔法使いなんだからね」

 サリーおばあさんに見送られて、ミオとサフィは、扉を開けて、小屋の外に出た。サリーおばあさんは、ミオたちが外に出ると、中から、手を振って見せた。それから、サリーおばあさんが、杖で、小屋の扉にちょこんと触れると、驚いた事に、一瞬のうちに、小屋は、サリーおばあさんもろとも、あとかたもなく消えてしまったのだ。

「さ、さすがだ!」

 サフィとミオは、あっけにとられて、しばらく、砂漠の上に立ち尽くしていたが、やがて、我に返ったように、夜空に、闇の十字星を捜した。

「さあ、早く乗って」

「あ、うん、さあ、行こう」

 サフィは、木馬のミオにうながされて、彼女の背中にまたがった。そして、サフィを乗せたミオは、また、月夜の国の砂漠の砂の上を、闇の十字星の方角へと、進んで行った。

 

「ねえ、ミオ」 

 星空の下を進みながら、ミオの背中に乗ったサフィは、心の声で、そっと、話し掛けた。

「なあに、サフィ?」

「ミオ、ミオは、いつから、月夜の国の砂漠にいるの?」

「それが、・・・」

と、ミオが答えた。

「それが、私、わからないの。いつ、どこから、砂漠にやって来たのか、私、全然、思い出せないの。私、ずっと前から、ひとりで、砂漠にいたような気がするわ」

「そうか・・・」

「ただ、・・・」

「ただ、何なの?」

「あ、ううん? 何でもないわ。サフィは、木漏れ日のある森から来たんでしょう?」

「うん、リーズっていう時の精に連れられて、何もない広野から、月夜の国の、木漏れ日のある森へやって来たんだ。でも、その、何もない広野には、どこから、どうやってやって来たのか、僕も、全然わからないんだ」

「そう」

「うん。でも、こうして、ミオと話していると、何だか、ずっと前から、こうして、ミオと一緒にいるような気がするんだ」

「私もよ。私も、何だか、ずっと前から、サフィと一緒に、旅をしているみたい」

 そして、出来る事なら、このまま、ずっと、サフィを乗せて、どこまでも、旅を続けていたい、と、ミオは思った。

「このまま、ずっと、いつまでも、砂漠の中を進んで、光の国になんて、着かなければいい」

 ふと、ミオは、そう思った。だが、ふたりは、確実に、光の城に近付いていた。サフィにミオの心が聞こえただろうか? サフィは、ミオの背中の上で、じっとしていた。夜空には、サファイア色の流れ星が走り、ミオは、やはり、闇の十字星の方角へ、進んで行った。

 

「あれは、何だろう?」

 サフィは、砂漠のかなたの地平線のあたりに、いくつもの、小さな、黒いかたまりが動いているのを見つけた。黒いかたまりは、月の光にも輝かず、代わりに、異様な強い光を発するライトを持ち、まわりを照らしながら、サフィたちの方へ、進んで来た。

「太陽の国の兵士たちだ! 逃げなくちゃ」

 ミオは、サフィを乗せたまま、向きを変え、太陽の国の兵士たちが現れたのと反対の方角へ、逃げ始めた。だが、太陽の国の兵士たちは、強いライトで、サフィたちの動きを捕え、みるみるうちに、迫って来た。そして、やがて、兵士たちは、サフィたちめがけて、光線銃を打って来たのだ。光線銃の光は、サフィたちの近くで炸裂し、ミオは、光線銃をよけるために、じぐざぐに曲がりながら、必死で逃げ続けた。兵士たちの姿は、だんだん大きくなり、徐々に、サフィたちを取り囲み始めた。

「ああ、もう、だめだ!」

 サフィが、そう思った、ちょうど、その時、不意に、足元で、誰かの声がした。

「サフィ、ミオ、ここに、隠れなさい! さあ、早く!」

 見ると、足元の砂に、ぽっかりと、人間がはいれるほどの穴が空いていて、その中から、誰かの心の声が聞こえて来るのだった。

「ミオ、はいろう!」

 ほかに逃げ場のないサフィたちは、とにかく、とりあえず、その穴の中に逃げ込む事にして、ミオは、サフィを乗せたまま、滑り込むように、砂漠の穴の中に飛び込んだ。そして、サフィたちが中に飛び込むと、穴の入口は、すうっと、ひとりでに閉まった。

「しばらく、ここに、じっとしているんだ。音を立ててはいけないよ」

 穴の奥から、さっきと同じ心の声が聞こえて来た。声の主は、白い服を着て、メガネをかけた、ひとりの老人だった。あの、木漏れ日のある森の探偵事務所の所長さんと、同じぐらいの年の人だな、と、サフィは思った。どんな人だかは知らないけれど、とにかく、どうやら、味方らしいので、サフィたちは、老人の言うとおりに、穴の中で、息をひそめた。すると、穴の上から、太陽の国の兵士たちのものらしい話し声が、聞こえて来た。

「どこだ? どこへ行った?」

「おかしいなあ。確か、このあたりに・・・」

「追い詰めたと思ったんだがなあ・・・?」

「この砂漠に、逃げ場は、ないはずだ。とにかく、あたりを捜すんだ! ライトを回して、よく見るんだ!」

 明らかに、サフィたちを捜している兵士たちの声だった。サフィたちは、なおも、穴の中で、息をひそめていた。兵士たちは、サフィたちの隠れている穴の上あたりを行ったり来たりしているようで、話し声は、なかなか止まなかった。

「どうやら、逃げられたらしいな」

「うん。ちょっと、まずいんじゃあないか?」

「なあに、どうせ、光の城の周囲の警備は万全だ。ここで、うまいこと逃げたって、いずれは、捕まって、処刑されるさ」

「そうさ。だいたい、月夜の国の連中にろくな奴はいない。サフィにしたって、逃げ足だけは速そうだけど、しょせんは、月夜の国の、頭のおかしい連中たちの仲間だ。間違っても、今度の、光の城の警備を突破する事など、出来るはずがない」

 処刑などという言葉を聞いて、サフィと一緒に、穴の中に隠れていたミオは、どうかするほど驚いてしまった。だが、兵士たちに気付かれぬよう、身動きひとつせず、じっと、息をひそめていた。穴の上では、依然として、兵士たちの声がしていた。

「月夜の国の連中の頭のおかしさときたら、まったく、たいしたもんだからな。だいたい、いい年をして、お伽話と現実の区別のつかないようなのが、ごろごろしてる」

「そうそう。ひどいのになると、自分が名探偵だと思い込んでいたり・・・」

「極めつけは、すっかり魔法使いになりきっている、例のばあさんだ」

「ああ、いたいた。あれは、もう、どうしようもなかったなあ」

「ああいう、どうしようもない連中のふきだまりが、この、月夜の国だ」

「そうそう。健全な我々にとっては、百害あって一利なしという存在だ」

「そうだ。こんな、気狂いだらけの世界は、早くつぶしてしまうに限る」

「ああ。でも、もう、心配は無用だ。もう、まもなく、光の城のコントロールセンターの方の準備が出来る。そうしたら、すぐに、この月夜の国は、爆破だ」

「おっ。何だ?」

 ピー、ピー、ピーという信号音のような音が、穴の中のサフィたちにも聞こえて来た。

「おっ。来たぞ! 防護服着用の合図だ」

「よしっ」

「ついに来たか。いよいよ、この、わけのわからぬ気狂い世界も、お陀仏だな」

 そんなふうに話ながら、兵士たちの声は、ようやく、サフィたちの隠れている穴の上から遠ざかって行ったようだった。

 

「ようやく、いなくなったようじゃな」

 穴の奥の方にいた老人の声に、サフィたちは、我に返ったように、振り返った。老人は、この危機的状況にもかかわらず、意外と落ち着いた様子に見えた。

「あなたは、誰なの?」

 ミオが、心の声で尋ねた。

「わしか。わしは、ロム。ロム博士と言ってな。じつは、最近までは、太陽の国で働いておったんじゃ」

「太陽の国で?」

「ああ。向こうでは、わしは、一応、生命科学と心理学の博士でな。今から考えると、まったくおぞましい限りじゃが、何と、太陽の国の、エリート育成事業の第一線で働いておったんじゃ」

「エリート育成って言うと?」

「あのエリート選抜試験の事?」

 サフィは、あの木漏れ日のある森の探偵事務所で聞いた事を思い出して言った。

「いいや。そんなもんじゃあない。もっとおぞましい事じゃ。あれは、ほとんど秘密事業だったから、太陽の国のエリートたちだって、ほとんど知らない事じゃ。わしは、その秘密事業から抜けるために、まずは、高齢を理由に引退したが、当然、その後も、当局の監視が続いていたんじゃ。そこで、わしは、少しずつ、頭がぼけ始めたようなふりをして、当局の監視がゆるんだところをみはからって、この、月夜の国へやって来たというわけなのじゃよ」

「秘密事業って?」

「うん、それなんじゃが・・・」

 サフィが恐る恐る聞いてみると、ロム博士は、一度、大きくうなずいてから、ゆっくりと話し始めた。

「あの太陽の国のエリート機構の幹部たちは、自分たちの支配体制をより強固で確実なものにするために、それを支えるエリートたちを、ただ集めるだけではなく、エリート機構の中枢を支え、けっして反逆したりしないような優秀な人材を自ら作り出す事を画策したんじゃ」

「それって、教育の事でしょう?」

 サフィが、口をはさんだ。

「もちろん、教育というのは、その第一歩で、彼らにとっては非常に重要な手段だった。そして、ある意味では、わしがかかわった秘密事業も、その延長上にあったと言えるかもしれないのう」

 ロム博士は、むずかしい顔をして、考え込むようにしながら、話を続けた。

「わしがかかわった秘密事業というのは、飛び抜けた才能に恵まれていると思われる子供を見出して、心理学や生命科学の技術を用いて、彼らを、より優秀に、つまり、太陽の国のエリート機構にとって有用な人材に育てる事業だったのじゃよ」

「何だか、ずいぶん難しそうな話ね」

 ミオが、心の声で言った。

「うん、まったくじゃ。わしも、しばらく、ぼけたふりをしていて、ほんとうにぼけてしまったのか、それとも、この月夜の国へやって来たためか、とにかく、さいわいにも、あのおぞましい技術そのものは、すっかり忘れてしまったがのう」

「おぞましいって、いったい、どんなふうにひどかったの?」

 サフィが尋ねた。

「なにしろ、結局のところ、わしがかかわった秘密事業というのは、選ばれた子供から、自由な意志や、独自の感性を奪うというのが、仕事じゃからのう。確かに、その結果、立派に、幹部エリートになった子供たちが大勢いたが、わしは、むしろ、彼らが不憫でならなかったのじゃよ」

「で、その秘密事業で育てられた子供たちは、みんな幹部エリートになったの?」

 再び、サフィが尋ねた。

「それなんじゃが、じつは、全部が全部成功したわけではなかったんじゃよ」

「と言うと?」

「例えば、もう、ずいぶん前の事になるけど、生命科学の技術を使おうとしていた時に、当の子供、これは、まだ小さかった女の子だったんじゃが、その子が、突然、秘密事業の施設から、姿を消してしまったんじゃよ。あれは、あの事業の最初の失敗で、しかも、いまだに解決していない事件のはずじゃ」

「ふうん・・・」

「そういう失踪事件は、最近でも一度あったんじゃよ。心理療法を受けていた少年が、やはり、突然、姿を消してしまったんじゃ」

「ねえ、ロム博士、その子の名前は、何ていったの?」

 ミオが心の声で尋ねた。

「おかしな話だと思うだろうが、わしは、秘密事業の施設の子供たちの名前をまったく知らないんじゃよ。名前も知らされずに、何と、番号で子供たちを管理していたんじゃよ。名前だけじゃあない。信じられないじゃろうが、顔や、表情もよくわからない。なにしろ、太陽の国のエリート機構では、本音を語ることは、基本的に許されない。だから、みんな、本当の顔さえ、自然に隠して生きているんじゃよ」

「ひどい世界だなあ」

「まったくじゃ。わしも、あんな所からようやく抜け出せて、せいせいしとる」

「でも、太陽の国では、この月夜の国をつぶそうとしているんでしょう?」

「そうそう、それじゃ。こうして話などしている場合じゃあない。この月夜の国をつぶさせてなんてなるものか」

「でも、どうすればいいの? もう、光の城のまわりは、厳重に警備されているんでしょう?」

「そこじゃ。そこで、いよいよ、わしのとっておきの仕掛けの出番じゃ。さあ、ふたりとも、よく聞くんじゃ」

 サフィたちは、ロム博士の真剣そうな話に耳を傾けた。

「光の城のまわりの警備がまだあんなに厳重でなかったころに、わしは、こんな事もあろうかと思って、城の反対側の砂漠の砂の中に、ちょっとした仕掛けを仕掛けておいたんじゃ。ほれ、このひもを引っ張ると、その仕掛けが働くというわけじゃ」

 ロム博士は、小さな部屋の天井からぶら下がったひもを示しながら、サフィたちに話した。

「で、その仕掛けっていうのは・・・?」

「爆音じゃよ。爆音。このひもを引っ張ると、光の城の反対側にわしが仕掛けておいた仕掛けから、爆弾が爆発したような大きな音がするはずじゃ」

「音だけ?」

「そう。音だけじゃ。月夜の国にやって来てからというもの、わしには、本物の爆弾を作る事は出来なくなってしまったんじゃが、なぜか、まだ、爆弾の音だけは作れたんじゃよ」

「で、その音でどうするの?」

「うん。よく聞きなさい。今から、君たちふたりは、この穴を出て、まっすぐ、光の城へ向かうのじゃ。光の城の方角は、闇の十字星の方角じゃ。今なら、光の城のすぐそばまで、兵士たちに見つからずに行ける」

「でも、城のまわりには、・・・」

「うん、そこでじゃ。そこで、いよいよ、わしの、この仕掛けの出番じゃ」

 ロム博士は、天井からぶら下がった例のひもを指差しながら言った。

「君たちが光の城のすぐそばまで近付いた頃合を見計らって、わしは、ここで、このひもを引っ張る。すると、さっきも話したように、光の城の反対側にわしが仕掛けておいた仕掛けから、爆弾が爆発したような大きな音がするはずじゃ。そうすると、城の警備の連中は、てっきり、その爆音の方角から城への攻撃が始まったと思い込み、兵士たちも、そちらへ向かうことになる。

そこで、ちょうど城のこちら側の警備が手薄になったところで、君たちは、一気に、城へ突入するんじゃ」

 ロム博士は、このように、自分が考えた筋書きをサフィたちに話して聞かせたのだった。

「うまくいくかしら・・・」

 ミオが心の声でつぶやいた。

「なあに、必ずうまくいくさ。なにしろ、このわしが考えた筋書きじゃからな」

 ロム博士は、いかにも、自信ありげなようすだった。

「でも、ロム博士、城に突入してからは、僕たち、どうすればいいの?」

 サフィが尋ねた。

「指輪じゃ。サフィ、君は、悲しみの指輪を持っているね」

「あ、はい、これです」

 サフィは、右手の中指にはめた悲しみの指輪を見せながら、答えた。

「そう、それじゃ。後は、その指輪の力で、光の城が崩壊するのじゃ」

「でも、どんなふうに?」

「それは、わしにもわからん」

「・・・・・・」

「じゃが、城は、必ず崩壊する。これは、わしの勘じゃが、この月夜の国へやって来てからというもの、かつての科学者としてのわしの実力は、めっきり落ちてしまったが、その代わり、なぜか、こういう勘だけは、めっぽうさえるようになったんじゃ。例えば、ほら、さっきだって、君たちが、兵士に追われて、ここへ逃げ込んで来る事は、ちゃんと前から、なぜか、わかっておったんじゃよ。それに、ほら、わしの勘が鋭い証拠に、わしは、サフィとミオ、君たちの名前だって、君たちに聞く前からわかっておったじゃろう?」

 そう言えば、サフィたちが、砂漠を逃げ惑っていた時、確かに、ロム博士は、この穴の中から、ふたりの名前を呼んだのだった。

「あれも、博士の勘だったのね」

 ミオは、さっきから聞きたかった疑問への答えを聞いて、うなずくように、つぶやいた。サフィもまた、納得したようすだった。

「さあ、もう、のんびりしてはいられない。すぐに出発じゃ」

 ロム博士は、まるで、自分が出かけるかのように、こう言うと、机の下の妙な機械のような物をガチャガチャと動かした。すると、さっき、サフィたちがはいって来た穴の入口が、すうっと開いた。

「さすがだ!」

 サフィは、ロム博士の隠れ家のさりげない仕掛けに感心した。そして、再び開いた入口から、外の砂漠の上に出た。木馬のミオも、サフィの後から、滑るように入口への斜面を登り、やはり、もとの砂漠の上に出た。

「いいな。闇の十字星の方角じゃよ!」

 サフィとミオが、穴から出ると、中から、ロム博士が、そう、叫んだ。そして、すぐに、入口は、また、すうっと、音もなく閉まり、跡形も無く消えてしまった。

「さあ、ミオ、行こう!」

 サフィは、決心したように言った。ミオもうなずくようにして、からだを、闇の十字星の方角へ向けた。サフィは、また、ミオの背中にまたがり、ミオは、サフィを乗せると、またまた、砂漠の砂の上を闇の十字星の方角へ進んで行った。

「いったい、これから、何が起こるんだろう?」

 サフィは、不安を抱いていた。それは、ミオも同じだった。だが、ふたりは、確実に、光の城へ近付いて行った。                  

 

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