ビートルズ本の世界
■prologue:THE BEATLES ANTHOLOGY
昨年出版されて話題になった本:「THE BEATLES ANTHOLOGY」。
発売当初は何処へ行っても売っていなくて、
やっと最近、第2回配本が近所の楽器屋に入荷。
これがまた、どでかい本で、
B4サイズ、ハードカバー、厚さ4cm、368ページ。
まるで百科事典のよう。
本はベッドに寝転んで読むことにしているので、
あまりの重さに腕が疲れて、
少しずつしか読み進められなかったのであった。
内容がまた濃い。
ビートルズの雑学本や分析本はよくあるが、
なんといってもこれは、ビートルズのメンバーや関係者自身が
ビートルズについて語った本なのである。
メンバー同士の強い心の結びつきが感じられて感動。
本分だけでなく、バックの印刷も、よく見るとなかなか面白い。
タイプで打たれた手紙や文書が載っていたりする。
フィル・スペクターの「Long and Winding Road」のアレンジに
ポールが文句をつけている手紙もあったり。
但し、これはあくまでもマニア向け。
ビートルズの歴史を(表面的にでも)あらかじめ知っていないと
意味がわからないところも多いだろうし、
この本の面白さは理解されにくいかもしれない。
CD「1」でビートルズ入門した人は、いきなりこれを読んだりせず、
まずは入門編のビートルズ本を読んでからにすることをオススメします。
さて、オイラは熱心なビートルズ・リスナーであるとともに、
熱心なビートルズ本の読者でもあります。
オイラが読んだビートルズ本の数は
かなりなものと自負しています。
そこで、今後、数回にわたって
オススメのビートルズ本を紹介したいと思います。
貴方がビートルズのコアなファンになってくれることを期待して。
■Chapter.1:入門編
オイラが初めて読んだビートルズ本は、
カッパ・ブックスか何かの新書版
その名もまんまの「ビートルズの本」。
これはなかなか、シンプルなれどツボを押さえた
良い本でありました。
偶然ですが良い出会いをしたといえるでしょう。
でもたぶんもうこの本は絶版。
そこで、入門編としてオススメするのは
「もっとビートルズ!/香月利一」
新書版、全381ページの結構厚い本ではありますが、
最初の60ページでごく簡単にビートルズの歴史を記述し、
残りの約300ページを使って
「レコーディングについて」
「曲について」
「ライブについて」
「楽器について」
「プライベートについて」
など、ビートルズ雑学を非常に詳しく解説しています。
初心者にもわかりやすいうえ、かなり深いネタも満載。
アンソロジーでははばかられたような裏ネタもあり、
マニアが読んでも面白い本だと思いますぞ。
メンバーの家系図まで載っているのは
「だからどうした」ってカンジですが、
作者の熱意は感じますね。
但し、ちょっと身も蓋もない表現が多くて、
ほめちぎるだけじゃなく、率直にけなすこともあるので、
幻想を砕かれることもあるかもしれません。
ご注意。
■Chapter.2:違う立場でみてみよう
そろそろマニアな本に移行していきますよ。
ビートルズのファンは、大部分がジョン・レノンのファン。
逆に、ポール・マッカートニーに対しては、
悪印象を持っている人も多い。
ポールが主導権を握って独善的にふるまい、
メンバーの反感を買ったことが
解散の原因のひとつとされていることもあって、
ポールは悪者扱いされることが多いのです。
しかし、ポールにはポールの立場があったはず。
それを理解するのに最適なのが
「MANY YEARS FROM NOW / BARRY MILES」。
ポールへのインタビューを中心に構成したものです。
A5よりちょっと大きい版型で、なんと826ページ!
厚さ6cmという恐ろしい分量。
当然、中身の濃度は凄まじい。
読破するにはかなりの時間と気合いが必要ですぞ。
圧倒されるのは、ポールの熱意とエネルギー。
超売れっ子でハードスケジュールの中でも、
夜遊びをし、いろいろな人と会い、
世界を広げて行く。
そしてそれをビートルズの音楽に反映させていく。
ポールはポップで、ジョンはアバンギャルド。
世間一般にはそう思われているけれど、
実はビートルズにアバンギャルドを持ち込んだのはポールだったり、
優等生的なイメージとは裏腹に、
自宅には常に裸の女が数人たむろしていたとか、
浮気エッチの最中を婚約者に見られて破局とか、
なかなかやってくれるぜ。
怠惰なジョンがやる気をなくしてしまうと、
働き者で熱意に満ちたポールが主導権を握るのは当然。
そうなると、熱意の感じられない他のメンバーに対して
いらつき、色々と口出ししたくなる気持ちはよくわかる。
おそらく、一番ビートルズにこだわり、
ビートルズを存続させようとしたのはポールであって、
その空回りがなんとも哀しいのです。
話は変わって、ビートルズがデビューするときのこと。
メンバーチェンジが行われました。
ドラマー/ピート・ベストがクビになり、
代わりにリンゴ・スターが加入したのです。
この交替の理由は、
「ピートはドラムが下手だったため」とされていましたが、
どうもそれだけではなさそう。
「ビートルズになれなかった男(作者忘れた)」は、
このピート・ベストに焦点をあてた本です。
ピートはドラムが下手だったわけではない。
メンバー中唯一のシブい2枚目で、
女性ファンが多かったピートに、
バンドの主役を奪われることを危惧したメンバーが、
彼を追い出したのだ と、この本は結論付けています。
確かにそれはそうなのかもしれない。
とはいえ、デビュー前の音源を聞くと、
ドラムは下手という程ではないけれど
リンゴに比べればドライブ感に乏しい。
リンゴのドラムの素晴らしさや、
性格面でバンドに与えた影響を考えると、
リンゴをビートルズに入れたのはやはり正解なのであって、
可哀相だけどそういう運命だったのでしょう。
■Chapter.3:サウンド大研究
さあて、どんどんマニアックになっていきますよ。
ビートルズの魅力のひとつに、
「中期以降の凝りまくったレコーディング」があります。
4トラック〜8トラックなんていう、
今じゃ自宅でのデモテープ作成に使われるようなショボイ機材で、
複雑なサウンドを作り上げたのだから、
膨大な手間と工夫のたまものであることは想像がつくでしょう。
●「Beatles Recording Sessions / Mark Lewisohn」
スタジオに残っていた書類とマスター・テープから、
ビートルズのレコーディング全日程を解説したものです。
気の遠くなるような作業を経て完成したこの本は、
その後のビートルズ研究本において
常に参考文献として表記されるほどの価値の高い資料となりました。
いかにあの複雑な音を作り上げて行ったかが手に取るようにわかる。
文中に出てくる音楽用語の解説もついてて親切。
例えば、アルバム「Abbey Road」の最終曲「Her Majesty」で、
・最初に派手なエレキギターの音が入っているのは何故か?
・一番最後の音が途切れて半端な終わり方をするのは何故か?
といった謎が解けるだけでも、この本を読む価値はある。
ちなみに、資料としてだけでなく、読み物としても面白いですよ。
●「Making of Sgt.Pepper / George Martin」
ビートルズの最高傑作といわれるアルバム
「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」。
4トラックのショボイ機材でどうやって作り上げたか、
その過程を克明に記述した本。
上記「Recording Session」と同様、録音過程の解説本だけれど、
1枚のアルバムに絞ったことで、さらに濃い内容になっているし、
なんといってもプロデューサー/ジョージ・マーティン本人の著作だ。
単なるインド音楽の模倣だと思っていた「Within You Without You」が、
実はインド音楽と西洋クラシックの融合を目指したものだったとか、
「ほほう、そう言われれば成る程」という新たな発見もあり。
●「ビートルズサウンズ大研究/チャック近藤」
著者は、長年ビートルズの完全コピーバンドをやってきた人。
ビートルズの全曲をコピーし、演奏したそうで、
その経験を生かして、ビートルズの全曲を解説している。
ちょっと聴いたくらいでは気がつかないような細かいところを
実にマニアックに解説してくれるので、
この本を読みながら曲を聴くと、新鮮な発見があって楽しい。
この簡易版として「ビートルズサウンズのツボ」という本もあって、
これはアルバム単位で「プロデュース」「歌」「演奏」を解説したもの。
これもなかなか面白いです。
曲単位ではかえって見えづらかった大きな流れがわかるカンジ。
ビートルズほど、そのサウンドを研究されているアーティストはいないし、
きっと今後も出てこないことでしょう。
それほど革新的なサウンドだった訳です。
現在の機材を使えば、ビートルズが苦労して作り上げたサウンドも
簡単に作ることができる。
しかし、それが必ずしも良い結果には繋がらない訳で、
むしろ、制約が大きかったからこそ、
斬新なアイデアが生まれたのではないかとも思うのです。
■Chapter.4:リアルタイムを疑似体験
オイラは1965年生まれなので、
音楽に興味を持ったとき、既にビートルズは解散していた。
つまりオイラがいくらビートルズを好きでも、
しょせん後追いであって、
リアルタイムで経験できなかったことは悔しいのだ。
そこで、当時の雰囲気を疑似体験できる本を3冊。
●「THE BEATLES 伝説の足跡/音楽専科復刻シリーズ」
音楽専科という雑誌に掲載されたビートルズ関連の記事を、
当時のままで復刻した本。
広告も当時のままで掲載されていたりして楽しい。
ちなみに、広告に載っているLPレコードの値段は2,800円。
今と変わらないとは驚きだ。
残念なのは、記事が1967年〜80年のものなので、
ビートルズ初期の狂騒を疑似体験できないことと、
半分以上はソロの記事であること。
それでも、ポールが成田で逮捕された事件の記事や、
ジョージが最も精力的に活動していた時期の記事などは、
あーそういう時期もあったんだねえと感慨深い。
●「苺畑の午前五時/松村雄策」
雑誌「Rockin' On」でおなじみの音楽評論家
松村雄策氏の小説である。
10年以上前のものなので、もう売っていないかも。
中学〜高校卒業までの時期をビートルズとともに過ごした、
筆者の自伝的青春小説といったところで、
60年代のロック文化の雰囲気が疑似体験できます。
主人公が独白する、
「俺はお前らとは違うのだ。ビートルズを聴いてきた男なのだ」に、
筆者がビートルズから受けた影響の大きさが伺えて、
うー!リアルタイムで経験できなかったことが悔しいよう!
●「話の特集:ビートルズ・レポート」
ビートルズが来日した1966年6月、
その直後に出版された本の復刻版。
ビートルズ来日によって巻き起こった騒動を
克明に描いたルポルタージュである。
この本は、ビートルズそのものを描くのではなく、
やりすぎともいえる警察の厳重警備(1日平均1,670人!)や、
特ダネを狙うマスコミの動きや、
実現までの主催者の苦労や、
ファンの若者と、それを否定する大人との対立など、
周囲の空騒ぎを、反体制的な視点で描いている。
たかがロックバンドの来日程度でここまで大騒ぎになるとは、
今じゃ考えられないことだ。
良くも悪くも、熱い時代だったのだなあ。
あー!つくづくリアルタイムで経験できなかったことが悔しいぞ!
■Chapter.5:演奏してみよう
良い曲に出会うと、
それを演奏してみたくなるのはミュージシャンの性。
耳の良い人なら、聴いただけで音を取って
演奏することが出来るけど、
オイラはそれがイマイチ苦手。
特にビートルズの曲はコード進行が変わっているので、
耳でコードを取るのはチト苦労するのだ。
そこでお世話になるのが楽譜。
今回はビートルズの楽譜をご紹介。
●「ザ・ビートルズ・ソングブック」(ソニー・マガジンズ)
ある程度耳で音を取ることができるのなら、
ちゃんとした楽譜でなくても、
コード進行さえわかればなんとかなる。
そういうレベルの人に最適なのがこの本。
歌詞の上にコードネームが書いてある。
昔の平凡とか明星の歌本のようなタイプ。
お手軽だし、このレベルで十分なことも多いのだ。
この本の良いところは、「全曲集」という点。
「DIG IT」とか「WILD HONEY PIE」まで載っている。
●「ザ・ビートルズ・バンド・スコア」(シンコー・ミュージック)
「本屋や楽器屋で売られている楽譜には、間違っているものも多い」
というと、楽器をやらない人は不思議に思うかもしれない。
楽譜はアーティストが自分で書くものではなく、
出版社の誰かが曲を聴いて、楽譜に起こしていくのだ。
(売れないミュージシャンがアルバイトでやるケースが多いという噂。)
なので、採譜する人の能力・やる気・根気といったものに、
楽譜の正確さは左右される。
その点、シンコー・ミュージックのバンドスコアシリーズは良い。
採譜者の気合いとプロ意識が感じられる。
一例として、「BIRTHDAY」という曲。
2本のギターでフレーズを弾いているが、
「1オクターブ違いで同じフレーズを弾いている」
と書いてある楽譜が多い中、
「実は若干違うフレーズ」であることを指摘している。
よく聴くとわかるよ(3〜4拍目)。
この楽譜を全部確認した訳ではないが、
こうした細かい点をきっちり採譜していると、
「良い仕事をしているな」と、採譜者を信頼できるのだ。
きっちりとコピーして弾きたい人には最適。
1冊がアルバム単位になっているのも無駄がなくて良い。