「ふたり」をめぐる旅 〜尾道〜










 11/22に大阪出張が入る。
 翌日が休日なので、ちょっと足を伸ばしてみる。

 行き先は「尾道」。

 以前から読んでいる方々はご存知でしょうが、
 私は大林宣彦監督の映画が大好き。
 札幌へ出張したときは小樽まで足を伸ばして
 「はるかノスタルジィ」のロケ地めぐりをしました。

 そして今回、ついに大林宣彦ファンの聖地
 尾道でのロケ地めぐりと相成ったのです。



 いつ雨が降ってもおかしくない天気であり、
 あまり長時間いれないという事情もあることから、
 今回はテーマを絞って「ふたり」のロケ地を中心にしました。

 「ふたり」は大好きな作品なのです。

 石田ひかり演ずるのんびりやの少女が
 人の心のダークサイドを知って傷つきながらも、
 中嶋朋子演ずる姉の幽霊に助けられて成長していく
 美しいファンタジーです。
 観るたびに胸がぎゅーと締め付けられるのですよ。

 そして、その感動には、
 役者の演技、監督の演出、スタッフの力はもちろんのこと
 尾道の町の風景も大きく貢献しているのです。



 夜に到着。駅からホテルまでの道でいきなり迷う。
 地図には、まるで広いかのように描かれていた道が、
 実際は「これかよ!」と言いたくなるような細い道だったので、
 曲がるところを間違えたのです。

 なんだようと思ったのですが、町を歩いてみて納得。
 尾道においては広いほうなのでした。



 さて、尾道といえば狭い海と急な坂道で有名。
 郷里「長崎」と似ているので、
 あんな感じだろうと思っていたら、
 想像以上の海の狭さでした。

 

 行きかう渡船。
 船の大きさから想像してもらえれば、この狭さがわかるかと思います。
 利根川くらいしかないんじゃないのか?

 しかし狭くても海は海。
 川とはまったく雰囲気が違って、ちゃんと海なのが面白い。



 旅の始まりは「電柱のある坂道」。
 記憶にある映画のシーンと眼前の光景が一致するのは
 とても気持ち良いものです。

 

 「なんだ、ふつうの道じゃないか」と思うでしょう。
 そのとおり。ふつうの道です。
 家の近くという設定で何度も出てくる道。

 石田ひかり演じる実加は、わざわざ塀と電柱の隙間を通る。
 ファンはきっと、同じようにそこを通ってみるのでしょう。
 実は私もやりました。いいトシして恥ずかしながら。
 周囲を見渡して、人目がないことを確認の上でね。



 ついで艮神社。
 意地悪なクラスメイトの家に討ち入りするため
 実加と親友の真子が待ち合わせた場所です。
 「時をかける少女」にも出ていましたね。

 

 おみくじを引いたら末吉でした。
 びみょう。



 海側へ移動しました。
 真子がお饅頭を食べながら泣くシーンの場所です。

 

 右は真子の家という設定の旅館「魚信」さんです。

 「ふたり」は石田ひかりも中嶋朋子もいいけれど、
 真子役の柴山智加もいいんですよ。
 性格が良くて明るいコ。
 中学生の頃クラスにいたら好きになってたなきっと。



 ピアノの発表会場「浄土寺」の前を通って、
 いよいよ最終目的地がここだっ!

 

 またふつうの道じゃねえか。
 そのとおり。
 でも特別な道。

 実加の姉、千津子が事故死した場所であり、
 映画のラストシーンの場所でもあります。

 千津子が絶命する瞬間に紅葉がはらはらと舞い落ちて、
 血を連想させる美しくも悲痛な演出でした。
 いまはちょうど紅葉の季節。
 まるでこのシーンのように紅葉が散っていました。

 この家はふつうの民家。
 日本一観光客が見に来る民家じゃなかろうか。



 ついでに見た「転校生」のロケ地もいくつか。

 

 小林聡美演じる一美が、自転車立ちこぎで登る歩道橋。

 この歩道橋の上は、「ふたり」の冒頭で、
 出張に行く父親を見送るシーンの場所でもあります。
 でもねお父さん、「電柱のある坂道」からこの場所に出ると、
 駅に行くには遠回りですよー。


 

 ここは、一夫と一美の体が入れ替わった後、
 モノクロからカラーへ変わるシーンの踏切。
 石段からいきなり踏切というのが面白いなあ
 と思って印象に残っていた場所なのです。


 

 一夫と一美が転げ落ちた、御袖天満宮の石段。
 空き缶を蹴ってはいけません。
 立小便をしてもいけません。




 さて、先ほど「遠回りですよー」なんて無粋なツッコミをしましたが、
 映画の設定と現実の場所は必ずしも一致していません。
 「電柱のある坂道」と「事故現場」がすぐ近くのように描かれていますが、
 私が見て回った順番からわかるように、実は町の両端に位置しています。
 そのくらいの映画的な嘘は許されるというものですね。



 それにしても、「ふたり」公開から15年。
 「転校生」に至っては24年も経過しているというのに
 映画のシーンと寸分違わない風景が残っているとは...



 主要なロケ地を回ったところで昼食。
 アジア小僧から教わった尾道ラーメンの名店「朱華園」で食する。
 魚介ダシの醤油味で豚の背油入りという
 一見こってり風だけど実はあっさり。
 独特の風味です。

 人気店だけにとても混んでいて、20分ほど並びました。
 普段は並んでまでラーメンを食べようとは思わないんですが、
 今回は「まあいいや」と思うくらい、のんびりモードでしたよ。



 その後、海沿いにぶらぶらしながら駅前に戻った。
 まだ若干時間がある。
 地図を見ると、駅近くから登れる展望台がある。
 行ってみようかな。

 しかし、その場所が問題なのです。

 

 この写真の一番上で見切れているお城。
 このへんまで歩いて登るのです。
 距離はたいしたことないですが、この角度!

 実加が通う高校という設定の小学校の横を通って、
 ぜえぜえ言いながら急斜面をひたすら登りましたよ。

 途中、こんな恐ろしい看板があったりして。

 

 で、展望台からとった写真が、ページトップの写真や船の写真。
 逆側はこんなふうです。なんかいいね。

 




 帰り道は、あえて迷ってみようとテキトーな道に入ったら、
 最初の「電柱のある坂道」を逆側から通ることになった。
 なんかいいかんじに終幕っぽい。





 さてここからは、これから尾道に行ってみようと思っている
 大林宣彦ファンへの軽いアドバイスです。
 よろしかったら参考にどうぞ。


 ■歩きやすい靴で!
  尾道の坂と階段は想像以上にキツイぞ!
  あと夏場はタオル必携!
  寒かったのに汗かきましたもん。

 ■テーマを決めましょう
  狭い町ですが意外と時間がかかります。
  上記行程で、所要時間は約4時間でした。
  映画を絞るか、絶対に見たいところをまず回って、
  時間があれば他も行ってみる というくらいに
  割り切ったほうが良いでしょう。

 ■おのみち映画資料館
  行ってみたのですが、小津安二郎関連の展示ばかりで
  大林映画に関するものは何もありませんでした。
  大林ファンは行く必要はありませんよ。
  あれで入館料500円はちょと高い。

 ■お金はそれほどかかりません
  ロケ地はほとんどが町の風景なので、基本的に無料です。
  私が使ったお金は、昼食と映画資料館の入館料を除くと
  艮神社のお賽銭とおみくじ代のみでした。

 ■調べていくか、迷子になるか
  しまなみ交流館などで、ロケ地マップを入手できます。
  が、このマップ、超大雑把です。
  「電柱のある坂道」や「事故現場」にたどり着くのは難しいでしょう。
  大林監督自身「この地図を持って尾道の町を歩けば、
  あなたは必ずや迷子になるだろう」と書いています。
  あえて迷子になってみましょう というわけです。
  とはいえ時間のしがらみから自由になれない大人の私。
  市販のガイドブックできっちり調べていきました。
  時間のしがらみから自由になれる人はあえて迷子になるのも一興。

 ■何度でも行こう!
  今回は時間の都合で、多くの場所をあきらめざるを得ませんでした。
  渡船に乗って向島にも行きたかったんだけどなあ。
  そんなわけで、何度でも訪れてみたくなる町です。
  次は「さびしんぼう」がテーマで!