はじめに御断りしておかねば成らないが、この掲載文章の意図する内容は、
バス釣りの否定でも、渓流におけるルアー・フィッシングへの中傷でもないことを、十分に御理解願いたい。
私も遙か以前には・・ルアー・フィッシングにおいてのトリプル・フックは、当たり前だと思っていたのだから・・・。
今後、益々多様化するであろう渓事情を思うと・・・。!
勿論、私にもルアーについては、多少の経験はありますよ。
世の中に、バス・ブームが到来する遙か以前の古い話ですけれども。
今では骨董品であろうルアー達と共にアブ・ミッチェルのリールも、
静かだった渓の名残を留めています。
私の考えるルアー釣りとは、その特性を遺憾なく発揮出来るフィールドが、
重要なファクターであると、今も思っています。
そこは、川幅の在る大川の本流であり、堰堤のプールの様な広いポイントでこそ、
真価を発揮するのだと。
広範囲に探りを入れ、餌釣り・フライ・テンカラなどでは、到底カバー出来ない場所こそが、
ルアーの出番ではないかと。
確かに、ルアーの作り出す魅惑的な動きは、アピール度もずば抜けている事を否定できません。
それ故、里川・渓流などの限られた範囲の狭いポイントでは、
慎重なキャスティングが要求されるものだと認識しています。
闇雲にキャスティングを繰り返した小さなポイントにおいては、追い込まれた渓魚は、
長い時間捕食活動を敬遠してしまいます。
確かに、餌・フライ・テンカラのどれを例に上げたとしても、素人が無闇にかき回したポイントは同様でしょう。
しかし、アピール度の高いルアーにおいてのそれは、その効果も倍増されると言う事なのです。
カビの生えた話を、一つすることにしましょう。
私が餌釣りをしているポイントに、一人の釣り師が近づきました。
その釣り師は、私の釣りをそっと観察するかのように、気長に待っているようでした。
そして、私が休憩の為に竿を休めた折になって、ようやく切り出してきたのです。
何気ない会話が続いた後に、彼が言いました。
「僕はルアーなのですが・・・。」
「この場所で試させていただいてもかまわないでしょうか?」
私は答えました
「どうぞ御遠慮なさらずに・・。」
彼は心の中で、私に話しかけて来たのですよ!
『僕のキャスティングが、場荒れを誘う事になるかもしれませんが・・御許し願えるでしょうか?』
私も心の中で答えました!
『もう十分に楽しみましたから、御存分にどうぞ!』
彼の見せたルアー・テクニック・・・それは見事なものでした。
バス・ブーム到来と共に、真のルアー・マンとの出会いも殆んど無くなったことが残念でならないのです。
この様な話をすると、非難の声が聞こえてくるようで恐縮なのですが・・私の出会いが、恵まれたものではないだけのことなのでしょう。
業界の方々へ
釣り雑誌・釣り新聞・メーカーなどは、技術面を重点に置く傾向が強いとは言えないでしょうか?
商品の売り上げ実積を目指す必要性から考慮するのであれば、時代の流れと言わざるを得ないのでしょうが・・・。
マイクロ・スプーンに代表されるルアー製品の多様化は、渓流での実績を果すと同時に、フィールドの拡大をも
促した事でしょう。
しかし・・惜しむべくは、陽の部分にのみ着目いたことでしょうか?
限られた釣り場と多様化する釣法、その中にあっての陰の部分が置き去りにされてしまったことです。
餌・フライ・テンカラに適した小さなポイントでルアーをキャストすることが、
どのような状況を作り出すかもおも、全く理解も知識も持たない釣り人達を、
大量生産して来たのだと・・私には思えてなりません。
ようやく近年では、幾分の補足が成されているようですが、魚を傷つける可能性の高いトリプル・フックの使用もさることながら、シングル・フックの普及率も満足に達したとは言えないからです。
私は、バス・釣りに対して論ずるつもりもありませんが・・返しの付いたトリプル・フック使用のルアーが、
店頭の主流ではないのでしょうか?
リリースを前提にして、ブーム化した筈のバス釣りにも関わらず、魚へのダメージ配慮を軽視した結果であり、ルアーの持つ陰の部分のケアー不足は、業界の問題だと言えませんか?
熟成されないとままの知識とテクニックを振るうには、渓魚達の生命力は・・あまりにもひ弱なのですよ!
日々の営利を追求するがあまりに、考察する余裕も失くしているかも知れない業界の方々へ・・魚の其のものの存在を失った市場を推進することは、自身をも滅ぼす事に着目あれ!
また、商品ある渓魚達への配慮を考える上で、シングル・フックの推奨を促さないばかりか、
検討の対象ですらない漁協の存在も、重要視されるべき問題でもあろう。
良き釣りを願って・・渓心