1998年2月27日
関さんの森を育む会
代表 関 美智子
松戸市建設局公園緑花部様
『松戸市緑の基本計画』(試案)に対する意見
はじめに
私たち『関さんの森を育む会』は,松戸市幸谷字熊ノ脇に位置する『関さんの森(旧子どもの森)』を,守り育むために設立された市民団体です。この森には現在もフクロウやタヌキなどが生息しており,私たちの子孫に残すべき松戸市民の自然財産ととらえて活動しております。また,松戸市がみどり豊かな街になるよう,さまざまな活動を展開しております。
さて,このたび,『松戸市緑の基本計画』の試案を拝見しましたが,その内容について意見がありますので,以下に述べさせていただきます。
第2章 施策の展開 1都市の緑づくり (1)施策の方針 1)貴重な自然環境の保全・創造 ○段階的樹林地保全の展開(22ページ)
松戸市の緑の現況や将来の見通しを考えた時,樹林地の減少は最も憂慮すべきことです。樹林地を確保するために,あらゆる手段を考え,実行してほしいと考えます。
例えば,「▽市全域樹林地保全」の項目では,樹林地の開発そのものを容認しない方向で指導して下さい。樹木を伐採する場合は,事前に許可や届け出を義務とし,それを公開することもいいと思います。
また,そもそも樹林地が減少している原因は,相続税問題に起因しています。樹林地は個人の財産である以前に,今は市民全体の財産と考えていい時代です。相続税は,市のレベルでは解決困難な難しい問題ですが,松戸以外の市でも同様の問題をかかえているはずですから,それらの自治体と協力して,国に働きかけてほしいものです。
さらに,樹林地の減少を食い止めるためには,樹林地の実態を把握しておくことも必要です。樹林地の面積だけでなく,その状態(どんな樹木が生え管理はどうなっているのかなど),所有者の意向などについて,定期的に調査し,公開することを要望します。
以上のことをまとめ,22ページ「▽市全域樹林地保全」以下の文章に,下線部分を挿入することを要望します。
「市全域の樹林を全て保護対象とするため,新たな条例を定めることにより,樹林を含む場所での開発をおこなわないよう,指導につとめます。やむを得ず開発などが行われる場合は,樹林の保護および復元・再生の指導につとめます。」
また,具体的な項目の中に,次の項目を加えて下さい。
「基本的には樹林地の開発をおこなわないよう指導する。」
「樹林を伐る場合は許可(少なくとも届け出)を義務づけ,その概要を公開する。」 「樹林地減少の背景にある相続税の問題については,他の自治体と協力して国に対し てはたらきかける。」
「樹林地の実態を把握するための調査を定期的におこない,その概要を公開する。」
第2章 施策の展開 1都市の緑づくり (1)施策の方針 1)貴重な自然環境の保全・創造 ○自然調和型都市の形成(22ページ)
関さんの森は,斜面林や湧水池からなり,現在もフクロウやタヌキなど多様な生物が生息しております。面積は
1.1haあり,良好な生態系が保たれるように市民の手によって維持管理されています。関さんの森は,その広さや生態系の質から見たとき,11の地域公園よりはるかに飛び石ビオトープとしての価値が高く,ビオトープネットワークの核になりうるものです。緑の基本計画のビオトープネットワーク構想の中に,関さんの森を位置づけて下さい。
23ページの,『ビオトープ空間のネットワーク化』の図に,関さんの森を飛び石ビオトープとして加えてください。また,15ページの『緑の将来像』の図に,関さんの森を加えて下さい。
第2章 施策の展開 211のまちの緑づくり (2)11のまちの物語づくり
2)歴史のまち
馬橋地域 【緑の現況】(52ページ)
4点目に「地域の住民は,自然に対して比較的満足感を持っています。」とありますが,私たち地域で活動している者の認識とは異なります。2年前の調査で馬橋地区の住民の満足度が高いことは確かですが,その後の2年間に多くの樹林が失われており,樹林地の減少率の高い地域でもあります。会としは素案段階で資料を用意し,修正を要望しましたが,試案には盛り込んでいただけませんでした。再度,修正を要望します。
52ページ【緑の現況】4点目を,「地域の住民は,自然に対して比較的満足感を持っていますが,樹林地の減少率が高い地域でもあるので危機感をつのらせています。」と修正して下さい。
また,私たちの活動の場である『関さんの森』は,前述したように,森の広さや質から見たとき,この森は基本計画で推進しているビオトープネットワークの核として重要な位置を占めるのと考えられます。したがって,緑の現況の中に,関さんの森のことを記載して下さるよう要望いたします。
新たに項目をもうけ,例えば「東部に関さんの森があり,地域の住民によって豊かな生態系が保たれるように維持管理されています。」のように記載して下さい。
【緑化の基本方針】
○斜面林・湧水や多様な地形を活かした空間の確保について(52ページ)
1点目に「斜面林の景観保全のための誘導・指導」,2点目に「みどりの保護地区の指定促進」とありますが,この程度の事業で20年後,あるいは50年後,地域の斜面林がどれだけ残るのでしょうか。馬橋地域を含め,江戸川沿いの斜面林を『緑地保全地区促進区域』と位置づけていることは評価しますが,実際に『緑地保全地区』として指定しなければ意味がありません。前回も要望しましたが,緑地保全地区は,松戸のシンボルとなる矢切地区や社寺林に限るのではなく,関さんの森を含め,馬橋地域にも確保して下さい。
52ページ【緑化の基本方針】「斜面林・湧水や多様な地形を活かした空間の確保について」優先順位のことを考え,1点目を「関さんの森など樹林地に対する緑地保全地区指定」とし,2点目に「市民の森の指定促進」,3点目を「緑の保護地区の指定促進」,4点目を「斜面林の保全のための誘導及び指導」とすることを要望します。
また,「湧水の環境整備と湧水を巡る散策ルートの設定」とあります。基本計画の中には湧水の『活用』だけが述べられていて,『保全』の言葉が見当たりません。湧水は台地上の樹林地などが育むものです。市街化が進み、地下への透水量が減少している現状で、いつまで湧き出るかわからない湧水の活用だけを事業とするのではなく、湧水の確保、具体的には台地上の樹林地や斜面林の確保、雨水浸透ますや透水性舗装の導入促進を事業化して下さい。
52ページ【緑化の基本方針】「湧水の環境整備と湧水を巡る散策ルートの設定」を,「湧水量の確保及び湧水の環境整備と湧水を巡る散策ルートの設定」とすることを要望します。
さらに,「斜面林の景観保全のための開発の誘導・指導」とありますが,これは斜面林の前に建てるマンションなどの高さの規制を念頭に入れているのでしょうか。これも大切なことだと思いますが,景観よりも先に斜面林そのものを保全することが必要です。斜面林を伐っての開発行為に対し,それを抑制するための誘導や指導を行政は行うべきと考えます。
52ページ【緑化の基本方針】「斜面林の景観保全のための誘導・指導」の“景観”を削除し,「斜面林の保全のための誘導・指導」とすることを要望します。
第2章 施策の展開 3緑の担い手づくり (1)施策の方針
緑の担い手づくりの施策の方針の冒頭部分には,次の一文があります。
「『緑の担い手づくり』では,市全体をつつむ『緑を育て楽しむ協力体制づくり』につとめます」。
そして,その内容を以降のページで読むと,いわゆる「花いっぱい運動」の支援が中心であり,緑を育てる理念はあっても,緑を守る理念は見られません。これは施策の方針として欠陥ではないでしょうか。私たち『関さんの森を育む会』をはじめとして,松戸の自然(生態系)を守る立場の会が市民の中から少しずつ育ってきています。過日の懇話会への参加者は,いわゆる緑の愛護団体系よりも,自然保護系の人が多かったし,素案への意見も自然保護系の意見が多かったのが何よりの証拠です。市としてそれらの会を支援する態度を,みどりの基本計画の中で表明してほしいものです。
64ページ,施策の方針の冒頭部分について,一行目の中に下線部“守り”を追加することを要望します。
……市全体をつつむ「緑を守り育て楽しむ協力体制づくり」……
なお,“守り”の理念が加わることにより,具体的な内容が増えていきます。とりあえず,以下の2点の追加を要望しますが,以降のページについてもう一度“守り”の理念から全体的に見直しされることを要望します。
65ページの【緑の現況】の項目の中に,「関さんの森を育む会や千駄堀を守る会など,自然を守る立場の団体が育ってきています。」を追加して下さい。
また,【現状からの課題】の項目の中に,「緑化の方向性として,生態系を考えたビオトープネットワークの概念を普及させる必要があります。」を追加して下さい。
第2章 施策の展開 3緑の担い手づくり (1)施策の方針
3)協力体制のバックアップ
【施策の展開】〇(財)まつど街と水辺の緑化基金の機能充実
緑化基金の事業内容は,いわゆる「花いっぱい運動」的な内容が中心です。自然(生態系)を保護するような観点からの事業を多く展開するよう,見直しを要望します。
一方,事業内容の中に,『緑地保全事業』があり,その中に『緊急買い取り』の項目があることは評価します。ただ,「樹林地を緊急に買い取るのであればお金を出してもいいが,緑化基金が一方で花いっぱい運動を推進しているのであればお金は出したくない」という意見は少なくないと思います。別の財団設立などを検討して下さい。
第3章 計画の実現に向けて 5市民参加による計画の推進と見直し
「緑化推進委員会」ですが,他の名称は考えられないでしょうか。松戸市緑の基本計画が扱っているのは,“緑化”だけでなく,緑地の“保全”を含んでいるはずです。
おわりに
私たちは,今松戸市が目指す“みどり”のあるべき姿は,樹林地を中心に,多様な生物群集を育む生態系を維持していくことだと考えています。そのような環境は,私たち人間が快適で心豊かに暮らすことに必要だと考えているからです。緑の基本計画の課題は,現在存在する緑の確保とともに,緑が失われた地域に対する再生・復元が目的ですが,樹林地のような良質の“緑”・生態系の確保は,時期が遅れれば遅れるほど困難になります。財政的に厳しいのは十分に承知していますが,是非,市内全域において樹林地の確保を最優先の施策として実行して下さい。
最後に,私たち関さんの森を育む会は,樹林地の減少に危機感をつのらせており,だからこそ『緑の基本計画』の策定に大きな期待をよせています。今回の試案についても,会としての意見をまとめるにあたり,懇話会に参加し,意見をもちよって,この意見書をつくりあげました。残念なことは,十分に試案を吟味し意見をまとめあげる時間的余裕が足りなかったことです。諸般の事情はあるにせよ,懇話会開催から1週間の期限では,この膨大な資料を読んで意見をまとめることは不可能です。市民参加の計画を作るためには,意見書の提出締切までもっと時間的余裕がほしいものです。次回,このような市民の声を聞く場合は,その点を配慮されることを要望します。また,私たちの会のように,かなりの時間を割いて意見をまとめている団体や個人も少なくありません。意見に対する見解も,公表されることを要望いたします。