幸谷ビオトープについて
『関さんの森を育む会』では,森の近くの宅地開発について,その開発業者へ以下のような提案をしました。今回の開発は,かなりの面積にのぼるため公園が作られます。その公園を,「普通の公園にするのではなく,ビオトープとして整備してほしい」という提案です。
幸い,開発業者や松戸市の理解も得られ,現在,その具体化にむけて設計作業が進んでいるところです。
平成9年5月18日
関さんの森を育む会
代表 関 美智子
株式会社中央住宅 様
松戸市幸谷観音下の宅地開発に関する提案
春暖の候、貴社におかれましては、ますます発展のこととお慶び申し上げます。
さて、私たち『関さんの森を育む会』は、松戸市幸谷字熊ノ脇に位置する『関さんの森』を、守り育むために設立された市民団体です。このたび、幸谷字観音下が貴社により住宅地として開発されることを知りましたが、ここには良好な斜面林が残っておりました。開発が進む松戸市では、近年、急激に『緑』は減少してきており、貴社が開発する幸谷字観音下から斜面林が無くなることは、非常に残念なことです。
私たちとしては、自然と調和した開発をお願いしたいと思っておりますが、せめて開発区域内に整備される公園を、自然に配慮した形で整備していただきたいと考えております。なにとぞ、以下のことについて、ご検討をお願い申し上げます。
提案事項
貴社が開発する区域内に作る公園を、『ビオトープ』として整備してはいかがでしょうか。
以下、『ビオトープ』について、詳細を説明させていただきます。
『ビオトープ』とは
ビオトープとは、ドイツ語のBIO(生物)とTOP(場所)の合成語で、『野生生物の生育場所』と訳されます。開発が進んだ都市部において、野生生物の生息場所を人工的に作っていく試みが、現在、注目されています。
従来の『緑化』は、園芸植物を植えて景観のみを考慮してきました。ビオトープでは、さまざな『エコアップ』の技法を駆使し、多様な野生生物が生息できるように整備します。たとえば、メダカやトンボのヤゴが生息できるように池を作ったり、チョウやハチが生息できるようにその餌となる植物を植えるわけです。
ビオトープ作りは、すでに、環境先進国のドイツでは都市計画の中に反映されています。日本でも、最近になって、その必要性が認識されつつあり、行政も環境施策として取り入れる方向にあり、マスコミなどで話題になることも多くなってきました。
ビオトープの必要性は、次の3点にまとめられます。
1.遺伝子資源として野生生物を保護するため、その生息場所を確保する必要がある。
2.環境教育の場として、身近な場所にバランスのとれた生態系(ビオトープ)が必要である。また、人間にとって(特に子ども)野生生物と触れ合う場所が必要である。
3.ビオトープのある街は、人間生活にとっても快適な環境である。
私たちが提案している、「公園のビオトープ化」については、主に1と2の観点から、その意義は非常に大きいと考えられます。
公園をビオトープ化することの利点
市街地の公園をビオトープとして整備した実例は、日本では稀です。できた公園は、地域の住民の自然との触れ合いの場になるのはもちろんのことですが、貴社にとっても企業イメージを上昇させる効果があると考えられます。
1.日本人の『自然指向』は年々高まっています。昨年実施した松戸市民意識調査においても、約6割の人が「多少不便でもできるだけ自然が豊かで静かなまち」を望んでいます。このことから、公園をビオトープにすることは、購入者のニーズに沿うものと思われます。
2.できたビオトープには、メダカが泳ぎ、トンボやチョウが舞い、野鳥が囀ります。もちろん四季折々には、さまざまな野草が花を咲かせます。『自然指向』の人々が増えていく中、自然観察の場として利用できます。また、子どもたちにとっては、生き物たちとの触れ合いの場となり、健全な生命感や自然感を育むことができます。
3.通常の街中の公園では、遊具で遊ぶ幼児と、おしゃべりをする主婦や老人の姿しか見かけません。ビオトープであれば、幅広い年令層の人々が、公園を積極的に利用し、楽しむことができます。
4.宅地開発は自然保護と相反するものですが、公園をビオトープにするなど、環境に配慮した貴社の姿勢は、社会的に注目され、高い評価を得るものと思われます。
公園(ビオトープ)の具体案
ビオトープは、多様な生物が生息できるように、多様な環境を創りあげることが必要です。また、公園は地域住民の憩いの場ともなるので、次のように設計することをお勧めいたします。
なお、ビオトープの設計に関しては、(財)埼玉県生態系保護協会が豊富な経験を持っています。また、施工に関しては、ビオトープ工事をおこなう業者の団体として日本ビオトープ協会を紹介いたします。
1.止水環境としての『池』・流水環境としての『小川』の設置
水辺環境としては、止水と流水の2つの環境を作ります。池の形は細長くし、上流部分と下流部分の間をくびれさせ、温度差を生じさせます。深いところや浅いところを作ります。底には荒木田土を敷きますが、砂地や礫を置く場所も作ります。ところどころに杭をたてます。さまざまな水生植物を植えます。
このように、多様な環境を作ることにより、メダカ、カエル、トンボ、ゲンゴロウなど、いろいろな種類の水生生物が生息するようになります。
2.『湧水』または『井戸水』の利用
水質が良く、温度の安定した湧水や井戸水を利用することにより、良好な水生生物群集を育むことができます。井戸水の場合は、タイマーを接続して通水時間を制御するとよいでしょう。
井戸は、防災用としても利用することができるので、井戸を設置することは地域防災対策として歓迎されます。
3.植栽する樹木
多様な昆虫や野鳥を呼ぶために、多様な植物を少しずつ植えます。例えば、カブトムシやクワガタのためにクヌギやコナラを植えます。アゲハチョウのために、サンショウ(幼虫の食草)やブッドレア(成虫の吸蜜源)を植えます。野鳥のために、ガマズミやカキを植えます。その他、エノキ、エゴノキ、カラタチ、アベリア、フジ、ハギ、ツバキなどを植えます。
4.草むら
バッタやカマキリを呼ぶために、草むらを作ります。草むらは、全く除草しないのではなく、除草する間隔や時期を変えることにより、多様な雑草が生えるように工夫します。
5.その他の工夫(エコアップ)
池の周囲には柵を設け、つる植物を誘致します。柵は、危険防止(幼児が池に入ること)の意味もあります。
陸上部分には、小さな山を作ったり、砂地の部分を設けます。また、朽木の山や石の山を作ります。もちろん、幼児にとって危なくない程度の大きさです。
除草や剪定によって出た枯れ草や枝などを置く場所を作り、堆肥とします。
樹木には小鳥の巣箱をかけます。
一方、ビオトープの趣旨を記した看板をたてたり、植物名のプレート(名札)を設置します。
6.憩いの場・遊びの場として
憩いの場としての利用を考え、テーブル付のベンチを置きます。テーブルがあると、観察会など多目的な利用が考えられます。
幼児の遊びの場としての利用を考え、若干の遊具を置きます。
水道(できれば井戸水)の蛇口を1個設けます。蛇口は、手や足を洗ったり、水を飲んだりするのに使います。もし、井戸水の蛇口を設けることができれば、防災用としても利用できます。
〔完成イメージ図〕
ビオトープとして整備した公園のイメージ図(西から東の方向を展望)です。
