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プロローグ
平成8年度、早いもので就職して20年目となり、リフレッシュ休暇をもらった。 もらった休暇を使ってどこかへ行こうとは考えていたのだが、全然具体化せずにいて、3月までに消化してしまわないとチャラになってしまうというのに、なんだかんだと年の暮れが近づいてきてしまい、おれはあわてていくつかの旅行会社に行って、パンフレットを物色しはじめた。 もくろみでは、おれはベトナムに行ってみたいと考えていたのであるが、なかなか希望する条件にかなったプランがない。 なんでベトナムかって言えば、それは「うどん」なのだ。 「ベトナムへ行ってうどんを食う」というのが、おれの考えたリフレッシュ休暇の目的なのであった。 そんななかで、とある旅行会社のプランでベトナムを縦断するプランがあるのを見つけた。 それは、1月の中旬に実施する予定のもので、関西空港からホーチミンへ、そしてそのままノイに飛び、南下しながらフエその他をめぐってホーチミンに戻ってくるものであった。 時期としても期間としても、おれの条件に近いものだったので、さっそくその会社に連絡をとり、参加の申込をしたのであった。 ところが、なのだ。 1か月前になって12月も中旬になろうとする頃、くだんの旅行会社から職場に電話が入った。 1月のベトナム行きは、人数が集まらなくて催行できず、中止になってしまったというのだ。 予定表では、ベトナムには2月、3月と毎月行くことになってはいたが、おれはやっぱり宮仕えの身、あまり年度末にかかる時期は避けたかったのであった。 けれども、いざ募集しても、お正月明けでもあり、あまり行く人がいないんだそうで、他の大手の旅行会社でもベトナム行きは中止になっているらしい。 それはないよ〜と思っても、人数が集まらないんじゃしょうがない。 「それじゃ、2月の状況はどうなんですか?」 とりあえずおれは聞いてみた。 「今のところ、まだ決まっていません。」 「なら、一応、予約入れといてくれますか?」 ということで、次は2月を待つこととなった。 年が明けて、臨時のしごとが舞い込み、とんでもなく忙しい日々が続き、まさにリフレッシュを必要とする状況となってきた。 しかし、1月にかかってきた電話は、おれの期待を見事に裏切るものであった。 「他の会社にもあたってみたんですが、どこも集まっていないようなんです」 「そうなると、3月も、見込み薄でしょうかねえ」 「いまの状況だと、確約はできませんね」 「3月までに休みをとらなきゃいけないんで、何とかしてくださいよ」 「ならば、3月に中国に行くツァーは、行くことが決まっていますが、中国はどうなんでしょう?」 ええ?!? 中国? そいつは考えてなかったけどなあ。 でも、もらったせっかくの休みをふいにしたくはないし、中国にもうどんのたぐいはあるだろうし、おれは3月のベトナムに希望をつなぎながらも、中国を候補に入れることにしたのであった。 もっとも、1か月前をすぎるとキャンセル料をとられることになるので、2月中旬にはどっちかに決めなければならなかったのである。 その結果、おれは、中国に行くことになった。 それも、3月21日〜28日という、まさに年度末のとんでもない時期である。 しかしおれの武器は何といってもリフレッシュ休暇だったので、職場ではほとんど文句も言われることなく休みを取ることができたのであった。 出発の2週間前、新宿にある旅行会社で説明会があった。 説明会の場所に行ってみると、参加者の全員は来なかったけれども、平均年齢はかなり高そうだった。 そりゃそうだろう、あまりパッとしたコースを行くわけではないのだから。 驚いたのであるが、おれの家の眼と鼻の先の近所の人がいっしょに行く名簿に載っているのであった。 おれの他は、もと中国に軍属として行っていたひと、退職教師、現役教師、薬剤師、会社員などで、夫婦が2組、親子が1組、友達どうしが1組、単身で参加しているのは、おれを含めて3人であった。 総勢12名と添乗員1名の、こじんまりとしたツァーであった。 |