高齢者が伝える地域の歴史と民俗
1 活動の趣旨について
- 岐阜県七宗町は、山林に囲まれた静かな所ですが、他の地域と同じように近代化の生活様式に変わり、
かつての習慣やしきたりはほとんど忘れられようとしています。
確かに生活は便利になりましたが、諺や昔の言い伝え等には多くの示唆に富んでいますし、知恵に溢れています。
それらを記録し、留めておこうと1983年の冬に4人の発起人が集まりました。
そして翌年の8月25日に結成総会で、「七宗町ふる里研究会」が発足しました。総会参加者は26名でした。
会員には、広い町内の伝承を広範囲に取材するために、”物知り”の代表的な人達にも参加していただきました。
2 これまでの活動について
- 発足してからの3年間程は、「祭りと年間行事」を会員が取材してまとめましたが、これらの一部は、
数年後に発刊された「七宗町史」にも掲載されました。
その後、町内の寺院・神社の調査、名所の紹介、滝の調査、巨木・銘木の測量を実施し、これにあわせて2ヶ月に
1回以上の割で勉強会を開催しました。
さらに教育制度と学校の歴史等を調査し、これらを年表にして、町の文化展に戦前の教科書・卒業証書・賞状とともに
展示しました。
戦後50年展では、写真や当時の新聞等を展示し、また防空頭巾や火消し箒・竹槍等を会員が実際に作り、
展示して話題を集めました。そして民具を収集するようになってからは、さらに活動が広がりました。
3 活動の内容と成果について
- 活動は、設立後5〜6年間は行事や風習等の調査や文化展への展示に限られていましたが、
活動内容を知った近所の人から「こんど家を立て替えるので、古い道具が邪魔になる。もしそちらの団体で
引き取ってくれるなら渡します。必要でないなら燃やします。」という相談を受けるようになりました。
そこで、民具の収集も始めることになりました。
そのころ、会の活動として他の市町村が建設した資料館や郷土館等を見学してもいましたので、同じ民具の
収集を行うなら、「それに伴う生産技術も保存しよう。」と思い、高齢者の会員に相談すると快く引き受けて
頂くことができました。
それ以降、はた織り・いとひき・こも編み・むしろ編み・蓑つくり・・・等々の古い農村の生産技術が
保存できるようになりました。特に、はた織りは、他の地方ではあまり残っていない方法が再現でき、
貴重なものとなりました。これは助成により、地元に古くから伝わるはた機械を大工さんに復元してもらったものです。
97年4月、町が中心になって、第3セクターにより「物産館」が完成しました。2階建てで、1階が物品販売のコーナーに
なっていますが、2階は、はた織りや藁細工の体験ができるような農業研修室となっており、そこでは「ふる里研究会」の
会員が、一般の観光客を相手に指導しています。
この活動は、物産館オープン以来、大きな人気を集め、近隣の市町村からも、「はた織り技術を習得したい。」
と言われる方が多く、今では、7人の町外の研修生も訪れています。また、町内の2つの小学校の1年生と3年生からの
「昔の仕事の体験をしたい。」との要望にも応えて、体験教室を開き好評を得ています。特に1年生は母親と一緒に参加し、
親子の体験の場となっています。
はた織り等の技術の伝承活動は、単なる研究活動にとどまらず、高齢者の大きな生きがいとなっています。
そしてテレビの取材・放映等もあり体験教室は新聞(中日新聞98年2月19日付け)にも掲載されて、町の話題となり、
活性化につながっています。
またこれとは別に、歴史・習慣等の研究は続けており、それを教育委員会の広報紙にも掲載しています。さらに
文化協会の活動にも積極的に協力し、町の文化活動の中心として活動しています。
4 今後の活動計画と展望について
- 地域の歴史・民俗研究目的のサークル活動が次第に発展し、高齢者の生きがいをつくり、さらに町の活性化にも
つながっていきました。予想以上の成果です。現在の会員数が70名(町内60名、町外10名)と人数の上でも発展して
います。その要因の第一は、明確な方針をもっていることです。それは「農村山村生活体験博物館」の建設です。
今ほとんどの博物館・資料館には多くの資料がきれいなガラスケースの中に入れて展示してあります。
またケースの外にある展示物にも、すべて「手をふれないでください」との表示があります。
したがって、ほとんどの民具はどの様に使用したのか不明で、ただ、”古いもの””めずらしいもの””丁寧に作ってある”
等々、感心して帰ってくるだけです。そこでは、民具や資料の名称等は知ることができますが、作った人、それを使った人の
ことを理解することはできません。
私たちのサークルの目的は、古い民具等を使って、昔の仕事の体験ができる博物館の建設です。そこでは高齢者が指導者・
教授となります。そして一緒に働くなかから民具の名称や使い方を若者に伝えていきます。すなわち「生産の知識より知恵を
伝える博物館」を創り、世代を越えた交流ができる施設の建設を目的として努力しています。
特に高齢者に対しては、「寝たきり老人」になる暇があったらここで手伝って欲しいと訴えています。
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