「旅行8月9→10日 ―カート篇―」

東北自動車道、佐野藤岡ICをおりて東に進む。国道4号線にあたったら、
北上する。トヨタとホンダの販売店の間を右折する。ああ、だんだんと
道が細くなってきた。田舎道だ。「モデナサーキット」と書かれた看板
があった気がする。誰かがそう言ったので、運転手の恵介は慌ててUターン。
あまりキレイとはいえない看板のところを入っていくと、そこは砂利道。
犬がわんわん叫びながら、僕達の車を追いかけてきた。この犬は羊でも
守っているのだろうか。勇敢な犬だ。

栃木のイタリア、「モデナサーキット」に着いた。従業員は人の良さそうな
若い人と、寡黙な感じの少し年配の人、2人だけのようである。もちろんイタリア
人であろう。でも鼻は我々と同じくらいの高さだ。
受付を済ませてから、説明を聞いた。赤旗とか黄旗とかチェッカーフラッグ
とか、ほとんどF1と同じで、この時点でF1ファンの僕だけが人知れず興奮
していたのだった。ただF1と違うのは、スタートの合図がイタリア国旗である
ことだった。栃木のイタリアたる所以だ。

さて早速カートに乗り込んだ。約一年ぶりの感動。こんなに横幅あったっけ?
フリー走行の時点では雨が降っていなくて、路面も乾いていた。まずは一周
ゆっくりと回ってみる。前回みたいに、10周で終わりじゃないから、余裕を
もって楽しめる。最終区間は全開でいけることに気づいた。

従業員がイタリアの国旗を振ってる。タイムトライアルの開始だ。なんか興奮
しちゃって、飛ばし始めた。うおりゃー。前方に耕平と大樹がいたので、間を
縫うようにして抜いた。こちとらタイムトライアル中だっていうのに。
興奮すると、普段使わない言葉が出てきたりして、大変みっともない。
それに「こちとら」とは言った(思った)ものの、全員タイムトライアル中だ。

でも終わってみると、こちとら効果が出て、僕は一番良いタイムを出した。
それから大樹、恵介、健太郎、耕平の順だ。平均速度は42K/Hだって。
ストレートだと60K/Hくらいいっているのかも。

間髪いれずに、予選ヒートというやつを10周やる。ついに雨がパラパラと降り始めた。
パラパラ雨はそのうちバラバラと。そしてドシャドシャへ。僕は、ビニール製の
ジャンバーを着ていたけれども、あまり効果なし。雨具のズボンさえ持ってきて
いたのに、予選ヒートが始まるまで降っていなかったので、着ていない。
従ってズボンはびちょ濡れ。財布の中までびちょ濡れ。もうえぞ菊のスタンプ10コ
押されたカードまで。(そしてそれ以降の旅で僕はびちょ濡れの札で会計を済ませ
なければならないのだった)それから滑ること。みんながあちこちでくるくる
やってる。なんて思ってたら自分もやる。アイススケート場に来たわけじゃないのに。

予選ヒートでは比較的ミスの少なかった、健太郎がトップでチェッカー。続いて
これまたミスの少なかった耕平が2位。大樹、祐介、恵介と続く。恵介はなんだか
マシンにダメージを負っていた模様。カートを降りると雨は止んでいた。
少し休憩をしてから決勝ヒート20周へ。

イタリア国旗が振られて決勝開始。スタートして1周目からスピン続出。雨は止ん
でいても路面は急には乾かないからだ。水溜りとかもある。スピンした車を
避けて、にんまり順位を上げると、自分がスピンする。スピンしそうになると、
体でわかる。ああ、す、すべるう〜。そういう時は急ブレーキ踏むんじゃなくて、
ゆっくりブレーキ踏みつつ、ハンドル操作で何とかする。と講釈してみたものの
オーバースピードで突っ込んで行く車をどうすることもできないさ。それに
あんまり冷静な判断もできない。間違ってアクセルなんて踏んじゃったりして。
もうブレーキポイント間違えた時点でアウトだ。

でも周回を重ねていくごとに、自分なりのブレーキポイントを把握して、だんだん
と滑らないようになってくる。そしていつのまにかトップに立っていた恵介
の背中が見えたのだった。僕はもうぴったり張り付いて、恵介がスピンするのを
待った。後ろからうりうりしてプレッシャーもかけてみた。彼がコーナーで
膨らんだので、抜けた。やったー。このままミスしなけりゃいいんだ、と思って
いたら、ミスした。4周天下だった。ゴーン。←諸行無常の響き。

いや、まだ諦めまい。ハッキネンだって諦めなかったんじゃないのか?僕は心の
アイドル、ハッキネンのことを思い出す、ようなことはなかったけれど、懸命に
食らいつき、再び恵介と横並びに。横に並んだけど、これ、どうやって抜くのさ?
次のカーブは右で、僕は恵介の左側にいるから、無理じゃん。なんて考えていたら、
スピンしやがった。あーあ終わった。

というわけで、結果は、恵介→祐介→大樹→耕平→健太郎という風に、
相成りました。カートから降りると、無骨な表彰台(キャスターつき)がごろごろ
と出てきまして、一つ500円のシャンパンファイトをした。
そのあと飲んでみると、これがリンゴジュースの味。従業員に
 「これお酒入ってます?」
とこっそり聞くと、彼はいたずらがばれた少年のような顔をして
 「いえ、入ってません」
だって。僕としても別に値段に見合ったものだせコラー、と言いたいわけじゃなか
ったので、悪いこと聞いたなーと思い、
 「いや、車運転するものでちょっと気になったんスよ」
その日は最初から最後まで恵介が運転したのだった。

そして、着替えタイム。パンツの濡れていない者はいなかったので当然だ。

栃木のイタリアは良かった。そんな思いを残しつつ、我々はモデナサーキット
を後にした。そんな我々が次に向かったのはユニクロ。ユニクロファンの
我々としてはモチのロン行為だ。「ユニクロ佐野店」に行くことは全国のユニクロ
ファンの夢だ。聖地といってもいい。決して洋服使い果たしちゃったよ地獄に
陥ったわけではない。そういう風に最寄ユニクロを探すなどという行為は、
我々ユニクロファンからしたら、愚の骨頂。

僕は500円のサンダルを買った。健太郎も耕平も同じものを買っていた。
「あれ、健太郎や耕平、偶然にも同じサンダルだねえ」
というと、
「本当だ。僕らとしても示し合わせたわけじゃないのに、なぜこうも3人、
同じサンダルを買ってしまったのだらふか?」
と、耕平。そこへ健太郎が、
「きっと我々は、同じ趣味の持ち主なんでありませふ」
といい、わっはっは。
我々ユニクロファンに限っては、履物が濡れていて困っている時であっても、
決していい加減に安いサンダルを選んだりしない。しかも千円が値引きされて
500円になっているし、その場しのぎとしてちょうどいい、なんて動機は
ありえない。この値引きはされているけれども、素晴らしくユニクロらしい
無個性なサンダルに5分間熱視線を送った後に購入を決意するのだ。

さて、ユニクロでの熱狂的な買い物を終えると、佐野ラーメン食って、宿に
向かったのだった。

(怒涛の草食動物篇へと続く)

(2003/8/18)


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