| 「新宿南口にて」 新宿の南口と言ったら何を思い浮かべるであろうか? 高島屋、アルマーニの看板(今はミツビシモータース)、ルミネ などいろいろある。もうひとつある。手相の勉強だ。あの辺に 手相の勉強をしている人たちが沢山居るのだ。なぜか夜に。 この間、この「手相を勉強している人」に手相を勉強させて あげた。つまり、手を貸してあげた。これで2度目なのだが、 頼まれるのはもう何度も経験している。今回また見せてあげる 気になったのは、この「手相勉強人」(仮にA氏と呼ぶ)が、私を 呼び止める直前にクルリと一回転したからだ。A氏にとっては これは人を呼び止めるために気合を入れなおす儀式なのだろうか? とにかくそんなA氏のクルリに見事に引っかかった私であった。 終始にこやかなA氏(あ、A氏は男性です)。しかし手相を見てもらっ ていると言うより、個人的な質問が多い。 「大学生ですか?」 「どこに住んでいるのですか?」 しまいには名前まで聞いてきた。 まあいくら正直な私でもこの人たちが本当にただ純粋に手相を勉強し ているだけだとは思っていない。しかしここは無拓を装って(いえ普段は 本当に無拓なんだけどね)、なんで名前まで教えなきゃならんのだと聞 いてみた。そしたら、 「お兄さんのことお兄さんって呼ぶんじゃなくて、名前で呼びたいのです」 うわあ気持ち悪い。まあでも面白いので名前を教えてあげた。 で、肝心の手相の見方がいいかげんなことこの上ない。 A氏「あなたは芸術方面に関心がありますね」 私「それはどこに出ているのですか?」 A氏「うーんとこの感情線が切れてますよね。これがそう表しているんです」 こんなの誰だって切れてるんじゃないの?そう思ったが、そんな言葉は 肺の底に沈めて、なるほどーとうなずく。 そうしていると、第三者が現る。 「ちょっとすいません、これはT一教会の勧誘ですから相手にしない方が いいですよ」 ずばりと言ってきた切れ長の目を持つ青年。彼はそういい残すと早々と去 っていった。これまた間に受けるのはどうかと思うが、何かの勧誘だと前々 から思っていた私は、ああT一教会なのかと納得。すかさずそうなのですか? とA氏に問うてみた。A氏は狼狽したので面白くなってきた。しかしここで 問い詰めて、逆切れされると困るので、まあ勧誘されなければいいですよ と言い、妙に大人ぶった態度を示してあげた。 そして続く「手相の勉強」。今度はA氏の仲間(女性。B氏と呼ぶ)が現れた。 右手には怪しい紙袋をぶら下げている。 うわーパターンだよ。2対1で言いくるめるのは。私は負けていられないと思い、 B氏にも「手相の勉強」をさせてあげることにした。終始にこやかで気持ち悪い 雰囲気である。やっぱりB氏も手相そっちのけで私のことについて聞いてきた。 それはもううんざりなので、A氏に全て言った旨を告げる。そしてA氏からB氏へ プルフィールの伝授。B氏の方がA氏より上手な感じがした。言ってみればB氏 はA氏の上司と言う感じだ。そのB氏もまた私の感情線に着目した。ところが B氏の指差す感情線はA氏とは違う場所の線なのである。うひー、君達最高! しかし私は大いにうなずき、言われたことに対しては、あー当たってますとか それは当たってませんねとか言って盛り上げた。 さてこれからどうやって私をT一教会か何かに勧誘するのだろう?それだけが 見ものだ。変に会話を盛り上げる私に相手はやりにくい様子だ。それとも どうだやりにくいだろう、と私が思っているだけなのか? そして次に恐らくは一番の勧誘ポイントである質問が飛んできた。 「今のあなたは100点満点で言えば、何点あげられますか?」 ここで間違っても低い数字をいってはいけない。私は自分に95点あげた。 そう告げると驚かれる。失礼な!お前らに私は一体何点に見えているのだ。 彼らが驚くのは困っていることの裏返しだ。高得点だと付け入る隙がなくて、 驚くというリアクションしか取れないのだ。それにしたって失礼だお前ら。 でもやっぱり残りの5点をついてくる。なにが足りないのですか?と。 私は自分の車が欲しいからそれが足りないのだと極めて物質的な答えをして みる。スウェーバックでパンチをかわし、ジャブ放った。 「じゃあ精神的には何点ですか?」 またパンチが飛んできた。 「えっ、さっきの95点に精神面も含めて言ったので、精神面だけでいえば100点 と言うことになります」 私はまだ未開発だった技、「ヒャクテン」をとっさに出した。これがクリーンヒット した。もう彼らはすごいですねえという他ない。あんまり考えてませんから、 わっはっは。終始和やかな雰囲気でもそろそろ引き時だ。彼らはルールを 無視してどんな凶器を持ち出すか分かったものじゃない。そもそもいきなり 個人情報を聞いてくる彼らは、その時点で十分にルールを逸脱しているのだし。 私は半ば強引にその場を去った。寒くないのに寒いからという理由をつけて。 ずっと外に居る彼らのほうが寒かろうに。 それにしても私は勧誘されやすい。中学生の頃は八王子駅前で頭に手を かざされ「光を感じましたか」と言われたし、大学入学手続きに行った時は 付きまとわれて怪しいセミナーに連れて行かれそうになった。いまよりずっと うぶだったがなんとか切り抜けた。その怪しいセミナーには建物に入る直前に 渋った。すると「生きると言うことに興味があるなら是非きてください」ときた。 仕方なく私は「生きることに興味ありません」といったら、軽蔑な眼で見られ つつ諦められた。 それに比べると、今回は「ヒャクテン」で切り抜けたのである。自分も成長した ものだなあ。それとも性格がゆがんだのであろうか? 参考までに (2003/2/24) 読み物 |