「旅行8月9→10日 ―怒涛の草食動物篇―」

この文章は筆者の視点から書かれているため、
那須や塩原が偏って見えるかもしれません。
防ぎようがありませんのでご了承ください。

車の中で寝ていた。
気が付くと、車は山の中を走っている。
左手には、雨で増水した川が流れている。
あまりキレイとはいえない建物が視界に入ってきた。どうやら旅館らしい。
車はその建物の駐車場へと滑り込んでいった。(はっ、ヤバイ。ここか)
僕は焦った。なぜなら僕がこの旅館を予約したからだ。外見から見て、
あまりいい予感がしない。
「むむ、なんだかとても素敵そうな旅館だね」
僕は苦し紛れに語気を強めた。

予感は当たった。いろんなところで当たった。エレベーターで上に
上がろうとしたら、食事を積んだワゴンが占領していて、客である我々が
乗れない。備え付けの娯楽施設はもっぱらカラオケ(そして他の宿泊客が
嬉々として歌ってる)。従業員、多分2〜3人。もう女将の三つ指とかありえない。
そもそも女将がどこにもいない。極めつけは、ムササビ。出るらしい。
これは部屋に貼ってあった注意書き。
「天井裏にムササビが侵入して
 物音がすることがあります。
 防ぎようがありませんのでご了承ください。」
すばらしい文章。彼らの旅館経営理念が最後の一文に凝縮されている。
それにしてもどうか本当にムササビであって欲しいものだ。

食事は20畳くらいの部屋でとった。左右の仕切りをはずすと大宴会場になる
ようだ。なんか壁を隔てた向こうの大家族がうるさい。子供がうるさい。
声から判断すると子供は三人らしい。末っ子のみ女の子である模様。
我々は見えない隣の家族像を勝手に描き出した。そういうのは大樹が得意だ。
全員で想像したところによると、まずパパとママは元ヤンキーである。
若くして結婚したから、子供がもう3人だ。下手したら、僕らと同い歳か、
それ以下である。だとしたら、我々と隣のパパ、どっちが幸せといえる
んだろう?どちらかの両親もつれてきて、親孝行兼家族サービスしている。

突然、子供が「贈る言葉」を歌いだした。なんだろう。彼らのじいちゃん
に対する辛辣なジョークだろうか?大樹によると、パパが酔ったときによく
歌う歌が「贈る言葉」なのだそうだ。それを子供が覚えちゃって、なんて
言ってたら、家族は備え付けのカラオケマシンを起動したらしい。
「贈る言葉」のイントロメロディが聞こえてきた。そして始まったカラオケ
大会。きっとこの家族は年中卒業式だ。涙かれるまで泣くほうがいい。
今度はおじいちゃんが何らかの演歌を歌いだした。負けじとママはZARD
の「負けないで」を歌う。次はパパの番だ。そう、ママにプロポーズしたときの
歌、チャゲ&飛鳥の「SAY YES」だ。ママはあのときを思い出し、ウットリと
している、のが壁を通して伝わってきた。とはいえ、壁はだいぶ脚色して
僕らにモノをみせているんじゃないか?

温泉は普通に良かった。でもおかしい。貸切風呂なのに男湯と女湯に分かれて
いるのはどう考えたっておかしい。僕らが行ったときは男湯が貸切られていた。
仕方なくわれわれ男達は、女湯を借切って入ったのだった。男5人が入ってる
風呂が女湯。絶対におかしい。男湯から女の声が聞こえてきた。これもおかしい。

翌日は台風一過でよく晴れた。暑い。昨日からハンガーにかけていたズボンは大方
乾いていたが、とどめに天日干しの刑にすることにした。砂もついていたので、
ばたばたとはたく。するとポケットから何かがピューっと飛び出して落ちていった。
鍵だ。自宅とバイク鍵のついたキーホルダーだった。下は川だ。増水は昨日より
治まっているとはいえ、結構でかい川だ。こうして僕の鍵は自然へと帰って行った
のだった。降りて探したけど見つからなかったよ。

宿をチェックアウト(横文字が似合わない宿だが)して、まずはコンビニに向かった。
ガイドブック立ち読みしてどこに行くか決めるのである。僕がお菓子売り場をうろ
ついてる間に目的地は那須サファリパークに決まったらしい。
今日も運転手は恵介だ。

目的地に向かってドライブしていると、だんだん我々が一晩過ごした塩原よりも
森がさわやかになって来た。なんというか、ちょっと軽井沢っぽくなってきたのだ。
愛子様でも出没しそうだ。そして観光客目当ての娯楽施設の看板がひっきりなしに
我々を誘惑する。我々は那須サファリパークの看板を見つけては、それに従った。
しかし、問題が起きた。ある地点から、那須サファリパークの看板が消え去り、
代わりに「那須どうぶつ王国」の看板に従っていたのである。きつねにつままれ
ながら、那須どうぶつ王国の入り口まできた。係員は当然のように我々を導き入れる。
駐車場の手前まで来て、
「やっぱり俺たちはここに用がない」
ということになって、Uターン。この旅、3回目ぐらいのUターンである。恵介も
Uターンが上手になるはずだ。

無事那須サファリパークに着いた。入口でいきなり係りのおっさんに脅される。
「車でもそのまま入れるけど、傷付いても責任取れませんよ」
一瞬はバスに傾きかけたが、一人1000円でバカバカしいので車で突入。

ここの目玉である白ライオン。檻に入っている。汚れて黒い。
トラ。寝てる。
肉食動物、おわり。

草食動物、開始。いきなり単独ダチョオオー。でかい。近づいてくる。でかい。
餌、差し出す。
「バリバリバリ」
食う食う。もっとくれと、ダチョウが車に首を突っ込んできた。
「ねとー」
ダチョウが口から汁をたらした。ダチョウ汁が耕平にかかってしまった!
僕が興奮して、彼をまたいで越しにダチョウに餌を
あげたせいだ。後に耕平は、
「僕だけダチョウ汁浴びれたよ。これでみんなと同じ値段でいいの?」
と言っていた。ダチョウ汁をあびると元気が出るのかもしれない。

キリンだー。首長ー。くびながー。
餌、差し出す。
「ゴリゴリゴリ」
食う食う。

しかーしかー。ろばーろばー。
だんだんごちゃ混ぜになってきた。こいつら餌もらってないのか?
すごい近距離まで迫ってくる。ろばが車に首を突っ込みそうになったので、
急いで窓を閉める。
「べろーん」
車の窓が対角線上に舐められた。窓が溶けそうな唾液が残る。くせえ。

那須サファリパーク。あんまりアフリカっぽくなかったけど、結構満足できた。
人間と向き合うことに疲れた人は、是非ここに来ると良いだろう。
草食動物と真っ向から向き合える。そしてまた、人間と向き合うことが
できるようになるだろう。

その後は、銀河高原ビール工場に行ったり、そばを食べたり。
で、帰った。帰りに大樹がやたらとモノを食べていたのが印象的だった。
●旅行の様子byうろ君●
(2003/8/23)


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