Polyhymnia Room
ポリュヒュムニアー《賛歌をつかさどる女神》
セル画についてお勉強しませう
●セル画とは
元来は、アニメ映画のフィルムの制作用に使用された透明なセルロース(セルロイド)に描かれた絵のこと。
1920〜1940年代には、ニトロセルロースが使用され、1950年以降は、収縮や変色のしにくいアチル・セルロース
(アセテート)が使用されていた。セル画は、背景画の上に置かれて写真に撮られ、これが映画のフィルムの
1コマとなる。通常1枚のセル画で同じフィルムが2コマ作られ、1秒間に24コマのフィルムが映写される。
従って1秒間で12枚、1時間で43,000枚のセル画が必要となる。
こうした伝統的なフィルム製作技法は、1989年の「リトルマーメイド」まで使用されたが、
翌年の「ビアンカの大冒険;ゴールデンイーグルを追え」以降は、映画のフィルム制作に実際に使用される
「セル画」(プロダクション・セル)は作られなくなった。
●ディズニー・セル画の歩み
フィルム制作用として描かれたセル画は、今日のように美術品としては評価されず、従って大半は
保存されることもなく廃棄されていた。1937年にウォルト・ディズニーの最初の長編アニメ映画「白雪姫」が
発表されたとき、サンフランシスコの美術画廊のオーナーのグゼリエ・クオバージュ氏は、セル画の
美術品としての価値に着目した。翌年、クオバージュ氏はディズニースタジオと独占販売契約を結び、
その後8年間に、長編映画の5作及び短編13作のセル画15,000〜20,000点をクオバージュ特性の
マット・背景画付きで、画廊及び直接収集家に販売した。
やがてクオバ−ジュ氏も芸術界から退き、第二次世界大戦中は、材料の配給制及び不足が原因で、
ディズニースタジオのアニメ映画の制作も困難な時代だった。
1955年のディズニーランドの開場後は、セル画は来場者のおみやげとして売られていた時期もあった。
1970年代に入ると、セル画は美術品としての評価を得るようになり、ザ・ウォルトディズニー・カンパニーの
子会社の「ウォルト・ディズニー・アート・クラシックス」が、かつての映画の名場面を厳選のうえ、現定数で
制作し販売するようになり、今日に至っている。
●セル画及び関連作品の種類
- (1)プロダクション・セル(Production Cel) 〜100万円
- フィルム制作に実際に使用されたもの。手書き(Hand
Painted)であり、全く同一なものはないため、
稀少価値が高い。1950年代終わりまでは輪郭も手でかかれて(Hand
Inked)いたが、その後
ゼログラフィック工法で輪郭は印刷(Xerographic-Line)されるようになった。
1990年「ビアンカの大冒険;ゴールデンイーグルを追え」以降は、プロダクションセルは作られずに
コンピューター・グラフィックに代替されるようになった。ただし、TVアニメ(アラジン、くまのプーさん他)では、
現在でもセル画は制作されている。1時間の映画のフィルム制作には、約43,200枚ものセル画が
作り出されるが、1970年以前のものは大半が廃棄されており、また現存しているものでも、
画面の真ん中でキャラクターが大きく、いい表情・ポーズをしているものはまれである。
- (2)ビンテッジ・セル(Vintage Cel) 100万円〜500万円
- プロダクション・セルのうち、1970年以前に制作されたもの。きわめて稀少価値が高い。
- (3)オリジナル・セル(Original Cel)
- フィルム制作に使用されるセル画(プロダクション・セル)が作られなくなった1990年の「ビアンカの大冒険;
ゴールデンイーグルを追え」以降、ディズニー・アート・クラシックス社が名場面を厳選のうえ、
1場面につき1枚のみ作ったセル画。フィルム制作に使用された背景画、上敷、下敷セルとセットで
サザビーズ(米国のオークションの会社)を通じ販売された。
- (4)リミティッド・エディションセル(Limited
Edition Cel) 45万円〜50万円
- 映画の名場面を厳選し、限定数(275〜500枚)で発行したもの。手で着色(Hand Painted)されている。
輪郭まで手書きのもの(Hand Inked)と、輪郭はゼログラフィックのもの(Xerographic-Line)がある。
- (5)セリセル(Sericel) 3万円〜5万円
- 映画の名場面を厳選し、限定数(2,500〜7,500枚)で発行したもの。輪郭、着色を手書きでしたものを
シルクスクリーン技法で印刷してある。
- (6)ドローイング(Drawing) 50万円〜
- 鉛筆で描かれたデッサンのこと。これがセル画上にトレースされ、輪郭が描かれる。
- (7)背景画(Background)
- フィルム制作に使用されたもの(Original Production
Background)は、通常は水彩画である。
1枚の背景画上で何十枚ものセル画が一枚一枚置かれてフィルムが制作されるため、
セル画の数に比較して背景画はきわめて少なく、稀少価値が高い。
1989年以降、フィルム制作にセル画は使用されなくなったが、背景画は現在も描かれ、使用されている。
- (8)マケット(Maquette)
- 元来は、キャラクターの立体的イメージをよりリアルに把握できるようアニメーターに見本として配った
石膏像。複製が限定数(500点)で販売されたが、現在これは制作されていない。
- (9)コミック・ストリップ・アート(Comic Strip
Art) 25万〜
- セル画とは関係ないが、新聞に掲載された漫画の原画。