はじめに
平成14年10月、昭和大学藤が丘病院泌尿器科において、クッシング症候群の女性患者が腹腔鏡左副摘除手術を受けた後、4週間後に死亡するに至った。同病院は、平成17年5月、この事案における死亡に至る事実の経過、死亡の原因、原因発見遅延の背景事情などの真相を解明することにより、当時の同病院の問題状況を明らかにし、今後の医療の安全確保と医療水準の向上に寄与する提言を行うことを目的とする外部事故調査委員会を設置した。この調査報告書は、この調査委員会における調査審議の結果を総括したものである。
この医療事故は、技能・知見ともに不十分な執刀医が、医長・教授らの指導管理のないまま手術を行い、術中に膵臓尾部を損傷したことが、患者死亡の1年余り後に至って初めて解明されたという特異な経過を辿ったものである。その間、術後管理の不徹底、手術ビデオ・病理組織・CT映像などによる点検・分析の不徹底などのために過誤を発見できず、患者に対する適切な治療が行われないまま推移し、患者を死亡させるに至ったのであって、患者側にとって思いもかけない原因による痛ましい死亡事故であった。
この事故を究明する過程においては、教授を医長とする医局体制が持つ問題性と、病院全体として患者の安全確保を図る意識及び責任体制の欠如という実態が浮き彫りになった。高度の医療水準の確保とそのための医師の養成指導を図るという目的を持つ大学病院において、このような医療過誤が発生したことはまことに遺憾なことであった。
この調査報告曽は、当調査委員会における調査審議に基づき、解明し得た客観的な事実を提示し、このような事故を二度と起こすことのないよう学校法人及び大学病院において採られるべき具体的な防止方策を提言するものである。
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