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1. 重症悪阻によるウェルニッケ脳症
@ 当事者
- 原告 S.38 (1963) 11. 生まれ、S.63
(1988) 11. 結婚、以後主婦。
- 被告 国(都内の国立病院)
A 事案の概要
90.5 妊娠6週の診断。
6.2 悪阻がひどく入院。
6.28 絶食。以後吐気・嘔吐・流涎・全身倦怠・不眠が続く。
7.27 高カロリー輸液(IVH)開始。めまい出現。
8.4 妊娠中絶施行。
現在の状態は、多発脳梗塞、四肢麻痺、構音障害など
B キーワード
- ウェルニッケ脳症
- ビタミンB1不足から四肢失調、意識障害に陥る。
- アルコール中毒が著名で、悪阻・腫瘍などにも発生
- ビタミンB1投与で軽快する。
- 重症悪阻
- 高カロリー輸液
C 訴訟の結果
97.2.18 和解成立。7365万円、将来の付添費用について別途覚書。
D 群馬事件高裁判決 (96.3.21)
- 1987年10月30日重症悪阻で入院、12月初旬に発症したケース
- 「妊娠悪阻の症状が悪化し脳障害が生じるとともに、これに伴いビタミンB1の欠乏、栄養状態の不良によりウェルニッケ脳症が併発することは昭和62年10月当時の医療水準として既に成立していた」
2. 胃全滴手術後のウェルニッケ脳症
@ 当事者
- 原告 S.32 (1957) 11. 生まれ、男性、事件当時福祉施設に勤務
- 被告 労働福祉事業団(仙台市内の総合病院)
A 事案の概要
92.7.14 悪性リンパ腫による胃・脾臓全摘手術
15〜 ビタミンB1を含まない点滴、ビタミンB1を含まない高カロリ
ー輸液(IVH)、流動食や三分粥、五分粥、ビタミンB1を含まな
い高カロリー輸液
8.10〜 目の異常、耳の異常、物忘れや朦朧、意識障害や脱力感
21 朦朧としたり錯乱したり
25 東北大学病院に転院
現在の状態は、記憶障害(2時間位しか記憶を維持できない)、運動障害など
B 仙台地裁判決
- (予見義務違反)
92年当時ビタミンB1を投与せずに高カロリー輸液を施行すれば ウェルニッケ脳症を発症させることは臨床医学上の知見として確立していた。
一転してビタミン剤を添加しないのであれば、弊害について調査を尽くす義務がある。
- (回避義務違反)
厚生省が保険点数の扱いを変えたことは、治療方法に関する医師の判断を拘束するものではないから、それを免責の理由とはできない。
しかも、平成四年通達のもとでも、本件ではビタミン添加を保険点数に算定できた。
- (損害)
労働能力100%喪失、近親者介護の必要性を認めて、総額1億3300万円余りの損害を認定。
3. ウェルニッケ脳症に関する医学情報
- 1982.12(外科と代謝・栄養)
「今日では、術前術後の栄養管理としてIVHやEDが多く利用されているが、その際thiamine補給の重要性が痛感された」
- 1985.10.(産科と婦人科)
「今回の症例は一ヶ月以上も入院を要する悪阻には必ずビタミンB製剤を投与すべきであると痛感させられた。」
- 1986.3. (内科)
「Wernicke脳症は見逃されている可能性が強い。」
「常に本症の可能性に留意することが大切である」
- 1988.3 (日母医報)
「したがって、今後は妊娠悪阻の治療に際しては、(中略)適切な量のビタミン類の供給を考慮すべきである」
4. 両事件を通じて思うこと
@ せっかくの医療情報や警告が臨床に生かされない
- 忙しい、情報が多すぎる
- 無論これだけでは免責にならない
- 研鑽義務
- 最判S63・1・19 伊藤正巳補足意見
- 福岡地判H6・12・26判時1552号
A 保険の扱いに過剰に反応するのか
B 診療を変えるときに、患者への悪影響に思いが至らないのか。
以上
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