座の連句 ーーー仲間と一座してする連句を紹介します。(ころも連句会の作品から)

                                           矢崎藍の連句わーるどtopへ


◆ころも連句会1978年発足。蕉風伊勢派宗匠猫簑庵東明雅先生(信州大学名誉教授)の御指導を受け、愛知県豊田市を拠点に連句を巻いてきました。例会毎月第三火曜日午後 於 桜花学園大学・代表 矢崎藍。会長 稲垣渥子。規制の厳しい伝統連句にきたえられつつ、ビビッドに、にとりくむ作品を巻きたいとねがっています。


◆2003年10月20日東明雅先生が逝去されました。ご冥福を祈り、先生のお教えをしっかりと胸に抱きながら、これからを歩んでいきたいと思います。例会作品を各捌きに添削してくださった明るいブルーのインクの御筆跡のお手紙。お優しい笑顔とともに私たちの宝物です。

明雅先生追悼歌仙 
    「時雨るるや」の巻              捌 藍             

発句 時雨るるや教えのペンのライトブルー 初冬
 脇  はらりと散りし庭の山茶花 ときよ 初冬
第三 交差点鼓笛の列の過ぎゆきて 渥子
 四  ママのポッケにいつも飴玉 慶子
やっとかめ待ちくたびれし友の月 芙美 三秋
 六  水車ことこと廻るやや寒 治子 晩秋
ウ一 新藁を敷きし木箱に子兎を 芳梅 晩秋
 二  ただ優しさに飢えていただけ  慶
 三 息とめて唇うける風のなか 聖子
 四  恋は秘かに恋は一途に   と
 五 ミステリードラマ見るのが日課なり  好
  六  タランチュラの眼ひかる新月  敏女 三夏
砂遙か独裁者棲む砂の城  節子
 任せられぬと論客は酔い 美代子
呼んでみるいまは不在の弥勒佛  然
 むらさきいろに染まる山の端 元子
十一 三代の家業を譲り花の旅  梅 晩春
十二  吾平餅売る旗のうららか  藍 三春
ナオ一 鯛網の掛け声太く響かせて  治 三春
 背なの赤子のよく眠ること  節
ささやかな幸は半額シールから  聖
 政治家どもの付和と雷同  節
とき至りぽんと宇宙へ跳ねた鞠  然
 外反母趾の疼く街角  渥
お目もじのかなわぬ君と知りながら 良重
 光源氏の冬ざれの嘘  と 三冬
あの猫の二重生活伸びをして  好
 健康茶淹れ持ち歩くらん  美
十一 明月のおもかげやさし父の墓碑  慶 三秋
十二  俳諧大道紅葉絢爛  藍 晩秋
ナウ一 お若いのなかなかやるのう文化祭  と 三秋
 二  異常気象のつづくこのごろ  渥
 三 エーゲ海黒衣の女白い壁  元
 四  BGMに春の夢見る  芙 三春
 花 花の宴お鬚の膝に柳樽    敏 晩春
挙句  ついてはなれて遊ぶ蝶々   守枝 三春

平成十五年十一月十八日首尾  於 豊田市「野島」
連衆: 柿本ときよ 稲垣渥子 由川慶子 間瀬芙美 加藤治子 小野芳梅 
    八木聖子 小園好 繁原敏女 長坂節子 黒木美代子 佐久間然
    山口元子 伊藤良重 谷本守枝
*挙げ句で、先生のお膝元でついてはなれて遊ぶ蝶々は、私たちのねがい。付いて離れてひらひらと自由に連句を遊ぶ境地になりたいものです。


   
☆2002年2月9日、10日と三河湾を望む三ヶ根グリーンホテルで藍捌き、連衆12名でころも連句会としては初めての百韻を巻きました。9日午後4時半にスタートし、途中夕食をはさんで4時間35分、翌日朝9時に始めて1時まで4時間、計8時間35分かかりました。☆いい捌きといい連衆がそろうということはなんと素敵なことでしょう。作品の善し悪し?それは読んでくださった方のご判断にお任せです。巻き上げて、どっと疲れが出ましたが、でも、楽しい初体験でした。(由川慶子)


百韻 「青疾風」の巻     捌  藍 

1 初折 表 発句 寒明けの疾風や青し三ケ根山  藍 初春

☆一泊二日で百韻!無理だろうなあと思いました。いつもの例会のペースだったら二日かけてもせいぜい30句くらい。でもまあ、いいや。ごちそうと、なんてったって温泉があるもんね!気楽な気持ちで参加した私。考えが甘かった!ホテルに着くなり、「さあ、始めるよー!」と藍さん。え〜?もう始めるの?温泉はいってからじゃだめ?あ〜あ……  三河湾を一望するすてきな部屋に机を並べて、「青疾風の巻」のはじまりはじまり。いやー、皆さん、句を出すのが早いこと。何かが乗り移ったみたいでした。(笑)巻きあがっちゃったんですよね、、8時間半で、百韻!うそみたい。 ごちそうもしっかり食べたし、温泉も二度入った。できあがった百韻はすばらしい出来。よかったよかった。お世話くださった佐久間さん、それから、山道を散策しながら三ヶ根の植物について教えてくださった渥美さん、楽しい時間をありがとうございました。いただいてきたハンノキの小枝、さきっぽの芽がふくらんできましたよ。(八木聖子)




☆一月に皆で食事している時、「百韻を巻こう」という話がもちあがりました、その話にのった全員、何処で何時、手帳を取り出しこの日、あの日、藍さんのいる日、もう盛り上がること、待ってましたとはこういう事なのでしょう。
 当日慶子さんの第一声は「おはよう」じゃあなく、「誰もキャンセル無しよ」と言う喜びの笑顔でした。お天気もよし、さあいくぞーは、いいけど、着いたとたんテーブルセッティング、短冊、――えっもう、「百韻をなんと心得る、昼夜問わずじゃ」と言ったかどうかは別としても、すぐに連衆の句は出るわ出るわ、藍さんの名捌きとはこの事か、現実を見せられた気持ちでした、お風呂、食事、おしゃべりに花が咲いても、百韻巻き上げる、という気持ちは皆同じ、思ったより早く巻き上げた藍さん、連衆の皆さんにただただ敬意のみです。、帰りに駅までのバスの中、隣に座った敏女姉が、「こんな楽しい百韻はもっとやりましょう」と心強い言葉に嬉しくなりました。最後まで見送ってくださった佐久間さん、有難うございました。佐久間さんの合掌の姿が脳裏に。私も合掌で。(間瀬芙美)

☆『旅行にいける、嬉しいな、HA,HA,HA,・・・』という気持ちで 百韻を巻く会に参加したのですが、十時間かかると聞いてびっくり。でも藍さんの名捌きのおかげで八時間半でまいてしまったんですよ。
☆翌日は渥美さんのご案内で、鏡のように凪いだ三河湾 を眺め、あれが神島、あれが答志島と教えていただき、その後山路をたどり春浅き三ヶ根を楽しみました。こんな楽しい時間が持てたのも佐久間さん、渥美さんのお蔭と感謝しています。(長坂節子)

☆ ころも連句会の仲間で百韻が巻けてとてもうれしいです。歌仙 でも源心でも、百韻でも、巻くこころはおなじ。付けて転じて川のようにときにさらさら流れ、ときにぐんぐん流れ、月を七つ見て、花を四つ見て、序破急にのり充実した旅でした。私の感想はね、いつもは採られずに葬られる句も百韻なら、かなり生きるーーつまりみんなけっこう言いたいこといっちゃえたんじゃないかなーーということです。実は「巻く前にドリンク剤1本飲んで捌く」と某先輩にいわれてたのですけど不要でした。どんどん句が出るなら捌きは楽。そして私の気に入りの句を下さるのがころも連句会の仲間ですもの。つぎに歌仙を巻くときは物足りなく短いと感じるかもしれませんね



☆ 翌日は渥美守久先生(全国愛鳥教育研究会)のご案内で三ヶ根山の早春の散策。「冬の木はいいなあ。冬は枝をとおして海が見えるでしょう」とおっしゃった。ああ、木の芽も海を見てますね。渥美先生の別荘のお庭の中央には薄墨桜が春を待っていました。紅梅が艶やかに蝋梅は金色に輝いて。宝物を見せていただきました。鳥の糞が運んでいる草木の種。ちいさい宝石の粒のようです。だって、命なのですものね。ありがとうございました。
☆佐久間さんほんとうにお世話様でした。ことに渥美先生にお逢いできたこと。自然に触れる。すてきな人に逢う。まさに連句の最高の価値ですから。
☆以下百韻をご報告します。この号をお送りしたら、壹さんが「いやあ、ようやりましたなあ。百韻とは。これはまたなかなかの作品と拝見しました」とあの太いゆっくりした声でほめてくださるはずでした。壹さん、私はまだ電話を待っています。
(藍)
2    脇  海のきららに梅匂う里 直子 初春
3    第三 入学式列をはみ出る子供いて 渥子 仲春
4    四  タッタカタッタカ楽隊がゆく 元子
5    五 きんつばの甘くないのが売れ筋に 慶子
6    六  男点前のお薄いただく 節子
7 月 七 月もよしボス猫さまと目が合った 三秋
8    八  どんぐりころりゆれる吊り橋  節 晩秋
9 裏  一 塩嘗めて新走り呑む漁師村 守枝 晩秋
10    二  減反なれど稲田豊かに  慶 晩秋
11    三 兄嫁の忍び笑いのふっと洩れ 聖子
12    四  行灯消して罪の暗闇  元
13    五 法林山法主は実は小説家  枝
14    六  積み上げてある阿弥陀経本 良重
15    七 引越も泥縄式の外務省 芙美
16    八  裏情報をそっと耳うち  聖
17 月  九 月仰ぎ薮蚊の痒みたえがたく 和宏 三夏
18    十  網戸の破れガムテープ貼る  重 三夏
19   十一 ほろ苦い決断をする五十代  節
20   十二  財産分与よきにはからえ  芙
21 花 十三 返り花貝の形の音楽堂 敏女 初冬
22   十四  冬の虹立つ川沿いの町 治子 三冬
23 二の折 表  一 新開地少年ギアをトップにす  節
24    二  メダルの行方話題沸騰  重
25    三 大いなる未来望まず鳶の空  女
26    四  オーイと呼べば妻が振り向く  芙
27    五 なれそめは本屋の棚が高過ぎて  重
28    六  うす紫の傘のしたたり  聖
29    七 シェルブールモザイク模様の石畳  元
30    八  入道雲のビルに湧き立つ  渥 三夏
31    九 秀才の面で飼ってる熱帯魚  芙 三夏
32    十  ロンド弾いてる午後の倦怠  直
33   十一 不幸せミスティローズ塗り重ね  聖
34   十二  ちょっと噛った林檎さしだす  直 晩秋
35  十三 逃亡のためのトラック薄原  慶 三秋
36 月 十四  ブルカを脱いだアフガンの月  渥 三秋
37 裏  一 自転する地球夜景は輝いて  藍
38    二  言いかけていた言葉のみこむ
39    三 孫来るも帰るもうれし疲れ果て  枝
40    四  テールシチューが鍋にとろとろ  聖
41    五 社を挙げて偽装シールを貼りました  治
42    六  泥水いつもかぶるのは秘書  聖
43    七 陰陽師出てきておくれ伏魔殿  直
44    八  チューブのわさびやけに効くこと  枝
45 月 九 この恋の他はいらない冬の月  聖 初冬
46   十  初めてひいた口紅のいろ  重
47   十一 黒猫がさらっていった嘘ひとつ  節
48   十二  呆けた鶏やたら鳴き出す  女
49 花十三 花三分酔が七分の花の下  枝 晩春
50   十四  にじり口には淡い春の日  元 三春
51 三の折 表  一 碧い眼の陶匠のどか小京都  節 三春
52    二  広告とりにミニコミ紙来る  慶
53    三 値引きなどできない俺は創業者  同
54    四  秒読みとなる日本沈没  渥
55    五 たち悪き夢にあたりて獏寝込み  宏
56    六  不実なひとに魅せられてゆく  聖
57    七 蛍の夜手首激しく掴まれし  節 仲夏
58    八  六条院の姫君の汗  藍 三夏
59    九 弾く前に鳴りはじめてる筝の琴  慶
60    十  時のあわいに砂のさらさら  聖
61   十一 不可能の文字なき辞書を探すらん  直
62   十二  防災の日の御飯缶詰  渥 初秋
63 月 十三 銭湯で垢を落として帰る月  宏 三秋
64   十四  路地の隅っこ残菊の鉢  直 晩秋
65 裏  一 清貧を貫き通し友の逝く  渥
66    二  追い出しきれぬ身のうちの鬼  節
67    三 北風に押されて道を急ぎたり  枝 三冬
68    四  空にオリオン凍てし平原  元 晩冬
69    五 女ありブレスレットは枷に似て  聖
70    六  黒き肌へに血潮とくとく  元
71    七 古時計ボーンとひとつ響きける  同
72    八  戒厳令の店のシャッター  聖
73    九 印度洋巨大空母に波高し  節
74   十  近く遠くに鴎群れ飛ぶ  元
75 月 十一 朧月父似の嬰の長睫毛  節 三春
76   十二  雛人形を飾るお座敷  芙 仲春
77 花 十三 退院の径は明るき花盛り  女 晩春
78   十四  魔法の馬車のことことと過ぎ
79 名残
の折
表  一 カレッジの正門前の砂絵描  慶 初春
80    二  予報外れて雨が降り出す  女
81    三 黙のまま朝の煙草をもみ消しぬ  渥
82    四  新監督が向かう球場  慶
83    五 同級会なれば呼び捨て許されよ  枝
84    六  ピーマン嫌いいまだマザコン  節 晩秋
85 月  七 十三夜恋のおかげで痩せまして  渥 晩秋
86    八  霧の流れに溶けそうなキス  直 三秋
87    九 顔文字がにっこり笑っているメール  藍
88    十  通勤電車長すぎる脚  同
89   十一 沖縄は許していないことがある
90   十二  ハイビスカスは燃える火の色
91  十三 掌の空蝉すこし動くごと  枝 晩夏
92   十四  孤独を知りし雑踏の中  藍
93 裏  一 ああ昭和手塚治虫も遠くなり  元
94    二  無駄な電灯消し歩く癖  渥
95    三 雪催い架線工事の出稼ぎに  慶 晩冬
96    四  ちょっと気取ってブルマン珈琲  芙
97    五 逃げ出した大イグアナの大あくび  渥
98    六  野党与党と無党派層と  元
99 花  七 転生の果てに見ている花万朶  聖 晩春
100   挙句  浅黄まだらの乱舞北上  宏 三春

平成十四年二月九日起首 十日 満尾
於  グリーンホテル三ヶ根
連衆 福井直子 稲垣渥子 山口元子 由川慶子 長坂節子
    谷本守枝 八木聖子 伊藤良重 間瀬芙美 佐久間和宏
    繁原敏女 加藤治子