「矢崎藍の付けてみませんか」コラム 東京新聞(火)朝刊・中日新聞(木)朝刊掲載です
中日新聞で1990年から始まった付け句コラムです。募集コラムのあと、読者の付け句を紹介します。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。付け句は活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。2001年10月から、東京新聞にも掲載。応募者は中部地方と首都圏に広がって、ちょっと激戦。皆さんがんばってね!
◆過去のコラム1999年−2001年◆このコラムのそもそも
さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉
| 「募集 」 中日・東京4月21日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) 起床喇叭を聞きし学び舎 久世武治 マルクスレーニン理想はかなく 晩成 やっと卒業たちまちニート ひろ 時代の流れを見た桜、いかがでしたか。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) あなたのしぐさあなたの笑顔 三嶋ますみ 節目節目の悲しき別れ 鈴木正子 亡くなった方への追慕の句も多かったです。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 傘に散ってた薄桃の恋 ひらり 六花と共に溶けた恋仲 大豆 手を離れたる風船を追う 相坂康 かくて桜前線は北上。多数ご応募ありがとうございました。さて、つぎの宿題です よ! 魔法使いが杖をひと振り ひわ この七七句に五七五句を付けてみてください。 (魔法使いが杖をひと振り) 夜が明けて雑木林に家が建ち 不用之助 いま家が建つのはアッというまですね。それにしてもこの御時世、杖の一振りで何 を実現したい? (魔法使いが杖をひと振り) ヨンさまにせつない恋をささやかれ 麗奈 時事、大笑いもぜひ。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませ んか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。四月三十日(土)まで にご投かんを。五七五句ですよ! (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「青める蝶 」 中日・東京4月14日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) 日本酒もよしスコッチもよし 泰子 失恋した日のタコ焼きの味 圭子 酒に酔い、花に酔い、人に酔うこの数日。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 泣いてくぐった幼稚園の門 松山みわ スタートの日々でもありますねっ。 スーツ姿が眩しい我が子 武田礼子 シルバーカレッヂ新調スーツ あきこ 負けないわい! 中身もだぞ。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 寝ても覚めても君だった春 アキ 時が古り、花が降る。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 戦争嫌いで戦死した友 村井由郎 戦火が産んだ平和憲法 平敏彦 あの広大な焼け跡を知っている世代。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 妻と手をとりめぐる極楽 八木一清 いま満開の桜のなか、共にあれば現世の極楽。 おまえもおれも若かったよナア 神谷昌子 「とうとう八十五になっちゃった!」と昌子さん。ある歳をすぎたら、みんな驚きながら歳をとってゆくんじゃありません? それにつけても。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) もう一度だけ若くなりたい もりしげ 青める蝶の幽かな羽音 ロッシー (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「何が幸せ 」 中日・東京4月7日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) ほのかな明かり手拍子の歌 よしお 待ちかねたよー、今年の花見は。 わたがしだんごラムネニッキ水 矢野節世 チャンポン酒と焼肉団子 山路由美子 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 購入したての自転車盗難 もっちゃんふうちゃん 木の根本にピカピカのあの姿、絶対忘れないゾ。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 二人で埋めたタイムカプセル 大杉ゆな パパになったと人づてに知り シュガー (さまざまの事おもひ出す桜かな) 変わる街並み名残の宴 独鈷 「千里ニュータウンも住人ともども年老いて、そこここで建替え工事が進み、桜並木が伐られ、ちりぢりの仮住まいの前に最後の花見がありました」 手動扉の赤電車行く 暁 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 宝探しはいつもはずれた 岩本康子 「子供のころ桜満開の公園で、賞品名を書いた封筒を見つけられなかった私。でも美しい桜の花が目に焼き付いていてそれが私の宝だったんですね」 (さまざまの事おもひ出す桜かな) ボート浮かべて触れる白い手 紅 何が幸せいまのこの風 水瓶 桜よ桜、ただ咲くばかり。 音無き街の春の夕暮れ みね (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「捨てきれぬ夢 」 中日・東京3月31日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) バイクで走る花のトンネル 洋一 桃色クレヨン踊る画用紙 安形よしゑ お花見だよー! (さまざまの事おもひ出す桜かな) 宴会部長は飲んで飲まれず 桜井善 話合わせつ名前をさぐる むぎむぎ茶 誰だっけ、この人は? (さまざまの事おもひ出す桜かな) 線路はさんで別居の夫 ヒロコ アルバムの女余所へ行くとか 福井さき子 うー、事情は秘密。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 父の流儀の愛は確かに ふさ子 母の作ったいびつおむすび 菅野八重子 親って完全じゃなくていいんだよね。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 家へ帰ると起きあがる父 乃芙 「病室に我が家の桜の枝をもってゆくと、突然帰る といい起きようと力をふりしぼったーー」 (さまざまの事おもひ出す桜かな) かやぶきの里ダムの湖底に 近藤富子 文明とは破壊。 少子化進む塾の先生 金鶏 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 捨てきれぬ夢まだ抱きつつ 節子 水はきらきらきらきら光る 青麦 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「まばゆい日々 」 中日・東京3月24日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) 春風匂うシャッターチャンス 友松きくゑ 籠にいっぱい土筆と蓬 まりこ ようやく、春がきましたよー。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 赤いマニキュアやめろよと彼 としえ 親切で言ってくれたんだっけ。 振られた恋もおとなへの道 古井和男 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 専業主婦に返り咲きます 三島園子 「付け句というものを知ったとき息子は三歳。 この春高校生になります」 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 母を看た日々父を看る日々 大畑杉子 ひたすら。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 待ち合わせした道祖神前 村井照代 おてて繋いで日比谷公園 西東南北 昭和ウン十年代青春のデートスポットです。 卒業式に安保反対 みの虫アッパ 日米安保条約。あの学生が60代、50代です。 昭和生まれが増えることなし 中山康博 なるほど。理屈ですねえ。 まばゆい日々はいつだったのか 寺田公仁子 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 氷河期の夢辿るマンモス 恵子 地球博会場で目ざめるーーグオッ、人人人の中。 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「ミトコンドリア 」 中日・東京3月17日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) 春の夜空に探したスピカ 水谷三和子 乙女座の白い星。ロマンチックな夜が更ける。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 強引だった年下の彼 ゆき するりかわした抱き寄せる腕 凛 ふふ、かわさなきゃよかったかな。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) ひょうたん島は何処へゆくのか 耕人 テレビが家庭にはいってきたときの感動、覚えている かたも多いでしょう。じきに白黒画面がカラーになって。 あれからもう半世紀です。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) ネットで買い物している私 飴子 数年前は考えられなかった「私」の姿。 手の内いかにホリエモンマジック スローフード いま、何が変るのか? (さまざまの事おもひ出す桜かな) こわごわ抱いた三千グラム 岩津志乃ぶ 白寿の母の車椅子押す 怜 ゼロ歳の命。九十九歳の命。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) ミトコンドリアが深呼吸する 三日月 おやまあ。私たち生物の細胞にいるミトコンドリア。 数億年の進化の記憶をたどっている? (さまざまの事おもひ出す桜かな) 空のたかみに消える風船 直 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「たらればかも 」 中日・東京3月10日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) 初めて座る君の助手席 一子 つめたい髪にさし入れる指 日々草 ようやく桜のつぼみもふくらんで、恋も進行。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 別れましょうと言ったはずです 嘉男 ありゃ。花の下でもめているふたりーー。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 反対方向見ている夫婦 藤原真由美 思いはふたつ。まあ夫婦ってこんなものだよ。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 子のがんばりに祈る合格 めぐみ 合格祈願の母、祖母の句がたくさん。 誰もいらんか俺のボタンは 泰枝 ぷふ。詰め襟の服もたたんで卒業じゃあ! (さまざまの事おもひ出す桜かな) どお? 変わりゆく日本のすがた 坂本ヨシイ 樹は答えず。 花粉の空に透かす旧札 眠り猫 景気横ばい長いおどりば 塚本益美 右は極楽左は地獄 甘茶利 (さまざまの事おもひ出す桜かな) たらればかものつもる夕暮 タヌ公 もしーー「たら」、もしーー「れば」、「かも」しれなかった過去の万華鏡。歴史もまた。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 戦さの庭も被災地も春 美比古 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「しめきりですよ 」 東京3月1日(火)中日3月3日(木) |
| (さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉) かすかな風に揺れるぶらんこ えりか 宿題はもう出されましたか。三百年前の芭蕉さまの句はただなつかしくて、今の世の風景もちゃんと付くでしょう。 この句は元禄元年、芭蕉が四十五歳のころ、故郷の伊賀上野に帰り、旧主の下屋敷の花見に招かれて詠んだものです。 さまざまの事おもひ出す桜かな 桃青 春の日はやく筆に暮れゆく 探丸子 という付け合いが残っています。 このときもう芭蕉庵桃青は、江戸で名のきこえた俳諧師ですが、その昔は探丸の父の蝉吟に仕え、ともに俳諧の道に入り、二十年ほど前、その早逝を機に故郷を出たのでした。 俳諧(連句)の作法では、春の発句に春の脇句を付けます。季語集、季寄せをおもちのかたは、春の季語(春、蝶、さえずり、雲雀、ぶらんこ、風船、など)をいれた七七句をつくってみてください。 もちろん作法にこだわらず、自由に心を遊ばせた句もどうぞ。。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 駅舎の陰で待っていたひと 聖子 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。三月四日(金)までにご投かんを。七七句ですよ! (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
| 「募集 桜かな 」 東京2月23日(火)中日2月25日(木) |
| (いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ) 燻る根榾をひっくり返す 鈴木辰彦 メールの恋もそろそろ終わり 武藤美恵子 (いつのまに雪はしずかに降りはじめ) 抜歯の麻酔まだ利いてをり 山田都 むかしむかしの写真の整理 はるよ (いつのまに雪はしずかに降りはじめ) 隊員みんな早く帰れよ 大崎潤一 キャスターの顔凝視する夕 あんでん 「耳を疑うニュースが多すぎ、テレビの前で絶句」 抒情、実感の2005年雪の日々。いかがでしたか。まだご紹介したい句多数ですけれど、ここで打ち止め。次の宿題は、一気に春へ突入です。 さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉 江戸時代の松尾芭蕉の発句です。この五七五句に七七句を付けてくださいな。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) つぶれた帽子初恋の彼 メルモ 桜を見て思い出すのは? 付け句は経験でも、想像でも。二句で物語の場面を作ってみてください。 (さまざまの事おもひ出す桜かな) 仔猫の声に振り返る道 彩火 春の季語を使って軽く付けるのもよし。時事、大笑いもご遠慮なく。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。三月四日(金)までにご投かんを。七七句ですよ! (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) |
◆「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる(伝統と現代の衝突じゃぞ!)中日新聞の付け句コラムは1990年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、(いわば言葉の綾で)文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです! 掲載するとまたきた! やっほっほ、どーしよー! とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
それでも赤い薔薇が好きなの、 しげる
でした。くわしくは『連句恋々』(筑摩書房)に書いてあります。
1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。
1998年に(金)夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」
2001年10月から東京新聞にも同時掲載となり、
2003年6月から朝刊掲載となり現在に至っています。
募集10日後しめきりがふつうで、5、6回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る!」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』(筑摩書房)はこの欄の精選付け句集です
◆過去のコラム1999−「あと一年で二千年なり」(1/8−2/12) 「働きすぎてちょっと疲れて」(2/26−4/9)「不覚にもまた恋をしそうな」(4/16−6/4)「むくむくと入道雲が立ち上がり」(6/11−8/6)「電子レンジがチンと鳴る夜」(8/13−9/24)「急がないのがうちのモットー」(10/1−11/5)「濃すぎるかしらけさの口紅}(11/19−12/24)◆2000「 朝の光が透けるカー テン」(1/7−2/18)「不況にもめげぬ男はつらいこと」( 2/25−4/14)「あなたを見てたずっと前から」(4/21−6/9)「ぼんやり見てる窓越しの雨」(6/16−7/28)「氷カランと麦茶の香り」(8/4−9/22)「ふと目が合った恋のはじまり」(9/29−11/10)「信号がもうすぐ赤に変わります」(11/17−12/22)◆2001「2001年元旦の膳」(1/5−2/9)「振り返ったら妻がにっこり」( 2/16−3/30)「あなたが好きよ規格はずれで」(4/6−5/18)「土曜二時半雑踏の中」(5/25−7/6)「誰にも内緒そっと寄り道」(7/13−9/7)「あなたにひとつ言いたいことが」(9/7-10/26)「秋深き隣は何をする人ぞ」(10/26-12/21)「ざぶりとつかる湯はあふれ出て」(12/28−2/8)「おおきくひとつ息をしてみる」( 2/15−4/12) 「さわさわとふたりの中を過ぎる風」(4/19-6/14)「母さんに会ったら涙こぼれそう」(6月21日-8 月6日)「命あふれて好きな日盛り」(8/2-9/27)「横顔の君にきょうこそプロポーズ ななしげ」(10/8-12/18)「恋情のただやるせなき雪ぐもり 聖子」(12月25日-2/25)「いち、にっ、さんしとつづく人生 おはぎ」(2/26日ー4月23日)「ぜんぶ話すよ今までのこと うさぎ」(4月23日ー6/19)「水 晶玉に未来尋ねる R」(6/19ー8/21)「恋という熱じわりあがって おはぎ」(8/21ー10/30)「体育館の窓の夕映え ジュン」(10/30ー12/25)「いやですいやだ絶対いやだ ザリ」(12/25-2/26)「ふたりだと胸がつまって苦しいの みのり」(2/26-4/22)「今ならいいわ誰も見てない 公仁子」(4/22-6/17)「月は涼しく中天にあり 霞」(6/17-8/5)「父と子の言葉とぎれて蝉の声 麓天」(8/5-9/23)「君が好きだと気づく瞬間 奏」(9/23-11/11)「ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋」(11/11-12/30)「いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ」(12/30-2/25)