タイマーくんの日常 正義の味方と髪を切る100の方法
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期待に満ちて迎えた新世紀は、 ちっとも特別な事のないただただ普通のお正月で 僕はなんとなく拍子抜けした。 去年の正月はあんなにミレニアムだなんだって騒いでいたのに、 今年はわりとすんなり新年を迎えてしまいましたって感じだ。 お仕事で色んなところにお呼ばれしていたせいか、 おせち料理さえ作っていない。 こんなんじゃ駄目だ新年!僕の目指す正しいお正月ってのはね、 おせちを食べて。お雑煮食べて。おとそを飲んで、 お年玉に一喜一憂し(悲しいかな僕はもう貰う年じゃないけど) 手巻き寿司の中身にウニとイクラと甘海老(御三家)を たっぷり投入して悦る事なんだ!! とか言っているうちに七日をすぎ、 お正月は終わってしまった。 僕の21世紀はこんな感じではじまってしまうのか。あぁ無情。 ◆◆◆―――――――――――――――――――――――――――――――――― それはさておき。 今日はお家でひとりぼっちだ。 ニャミちゃんは新年会でうどんを食べに行くとか言ってたし、 (どうして新年にうどんなのかは分からないけど) 一日なんにも予定が無いし、お洗濯は終わっちゃったし、 何もする事がない。 暇だー。 ヒマ。 だいたい年末から、何もやる気がしなくなって ヒマを感じるってのが多くなってきた。 いけない、いけない。そんなんじゃ人生に潤いが無くなってしまう。 されどやっぱりする事なんて思いつかず、 すっかりのびた髪の毛を弄くりながらぼんやりしてみる。 そうだなぁ・・・髪の毛でも切りに行ってみるか。 さっぱりすれば気分でも変わるかもしれない。 僕は目的を定めると颯爽とコートを翻して街へ繰り出した。 うーん、ちょっと格好良いね。フッフフ。 (ここにニャミちゃんがいたらストレートが右頬に決まる所だ) 「いよう。新年早々いらっしゃいませ」 マコっちゃんがうねうね動きながら挨拶をした。 彼はどうしてだかいつも「うねうね」した動きをする。 ちょっと上向きの鼻と、へんてこなカーボウイハットと へそを出している事に目をつぶれば、結構格好良いお兄さんなんだけど うねうねしているから許せないという声を良く聞く。 「ねぇ、マコっちゃんはどうしていつもうねってんの?」 「これ?癖だよ」 人間はクセでうねるのか。 人体の神秘。 ・・・まぁいいや、髪の毛を切ってる時うねってなきゃね(危ないし) 「兄ちゃん、ちょっと出てくるー」 幸い手の動きまでうねることはなく(足の動きはうねうねだけど) 安心してぼんやり髪を切ってもらっていると 相変わらず奇抜(すぎる)格好をしたサイバー君が、 目の玉をピロピロさせているパル君を連れて出てきた。 店の中にこんな人がいて他のお客さんは平気なんだろうか。 そんな僕の心配をよそに、サイバーくんはにかっと笑って 「タイマーさんじゃないですか、イラッシャーイ」 と言った。パルくんも「ウパウパウッパパパパー」と 小声で言っている。挨拶のつもりだろうか。 「光線銃もってくのか、パトロール?」 サイバー君はにかっと笑って光線銃を構えた。 「うん、さっきスギ君さんが渋谷駅に悪者が居るって 言ってたからさ。ちょっとコレ撃ってくるよん」 「パパッウッパパーウパーパパパーパパー」 ちょっと撃ってくるじゃない。撃ってくるじゃ。 そんな物騒な会話をしてて平気なんだろうかとあたりを見渡したけど、 お客さん(おばちゃん多し)はみんないつもの事のように しらっとしている。日常茶飯事なのか。これは。 マコっちゃんも「ま、気ィつけろな」とうねうねしながら言っている。 目を覚ませマコト。うねっている場合じゃない。 「ねぇ、差し出がましいかもしんないけどさ…撃つのってさぁ……」 たまらず僕は口を挟んだ。仮にも平穏を願う一般市民として、 このほのぼのした物騒会話を見逃すわけには行かない。 「心配してくれるんですか、嬉しいなぁー でもねタイマーさん、大丈夫っす!ヒーローとして俺は行きます!! 悪が蔓延るのを見逃すわけにはいかないんです。この光線銃に誓って!」 違う。違うよサイバー君。間違ってるよ… でも彼は熱っぽい目をして(サングラスで見えないけど) 熱く語っている。わかったよ、僕はもう止めない…… 君は君の信ずる道を行け。 「我が弟ながら、なかなか良いこと言うなぁ」 君も間違っているよマコっちゃん。 サイバーくん達が出ていった後、いつ臨時ニュースが流れるか 気が気じゃなかったけれど、幸いこの店にそんな知らせは入ってこなかった。 「いつもの事だから」とマコっちゃんは言うけど、 いつもこんな会話をする生活は嫌だ。 僕が複雑な顔をしているとマコっちゃんはハサミをしゃきしゃき動かしながら 「10何年もキョーダイやってんだから、ちゃんとわかってんだよ」 と言った。何をどう分かっているのか詳しく聞きたいところだけど、 良い台詞なのでツッコミは避けた。 昔、兄弟に憧れていたこともあったのだ僕には。 マコっちゃんは相変わらずうねうねしながら笑った。 鏡を見ると僕の髪の毛はすっかり短くなっていた。 家に帰るとニャミちゃんが乾麺を大量に差し出した。 どうやらいいうどん屋だったらしく、 その店の麺をたっぷり購入してきたらしい。 「楽しかった?新年会」 「おうよ。旨かったぞ」 「良かったねぇー。僕もマコっちゃんとこで髪の毛切ってさっぱりだよ」 「そういえば渋谷駅で・・・」 「し、――渋谷駅でぇ??」 「光線銃を持った高校生とナイフを抱えた少年が戦っていたから――…」 「戦っていたから!?」 「迷惑だから二人とも成敗してきた」 「…………………………………………」 正義の味方ここにありってか? | |