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銘木の話
銘木に限らず、「木」という素材は、なかなか優れた性質を持っています。例えば、「木と鉄とどっちが強い?」と聞かれたら、多くの人は「鉄に決まってる」と答えるでしょうが、実際はそうとも言い切れない部分がたくさんあるのです。
同じ重さあたりでの引っ張りに対する強さは、杉で、鉄の約4倍ほどの強度がありますし(コンクリートの約200倍)、圧縮強さも、鉄の約2倍(コンクリートの約100倍)ほどの数値が実験によって明らかにされています。
曲げに対する強さも、鉄やコンクリートなんか比較にならない強さを持っています。雪が積もったり、風が吹いても、なかなか折れたり倒れたりしないのは、その証拠です。数字で表すと、鉄の約15倍、コンクリートの約400倍もあります。
この軽くて強い「木」の特性を生かした歴史的な乗り物があります。皆さんご存知のライト兄弟が作ったフライヤー号です。この、人類初の飛行機にはスプルースという針葉樹が使われていました。彼らは自転車屋を営んでいたのにもかかわらず、身近にあって扱いなれた鉄より、木を選んでいたのです。それはもちろん、彼らが、「木が鉄より軽くて強い」ということを知っていたからです。
話は横にそれますが、私の故郷、愛媛県に、ライト兄弟より先に飛行機を発明したと言われる、二宮忠八という人物がいます。
彼は、軍に飛行機の発明と実現を訴えましたが、受け入れられませんでした。そこで、彼は、飛行機の開発資金を得るために、大阪に製薬会社を起こし、故郷(八幡浜)を懐かしんで、京都の八幡に屋敷を構えます。しかし、開発を進めていたある朝、新聞でライト兄弟のことを知り、失意の中、飛行機の開発をあきらめてしまいます。
その後、飛行機が自由に空を駆け巡る時代となり、ニュースで飛行機事故を知るたびに心を痛めていた忠八は、自邸内に「航空神社」を建て、航空殉難者の霊を祀りました。
子供のころから彼の伝記をよく読んでいたので、「ライト兄弟」の名前を聞くと、なんだか悔しいような気持ちになります。故郷、愛媛が生んだ偉人のひとりです。
話を元に戻しましょう。木は火に弱い素材であり、火に強い素材でもあります。変な話ですが、細かくなった木は燃えやすいものですが、大断面の木材は、そう簡単に燃え尽きることはありません。近年、それが見直され、建築基準法も改正され、「燃え代設計」が導入されました。簡単に言うと、火災発生後の一定時間で燃え残った部分によって、建物を支える強度があれば、設計に取り入れられるそうです
このような、物理的な面だけでなく、生物としての活動も優れています。ヒトは呼吸して酸素を消費するだけでなく、火を使い、大気から大量の酸素を奪いますが、植物は光合成により酸素を生み出す力を持っています。また、食物連鎖の大きな一翼を担っている植物は、地球環境を守るべく、全ての生き物に生きるエネルギーを与え続けています。
他にも、人の健康に関する好影響も言われ始めています。木造とまでいかずとも、内装に木材を多用することで、緊張を和らげる作用、疲労の緩和、がんによる死亡率の低減など、さまざまな研究結果が提出されてきています。普段、漠然と感じる心地よさも、科学的に裏づけられつつあります。
反ったり、燃えたりすることが、木材のやっかいな問題点であることも事実ですが、総合的に見て、木材に勝る素材と言うのはそうあるものではありません。それを生かすも殺すも、扱う人間しだいです。無駄なく生かして使うことはもちろん、木を育て、木を上手に扱う者を育てることも、ヒトが人らしく、地球上に生き残っていく上で重要なことだと思います。
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第12回 木は優れた素材 2003/07/28 |