「……夢、か」

目が覚めて悪夢を夢だと知ると、熱斗はふうっとため息をついた。
相変わらず世界はモノクロームで、感覚はないままだ。
――今に限ってはそれが幸いしている、のかもしれないけれど。

半月前、プロトと戦ったあの日の出来事。
やっと夢に見なくなったと思ったらこれだ。
――夢を見ない魔法があればいいのに。
……魔法なんてものがあったとしても、そんな魔法はなさそうだ。

げほげほと咳き込んで、身体をまるめる。
熱を測ると、38,9。……あまり実感は涌かないけれど。

感覚がなくなって、もう一週間は経つ。
急に何も感じなくなって戸惑ったけれど、慣れてしまえばどうってことはなかった。

そんな世界でもほのかに苦痛を感じるほどなのだから、かなり重症なのだろう。
実際、熱があるからと学校を休んだのも事実。


眠るに眠れず、仕方なく重い身体を起こす。
いっそ今以上に感覚がなければいいとすら思う。中途半端に何かを感じるのは、辛い。

壁にもたれて軽く咳き込む。
一人きりでいるのがこんなにも心細いなんて、――自覚していなかった。

気を紛らわそうと思いつつも結局なにも出来ないまま、どさっとベッドに倒れこんだ。
相変わらず、冬の日は短い。
辺りは怖いほど暗くて、見たくなくて目を閉じた。
いっそ、感情ごとなくなってしまえばよかった。


「にいさん……」
ふいに口にしたのは、一番大切な名前。
「にいさん……逢いたいよ……」






だいぶ昔に書いたのをちまちま手直し。
もっと長く書くつもりだった記憶があるんですが、気がついたらすごく短くなってました。

2007/2/23
お題提供:ふりそそぐことば