風の勢いは優しさすら感じるほど
空気の勢いは怨みさえ感じるほど
緩やかに静止していたかのようなその時間は、触れそうだと錯覚するほどに、
焼くほどの強さではなく、けれどじわりじわりと迫る日差しを避けるような、それでいて誰かに見つかることもない、その場所は自分のためにあるようだと思った。
木漏れ日がゆらゆらと揺らぎ、少しだけ暑さの消えたそこで、くらりと力の抜けた身体を木の根元に委ねる。
とても疲れていた。けれど眠ることはじっとりと温い風が許してくれそうになかった。
さらさらと、葉が擦れた。
とても長いあいだ、そうしていた。
*
瞼の裏にまで届く太陽光が、不意に遮られた。
肌を刺激する感触と独特の匂い。突然変化した環境に驚いて、それを除ける。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
知っている――知っている声だ。浅くない傷を相棒に残した、そして自分が傷つけた声。
優しげな声色だった。優しい口調。オレであると気づいていないから、なのだろうか。
「なんだよ、いきなり……脅かしやがって」
彼の表情が変わる。身体を少し強張らせて、……その緊張はすぐに解けた。
「帽子は熱中症の予防になるよ?」
いたずらっぽい笑みを口元に湛えて、先ほど除けた"それ"をもう一度オレの頭に乗せる。
「直射日光避けにしかならないだろ……ここは日陰だ」
「太陽が動いたら、影の位置は変わるよ」
日陰が日向になるのに、一体どれほどの時間がかかると思っているのか。
――厭味のない微笑。何が何でもオレにこれを被らせたいらしい。
*
「……疲れてる?」
少しの間を置いて、彼は遠慮がちに呟いた。
「そう見えるか?」
「きみが……居るから」
「オレが此処に居ても、オレが疲れてることにはならないだろ」
「君も疲れてるように見えるよ」
僕の勘違いかな、と、彼は勘違いなどではないと確信を持った声で、どこかわざとらしく言う。
……誤魔化しきれもしないほど、疲れているということか。
「これ、少し借りてていいか」
一瞬きょとんとした後、彼は小さく微笑んで、頷いた。
真夏のお昼寝。午後2時くらいで。
わたし、木陰でお昼寝っていうの好きなんでしょうか……。
2008/8/2