振り下ろしたソードは既のところでかわされ、空を斬った。
たん、と片足をついて彼が振り向く。攻撃と攻撃の間、一瞬の隙を見逃さず、バスターをこちらに向ける。
――間に合わない。
確信すると同時に視界を覆う鮮やかな黒、受けるはずの衝撃を受けない違和感。微かな呻きと、そしてすぐに放たれる反撃。
最初はほんとうに微かな、気づきもしないような違和感で、疑いもせず、ただ訪れない衝撃に安堵するだけだったけれど。幾度も幾度も繰り返されたそれはいつしか余裕を失い、見ていることもこの戦いを続けることも苦しくて堪らなくて、そうして無傷でいる自分を、心の中でそっと罵った。こえにしてしまったら、きっとヒカルは怒るから。
スバル君が戸惑うような躊躇うような、少しつらそうな瞳で、樹木の力を宿したソードをヒカルに向けた。
僕の想いを、たぶんヒカルはわかっているし、スバル君も理解しているのだろう、何もかもを。

どこまでいっても、結局、世界は残酷だった。


 ---


「どうして、ねえ、なんで、なんであんな……っ!」
静かに冷たく問いかけるつもりで、それは思い通りにならない幼児のようにただ叩きつける、ともすれば言葉すら消え失せてしまいそうな、泣き叫ぶ声へと変化していた。
「……見たくねえんだよ、お前が傷つくとこ」
何のためにオレが居るんだよ、と、言葉の裏側で呟くように。
ヒカルがこうしてぶっきらぼうに、冷たくすら思えるようなトーンで言い放つときは、そこに限りない温もりがあることを僕は知っている。
「それは僕だって同じだよ、ヒカルが傷ついてくの見たくない、二度とあんなことさせないで!」
そう、僕のためなんだ、何もかもが。最初はその優しさに甘えることしか出来なかったし、それが僕とヒカルの関係であり、世界だった。……僕は過去形で紡ぐけれど。
辛うじてひらかれていた瞳さえも閉じたヒカルを抱きしめた。溢れでる涙を拭うことを諦めて、曖昧で伝わらなかった思いを、そっと呟く。
「…………ぜんぶ、一緒がいい。嬉しいことも哀しいことも、痛いのも」
一番近くで守られているだけの存在より、一緒に傷つく存在でありたいんだ。






1のあの仕様は実はヒカルが庇ってただけなんじゃないか、とか。
そのうちツカサが今度は僕が守るよ的な感じで同じことして、今度はヒカルに泣かれたり(……殴られたり?)とかだったらとても萌です。

2008/9/20