DCl報告書(DCI熊本セクション1996年8月) 熊本県の教育委員会並びに公教育管理職による子どもたちへの人権侵害 1 熊本県の公教育で実施されている「個人学習診断テスト」について ア)1993年に始まった「個人学習診断テスト」は、小学3年生から中学3年生までの   すべての子どもたちを対象とした、熊本県公教育独自の一斉テストです。(ただし、   障害を持つ子ども達のほとんどは、最初からその対象として除外されています。   子どもの権利条約第23条に関連) イ)このテストの実施には、その当初から、多くの保護者からの「子どもたちの比較競争   の材料になるのでは?」という疑問や不安の声がありました。 ウ)全県実施の前年、1992年12月には、熊本県教職員組合も、当時の組合員数を   はるかにこえる約8000人(全教職員の約70%)にのぼる実施反対の暑名を、   熊本県教育委員会に提出しています。 エ)1993年8月、熊本県の児童・生徒の約3割がいる熊本市の教育委員会が、この   テストに参加しないことを表明しました。市教委はその理由の一つに、「このテスト   が有効であるかどうか疑わしい」としています。現在も、熊本市は不参加の態度を   変えていません。また、全県実施の2年目には、合志町も不参加となっています。 オ)このテストの実施にあたって当初から中心的役割を果たしてきたのは、熊本県教育委   員会です。その県教育委員会並びに各市町村教育委員会は、そうした保護者や教職貝   の疑問や反対の声に対し、説明会等の開催をかたくなに拒否し続けました。 カ)そしてついに、1993年12月16日、県教育委員会は、「このテストは公教育に   おける教科指導の一環として集施されるものであることから、その責任と判断は市町   村教委及び校長がなすものである。したがって、保護者や子どもが判断・選択するこ   とがらではない」との見解を発表し、子どもや保護者の意見を無視していく態度を明   確にしました。(子どもの権利条約第5条、第18条に関連) キ)1993年12月、熊本県本渡市の議会で.このテストに関しコンピユータ一処理の   民間業者と交わされている契約書が、本渡市の「個人情報保護条例」に違反している   のでは、との質問が出されました。その結果、契約書が県内各市町村の「電子計算組   織に係る個人情報の保護に関する条例」に違反しており、児童・生徒のプライバシー   情報が守られていないことが明らかになりました。そこで1994年1月、熊本県教   委は、あわててその内容を追加変更し、再契約を交わしています。(子どもの権利   条約第16条に関連) ク)現在このテストは、教育基本法を初め、法的に問題があるとして、熊本地方裁判所で   民事裁判にかけられています。その争点の一つに、子どもの権利条約違反も取り上げ   られています。 2 テストの強行実施にもとづく管理職による子ども達への人権侵害 ア)このテストへの疑問の声を無視する中での強行実施に対し、まず子ども達自身が自ら   の考えに基づき、拒否の姿勢を明確にしました。県教委の発表でも、本格実施の初年   度に1704名、その後も600名に近い子ども達が例年、「拒否」を続けていま   す。(子どもの権利条約第12条に関連) イ)この子ども達の意見表明に対し、学校の管理職は以下のような人権侵害をおこしまし   た。(子どもの権利条約第12条、第28条、第29条に関連)  (1) 受験拒否の生徒に対し「他の児童生徒をまどわすから教室に入れないで自習させ   る」として、予ども自身の「教育を受ける権利」を奪いました。  (2) 保護者や子ども自身へ「受験するように」と迫り、説得を超えた強制的圧力をかけ   ました。  (3) 白紙解答によって拒否の意思表示をした子どもの答案を、管理職が勝手に零点の解   答としてマークシートに転記して報告しました。(このマークシートに転記された   数値としてのデータだけがコンピューターに入力され、子どもの「評価」となりま   す。)  (4) 保護者や子どもから、マークシートへの転記拒否の意志を確認しておきながら、実   際には無断で転記して提出しました。  (5) 受験拒否である子どもの欠席を、「病欠」として報告しました。  (6) 管理職がテスト時間中に、教室で拒否している児童の机の脇に行って、しばらく無   言で立ったり、「どうして受けないのか」と尋ねるといういやがらせがありました。  (7) 保護者や子どもから拒否の意思を確認し、テストの実施日には受けさせなかったに   も関わらず、後日、授業中に管理職が子どもを一人だけ教室外に呼び出し、両親の   了解も取っているかのようにだましてテストを受けさせました。 3 熊本県の教育委負会による子ども達への人権侵害  このような、子ども達に直接かかわるさまざまな人権侵害の本来の原因者は、 このテストを強行実施した熊本県教育委員会並びに各地教育委員会です。  日本において「子どもの権利条約」が批准、発効してすでに2年がたちまし た。教育委員会や学校管理職は、本来その啓発普及の中心となるべき人たちでは ないのでしようか。「子どもの権利条約」の中にうたわれる「子どもの最善の利 益」(子どもの権利条約第3条)を初めとする諸条項と照らして、この度の熊本 県における個人学習診断テストの強行実施によって引き起こされている歪みや弊 害の諸問題は、決して看過できない重大な問題となっています。 個人学習診断テストを考える熊本県交流学習会(事務局)斉藤 真 〒869−12 熊本県菊池郡大津町大津867  電話  096−293−2418  FAX 096−292−1812 (1996年12月15日訂正済)