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MGBとスタビライザー(unti roll bar) page1

■1.ワインディングロードにて
■屋根の無いオープンボディならなおさらに、街なかの喧騒よりも山や海の長閑なところを目指して走りたくなるというものだ。それも直線道路が続く単調な道よりも、大小のコーナーがつづら折りになった、見晴らしの良いロケーションが好い。
 MGBを連れてそんなところに行けば、ああ、こいつと居てよかったなあ、としみじみ思えるのである。
 軽快にコーナーをクリアして走り続けると、いつのまにかハイペースになってくる。運転している本人は気分がいいこともあって、そんなことはちっとも気づいていない。
 しかし、スピードの上昇と共に車体の傾きが激しくなってくる。やがてアンダーステアが顔を見せはじめ、それを超えるとタイヤは臨界点を迎え、まもなくブレイクする。
 「いや、俺のMGBはハイグリップ・タイヤを・・・」と豪語してみよう。たしかにグリップの限界はさらに上昇し、コーナリング速度は速くなる。が、サスペンションはストロークの全てを使いきってインリフトを起こす。その瞬間、後輪のトラクションは失われ、やはりブレイクするだろう。
 これらは、クルマが曲がろうとするとき必ず起きる車体の傾斜=ローリングが起こす弊害なのである。
 それを防ぐために、MGBには『アンチ・ロール・バー』が装備される。そう、車体の傾きを抑え、シャープなコーナリングを実現するためのサスペンション部品だ。アメリカでは『スタビライザー』と呼ばれる、トーションバー型スプリング(ねじり棒バネ)である。

 

■2.ローリング現象の謎 ■「ロールを抑えればコーナーは速くなるんでしょ!」と言えれば簡単なのだけれど、ことはそれほど単純ではない。コーナーでことごとく起きるローリング現象の謎を解いておかねば、部品の選択もできないというものだ。
 さて、クルマが操舵に従って進行方向を変えるのは、たしかにタイヤのグリップ力に因るところが大きい。走りながらハンドルを切ると、クルマの直進方向とタイヤが向いている角度の差、すなわち <スリップ・アングル> が生まれる。それに車体の<慣性重量> が加わり、タイヤの<アドヒージョン>=粘着性能がそれらを受ける。同時に、サスペンション機構が様々なファクターを吸収しながら、すなわちロールしながらクルマは曲がる。いささか難解ではあるが、クルマは非常に論理的に曲がっているのだ。
 たとえば時速 30キロではロールしなくても、時速 60キロなら傾く。また一人乗りならスパッと曲がるが、満員&ガス満タンならやはりロールが起きる。あるいは重心が高い位置にあるほどロールは大きくなる。

 このように、クルマがロールするのは曲がるときに起きる荷重の移動のためで、車体の慣性に深く関わっている。だからこれらの要因を変化させれば、自ずとロール角度も変化する。MGBをコーナーで速く、しかも格好良く走らせるためには、すなわち車体のローリングを上手くこなせば良いのである。
 俗にある「強化スプリング」とは、バネの張力を強くして縮みにくいように作用しているわけで、ロールは小さくなってもその乗り心地はすこぶる悪い。

 

3.アンチ・ロール・バー ■もう少しだけややっこしい話しを・・・。クルマが曲がっているときのサスペンションの動きを観察すると、まずコーナー内側のサス・ストロークは伸び、外側には荷重が移動してスプリングは縮んでいる。あたりまえのことだけれど、左右の足は、常に対照的な動きでロールを起こしているのである。
 この左右の屈伸を抑制すれば、バネ・レートを上げずにロールを抑えられることに気付くだろう。
 MGBのフロント・サスペンションを覗きみれば解るとおり、サス・アームの両端を繋ぐパイプのようにリンケージを介して鉄棒が渡されている。これが『アンチ・ロール・バー』だ。左右のサス・アームが相対する動きをするときのみバネの反発力が作用する、いわば第二のサスペンション・スプリングなのである。

 しからば、その効果とは如何なるものか。
フロントのサスを見ると、アンチ・ロール・バーは主にアンダーステアを減少させることに貢献している。ウィイッシュボーン型のサス形式は、ストロークが縮んだとき、トレッド幅が変化してしまう特性を持っているから、ローリングを抑えれば、それだけタイヤの負担は軽くなる。また一定以上の荷重を片輪だけにかけないので、両輪のアドヒージョンが有効に使える。
 後輪について。駆動力を供給しているアクスルがサスの一部を構成するリジット型のMGBでは、実のところ重要な意味を持つ。
 冒頭の繰り返しになるが、ローリングが限界に達すると、コーナー内側の車輪は半ば空中に浮いたような状態になる。浮かないまでも荷重のほとんどがコーナー外側の車輪にのしかかり、内と外の車輪に大きな回転抵抗の差が生じる。こうなると泥濘(ぬかるみ)にハマったも同然、ただちにデフギアが作動して内側の車輪が空転し、その瞬間にクルマの推進力は失われる。いわずともコーナリングの真っ最中の出来事である。これでスピンアウトしなかったら、運が良い。
 さらには、後輪のキャスト現象(*前稿参照)も厄介な問題としてつきまとう。

 しかしながら『アンチ・ロール・バー』は、レートが高ければ良いというものでもない。限度を超えて固いバーを装着すると、本来のサスペンション・スプリングが一切無視されたと同じ現象が起きて、タイヤは呆気なく限界を超える。これまたすなわちスピンアウトか、もしくは大アンダーステア大会ということだ。
 かくして『アンチ・ロール・バー』は、サス・スプリングとタイヤのグリップ力、またサス・ディメンジョンや車重など、そのクルマ固有の因子とバランスを保って装着しなければ、まるで意味を持たないタダの棒っ切れに過ぎないのだ。

 

4.バリェーション ■1962年以来、18年間に及ぶMGBの歴史のなかで、『アンチ・ロール・バー』は様々な仕様の変遷を経てきた。対米輸出向けには市場の要望もあっただろうし、モデルチェンジによる重量変動に基づく仕様変更や、コストとの戦いも背景にはあったのだろう。ここの理由は知る由も無いけれど、参考までにその変遷をデータにまとめる。


シャシーNo. 前輪後輪
<HR>
Tourar GHN3/101 〜GHN3/138400 オプションなし
GHN4/138401 〜GHN5/360300 9/16" なし
GHN5/360301 〜GHN5/410000 なしなし
GHN5/410001 〜生産終了5/8" 11/16"


GT GHD3/71933 〜GHD5/361000 5/8" なし
GHD5/361001 〜GHD5/410000 9/16" なし
GHD5/410001 〜生産終了5/8" 11/16"


 続いて、英国の(BMHCを含む)MOSSが中心になり、MGB向けに用意した「スペシャル・チューニング・レンジ」からフロント用のバリェーションを列記する。
 サスペンション・スプリングとの相性や、好みの感触、またタイヤの選択によって、どれが相応しいと断定はできない。しかし、一般的には3/4"を目安に、それ以上太いものは堅く感じる傾向があり、ハンドルを切った状態では路面の凹凸を大きく拾うだろう。
 また、太さに合わせて用いるセンターマウントのブッシュの材質も、大きな変化をもたらす。通常はサス・アームと同質のゴム製ブッシュを用いるが、よりシビアな反応を要求するなら、ナイラトロンやネオプレーンなどの新素材、または極めて堅いキャスト・アルミニュウム製のマウントもある。


レンジ 断面径(in) レート(Lbs/in)


スタンダード 9/16" 50
スタンダード 5/8 60
アップレート 3/4 137
コンペティション 3/4 170
タンデム 3/4+9/16 190
タンデム 3/4+5/8 217
ファストロード 7/8 228
ファストロードSpl. 7/8 295
コンペティション 1382

 リアアクスル用の『アンチ・ロール・バー』は、初期のMGBに用いられた「バンジョー型」アクスルには装着できない。アクスル・ケースの形状と、車体側のマウント・ブラケットが無いから、これらを加工すれば装着は可能だけれども、マウント部には相当の応力がかかるので強度には充分な余裕を見込む必要がある。


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