「雨が降るから気をつけてね」


にっこりと笑って、彼はいつもそう言う。
そして、それがあたる。
何故?







rain man




晴天。
冬の寒々しい空気からあけて爽やかな風が吹き込んでくる。
降水確率は10%。
よもや誰も雨が降るなんて思わないから傘なんて持ってない。

「ねえ、何で傘持ってんの?」

折りたたみ傘ならばわかる。
念のため、と常に常備している人もいるだろう。
しかし、長野君が持っているのは今じゃ100円で買えるビニール傘。
きっと今日東京で傘を持って歩いているのはこの人くらいだ。

「なんで、って雨が降るからに決まってるでしょ?」

にっこりと微笑んでなんの疑いもなく言った。

「降水確率すっごい低いよ?」

「それでも雨降るよ今日は絶対。健もロケあるんなら気をつけたほうがいい」

どこからその自信が来るのかは知らないけれど、長野君ははい、と俺に折りたたみの傘を貸してくれた。

「・・・2本も持ってんの?」

「折りたたみのほうはいつも持ってるの。今日は絶対降るからこっち持って来ただけ」

「・・・ありがとう」

どういたしまして、と微笑んで、長野君はまた視線を台本に戻してしまった。
ここまではっきりと自信を持って言われると、本当に雨が降るような気がしてきてならなかった。





















そして、4時間後。
岡田とのロケ。
ロケバスの中で眠ってしまい、岡田に起こされた。

「健くん、着いたで」

「・・・ん」

肩を揺すられて俺は目を覚ました。
カーテンの閉まっている車内では外の様子がわからない。

「・・・雨降ってる?」

「おん。ぱらぱらとやけど・・・・なんでわかったん?」

雨で中止になるようなロケではなかったためにそのまま撮影は開始された。
長野くんの予想は当たっていた。
俺は長野くんが貸してくれた傘をさして家に帰った。
あしたこれを返しつつ、どうしてそんなことがわかるのか聞いてみようと思った。



























3日後。

よくよく考えたらあの日の次の日は長野君には会わない仕事だった。
傘を干して、すっかり乾いたのでお礼を言って返そう。

「おはよう〜」

楽屋には長野くんと坂本くんと剛がすでに来ていた。
剛は寝ていたが。

「あ、長野くん、これありがとう」

借りていた折り畳み傘をカバンから出して渡そうとしたら、

「ああ、今日雨降るぞ?」

「え?」

新聞を読んでいた坂本くんが今度はそんなことを言ってきた。
それに同意するように長野君も頷いている。

「・・・な、なんでわかるのさ?」

俺には今日雨が降るとかは絶対わからない。
今日はまだ天気予報は見ていないから降水確率はわからないけれど、
雲ひとつない快晴なのだ、雨がふる確率は低いだろう。

「なんで・・・って」

「・・・なんとなく?」

なぁ、とかねぇ、とか二人して顔をあわせて頷きあっている。
全然わかんない。

「長野くんは前からなんでかな〜って思ってたけど、なんで坂本くんまでわかるのさ?!」

「ま〜待て!怒るな!」

坂本くんが突っかかっていった俺を両手を突き出して止める。
二人にわかるのに俺にわからないのが悔しい。

「健にもわかるよ、ちょっと待っててごらん」

くすくすと笑いながら長野くんは楽屋のドアに目を向けた。
ちょうど井ノ原くんと岡田が入ってくる。

「でさ、でさ、・・・ちょっと聞いてんのかよ〜!!」

「も〜ええって、さっきから何回同じこと言えば気が済むねん・・・」

ハイテンションの井ノ原くんとうんざりしたような岡田。
二人ともロケだったらしい。

「二人とも入ってきたらちゃんと挨拶しろよ」

坂本くんが二人に向かって注意する。
ハイテンションのあまり気づかなかったらしい。

「おはよ〜〜!!」
「おはよ・・・」

楽屋に入り込みながら、すでにぐったりした様子の岡田に、
何があったのか物凄くテンションの高い井ノ原くん。
正反対だ。

「井ノ原、井ノ原」

「なに?」

長野くんが手振りで井ノ原くんを呼び寄せる。

「お前これからなんか予定あるの?」

「そう!!聞いてよちょっと!!」

嬉しそうに井ノ原くんは長野君にこれから地方に行ってしまった学生時代の友達と久しぶりに会うのだと話した。
要約するとそんな感じだが、それを丁寧に10分ほどかけて話してくれた。
岡田が疲れていた理由がわかった気がする。

「ね、わかった?」

井ノ原くんを坂本くんに押し付け、長野くんが俺に話しかけてきた。

「・・・わかったって?」

「今日雨が降る理由」

理由と言われても、ただ井ノ原くんのテンションの高い話を聞いただけだ。
それでわかれといわれても、まったくわからなかった。

「井ノ原くんのテンションが高いのが雨の降る理由なの?」

「ん〜、ちょっと違うけどそんなもんかな」

「え?」



「井ノ原がね、楽しみにしてることがあると雨が降るんだよ。ほぼ確実に」



にっこりと笑って、井ノ原可愛そうだね、と言った。

「・・・雨男の力?」

「そう、コンサートの初日とか雨降るし、中々雨の降らないことで有名な海外の地域でも雨降らすからね井ノ原は」

物凄く強力な雨男。
ああ、そういえば長野くんがそう言うのって井ノ原くんと同じ仕事があった日だけだと今気づいた。

「井ノ原のテンションが高かったら傘持っててソンはないと思うよ」

ね?と窓の外を指差す。
今まで晴れていた空に、少しだか陰りができ始めている。

「・・・雨男・・・・」

井ノ原くんのすごさを知った一日だった。










そして、その日はやっぱり雨が降った。
でも、テンションの高い井ノ原くんは気にしてなかったけど。

長野君は持っていた傘を井ノ原くんに貸してあげていた。

あの時借りた傘も、きっと本当は井ノ原くんのために持ってたものなんじゃないかな、と思った。




楽しみにしていることがある日に雨が降っても、せめて傘くらいあるといいと。

長野君のささやかな優しさ。

もうどうしようもない雨男への、ささやかな優しさ。





じゃあ、俺も剛と岡田に教えてあげようと思う。



「今日はね、雨が降るよ」



と。













井ノ原さんがなにかをやると必ず雨が降るなぁ〜と思いまして。
2003年の夏コン。初日の降水確率結構低かったのに土砂降り(爆)
そして友達に誘われて行ったPICA★★NCHIの初日。

雨降りましたね。

どっか外国の雨の降らない地域にも雨を降らせたとかで。
いっその事水不足で困ってる国に井ノ原さんを出張に(笑)

とにかくコンサートの初日に雨を降らすのはやめていただきたい。

グッズが濡れるからっ・・・!!(涙)