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「2005年9月高天原温泉&読売新道山行」     記:みちお
記:2005年10月5日
更新:2005年10月16日

 
 2005年9月19日(月)から23日(金)まで、北アルプスの高天原温泉&読売新道の山行へ 行ってきました。





はじめに

  どこから入るにしても山道を2日以上歩かなくては入れない、日本で最も山奥にある秘湯 「高天原温泉」
 日本国内屈指の本当の山奥に位置する 「読売新道」
 どちらも、前々より行きたかったところです。
 この2つを結びつけた山行をしてきました。

 バイクで登山口まで移動、ふもとで1泊、山中山小屋3泊、合計4泊5日の山行です。
 
 メンバー:みちお(単独)


9月19日(月・祝):バイクで有峰口へ

 2年前には、新宿から、北アルプスの西側、有峰口や室堂までの深夜バスが走っていた。しかし今年はそのバスがなくなってしまったようだ。しかたがなくバ イクで行くことにする。
 長い休暇を無理やりとったので、バイクツーリングもかねて、ゆっくり行こう。

 午前9時すぎ、川崎の自宅を出発する。調布インターより中央高速道路に入る。17日からの3連休の最終日だが、高速道路は渋滞なくすいていた。
 松本インターで高速を降りる。ここでやっと今宵の宿泊を真剣に考える。あいかわらずの無計画さ。今回の登山口 「折立」 のふもと、「有峰口」 にある亀谷温 泉の 「白樺ハイツ」 に電話をした。連休最終日だ。部屋の予約がとれた。

 松本から国道158号線を西に向かう。この国道は北アルプスの上高地へ向かう道でもある。この道の渋滞も覚悟していたのだが、意外にすいていた。そうだ よね、3連休の最終日だし、午前中だし。こんな時間に山に入る人なんていないか。。。
 松本電鉄の終着 「新島々」  の駅をすぎ少し行くと、大きな駐車場がある。上高地へ入る人は、マイカー規制のためここに車を置いて、あとはバスで入山することになっている。見ると、多 く の車が停まっていた。北アルプスに大勢の人が入山しているようだ。
 自分は、ここを通りすぎ、安房峠へと向かう。
 安房峠は北アルプスの西側と東側を結ぶ重要な道路。以前トンネルがなかったころは、安房峠越えはたいへん だった。とても狭い山道に、大型観光バスが連なる。狭いカーブごとに誘導員が立っていて、上りと下りで大型バス同士が同じカーブに入らないように誘導して いるのだ。そんなことをあちこちのカーブでやっていたので、大渋滞だった。しかし今は、立派な安房峠トンネルができて、峠の通過も楽になった。
 今回は時間があるので、トンネルではなく旧道の峠越えをしよう。そして、途中にある温泉にでも入ろう。。。。
 と、思いながらバイクを走らせていたのだが、
 あれま!! いつのまにかトンネルに入ってしまった。。。。。

 長い長い安房峠トンネルを通過する。通過したところに待ち受けていたのは料金所。バイクの通行料金600円。

 この先にも温泉はいろいろある。料金所を出てすぐにあるのが平湯温泉。結構大きな温泉地のようだ。
 でもなぁ。。。大きな温泉地は観光客で混んでいるよなぁ。
 バイク用の地図で他の温泉を探してみる。国道から少し脇道にそれた場所に福地温泉というのがある。小さそうだ。しかも、そのバイク地図によると無料の温 泉施設もあるらしい。
 うん! そこにしよう。。。

 国道を離れ、福地温泉街にはいる。
 と、いきなり大きな観光ホテル!
 あれま!
 小さな温泉地と思っていたのに、、、、、。
 そこはパスしてさらに奥へ進む。
 バイクの地図に書いてあった 「昔ばなしの里」 という建物が見つかった。古い建物。うんうん、いいじゃない。
 バイクを置き中に入る。あれま、温泉、無料ではないない。まあ、いいか。ひとふろ500円。
 5m四方くらいの小さな木の湯船。外に3m四方の小さな露天風呂。そしてなにより、人が少ない。
 うんうん、なかなかいい温泉だ。バイクの疲れをいやす。気持ちいい〜。

 つい、長湯してしまった。
 1時間近くも入っただろうか。時刻は午後3時。そこは簡単な食事も出してくれる。そばでも食べよう。。。売り切れ。山菜うどん をお願いする。囲炉裏端でいただく。
 ゆっくり、くつろいでしまう。



福地温泉 「昔ばなしの里」


昔ばなしの里の中の囲炉裏


 昔ばなしの里を出て、国道へ向かう。
 福地温泉内のそのほかの宿は、ちょっと高級そうな旅館が立ち並んでいた。
 福地温泉街を出て、国道に戻る。

 ちょっと行くと、西穂高岳等への登山口となる新穂高への分岐となる。
 その分岐の近くが栃尾温泉だ。 「荒神の湯」 という無料の露天風呂がある。趣のあるよい露天風呂と情報を得ていた。
 よし! 寄ってみよう。

 40台ほど停まれるおおきな駐車場。げ、混んでる? 
 中に入ってみると、露天風呂はすいていた。展望は河原。雰囲気はいまいちだ。



栃尾温泉 「荒神の湯」



 温泉を出て、国道471号線を富山方向に向かう。
 午後4時をまわってしまった。大分、遅くなってしまった。急ごう。

 ノーベル賞をもらった某教授がつくった 「スーパーカミオカンデ」  のある神岡町を通過する。
 ふと道路横をみると、スーパーマーケット。おっとっと、バイクを停めて中に入る。明日以降の山行のための行動食を購入する。
 で、ちょっと行くとガソリンスタンド。ガソリンを補給する。
 以後、スーパーもガソリンスタンドも見あたらなくあった。どちらもグットタイミングで補給できてよかったなっと。

 富山の町に近くなるが、富山を通らず近道を行こう。と、細い道に入って行ったが、迷ってしまった。
 あたりは真っ暗。ありゃりゃん。。。

 迷いながらもどうにか今宵の宿泊所である亀谷温 泉 「白樺ハイツ」 を発見。
 あたりは真っ暗、午後7時だった。
 名前からして小さな建物、と想像していたのだが、3階建ての立派な建物だった。国民宿舎だ。
 受付をして部屋へ入る。6畳ほどの個室。トイレ、風呂は部屋にはない。食事の時間が8時までなので、風呂に入る前に食堂へ行く。さしみ、魚のアルミホ イール焼きなど。まあ、こんなもんか。1泊7430円だし。ビールを1本頼む。ふと他の方のテーブルをみると、あれま、なにかおいしそうな物が。。。別料 金らしい。
 食後、お風呂に行く。カラン数が10個以上あるりっぱなお風呂。一応、温泉ということになっているが、本当に温泉??


夕食


部屋


 この 「白樺ハイツ」 は 「有峰口」 というところにある。有峰口から登山口の 「折立」 までは、バスで1時間ほどだ。
 バイクを有峰口に置いて、バスで折立まで行こう。と、考えていた。フロントに行き、バスの時刻を確認する。
 「明日は、バスはありませんよ」
 え?! 
 なんと、連休中はバスがあるが、平日になる明日はバスがないと言う。
 しまった。。。。
 タクシーで折立まであがると1万円以上かかる。バスなら2400円。今回の山行は、折立から立山へ抜ける予定。バイクで登ると、下山時にふたたび折立に バイクをとりに戻る必要がある。ありゃりゃん!
 しかたがない....。 バイクで、折立まで登ろう。。。

 今日は、バイクツーリングで疲れたっと。
 おやすみなさい。



9月20日(火):折立から太郎平小屋へ

 朝食は7時から。その前に朝風呂に入る。
 あ〜、朝風呂に入るって、やはりいいね〜〜!
 朝食を済ませ、清算をすませてバイクで出発。
 1泊2食+ビール1本=7980円


朝食


白樺ハイツ


 山に向かうと、すぐに有峰林道だ。バイクの通行料300円。ちなみに車の場合、1000円を超えるらしい。
 一応全線舗装道路なのだが、道は、狭く、ガタガタ。。。荒れている。
 そしてところどころで工事をしていてジャリ道。ジャリ道は大型オンロードバイクには少々厳しい。車に道を譲りながら進む。

 50分ほどで、登山口の折立に到着した。
 駐車場には車が少ない。もう今日は平日なのだ。
 駐車場にバイクを停め、余計な荷物をバイクにくくりつけて出発だ。
 時刻は午前8時50分。
 2年前の夏に来たときは、登山客でごったがえしていたこの登山口も、いまはまったく人がいない。静かだ。
 登山口にある休憩所に入る。ありゃま。人がひとりいた。こんにちわ。その人は登山計画書を書いていた。
 みちおも登山計画書を書く。そして備えつけの箱に入れる。

 カナダやニュージランドの登山計画書は、駐車した車の場所、プレートナンバー、着ているジャケットの色など、細かい記載が要求される。そして下山届けが 義務づけられている。しかし日本の計画書にはそのような記載はないし、下山届けも義務化されていない。
 日本の登山届は、海外の登山届に比較して、実際の遭難捜索にはちと不備があるような気がする。
 

折立の登山口。左の建物は休憩所。大きな木の左横が登り口。


 樹林帯を登っていく。登山初日、ず〜っとバイクに乗ってきた体に登りがこたえる。
 まあ今日はゆっくり行こう。
 すぐに暑くなり、上着を脱ぐ。と、ぽつりぽつりと雨が降ってきてしまった。また上着を着るのがめんどくさい。幸い雨は、ぽつりぽつりのままなので、その まま行くことにする。

 ヘリコプターの音がさきほどからうるさい。どうやら荷揚げを行なっているようだ。何回も昇ったり降りたりを繰り返している。。。

 樹林帯を抜け、笹原に出る。展望が開けた。この先登る太郎平が見える。まだ先だ。
 昨日買った 「バナナ饅頭」 がおいしい。この 「バナナ饅頭」 は、みちおの登山行動食の定番にしよう!

 さて出発。と、すぐに雨が降り出した。やれやれ。上着を着る。

 笹原には自然保護のため木道がひかれている。木道をタンタンと登って行く。
 ヘリコプターが、昇ったり降りたりうるさい。
 出会った人は数人だけだ。 ヘリコプターはともかく、実に静かな山行だ。
 2年前の夏に登ったときは、たいへんな人だった。そして、直射日光があたり、暑くてたいへんだった。
 今日は涼しくて全然楽だ。荷物も軽いし。

 11時30分ころ太郎小屋到着。コースタイム5時間のところ、半分の2時間30分で着いてしまった。ゆっくりと登ったつもりだったが。
 ややガスがかかったり、かからなかったりの天気だが、薬師岳、北ノ俣岳の展望がいい。


太郎平小屋

 小屋前に御夫婦がいた。話を交わす。今日は薬師岳山荘まで行くという。
 自分はどうしよう。まだ12時前だ。ここ太郎平小屋に泊まるには早すぎる気がする。明日降りていく予定の薬師沢にある薬師沢小屋までは2時間だ。そこま で 降りれば明日の行程が楽になる。
 しかし、稜線上にあるこの太郎平小屋なら、沢の中にある薬師沢小屋よりも、夕刻の展望がきれいだろう。。。。
 さて、どうしようか。

 とりあえず、おなかがすいた。そして寒い。
 そうだ!
 カップラーメンを食べよう!
 小屋でカップラーメンを買う。400円だ。もちろんお湯を入れてくれる。
 おいしい! 
 山で食べるとカップラーメンもおいしいのだ。

 かわいい女の子がひとりやってきた。小屋で生ビール900円也を買って呑んでいる。こんな昼間から。。。
 声をかける。
 話を聞くと、なんと上高地から入り、槍沢を登り、ここまで縦走してきたという。女の子ひとり、しかもテント泊だ。今日は、10分ほど先にある太郎兵衛平 テント場にテントを張るとのこと。この先、薬師岳を経由して立山へ抜けるという。時間がとれたら剣岳にも登るという。
 すごい。なんともパワフルな女の子だ。

 話がはずんで、1時間ちかくも話し込んでしまった。
 この女の子も小屋に泊まればもっとお話できたのになぁ。。。と少々残念。
 「メールしてね」
 と、ホームページアドレスとメールアドレスを書いた名刺をわたす。くれるだろうか。
 女の子は、今宵テントで呑むアルコールを小屋で調達した。カンチューハイと焼酎を買っている。
 「カンチューハイのアルコール度は低いから、焼酎をまぜて濃くするの」
 だそうだ。
 ひぇ〜、そんな呑み方、はじめて聞いた。この女の子は、お酒に関してもパワフルなようだ。
 しかし、小屋の人曰く、
 「この焼酎、水割りになっていて、アルコール度、低いんです。」
 ありゃま、だめじゃん!

 女の子は、テント場へ去って行った。
 みちおは、この小屋に泊まることに決めた。受付をする。明日の昼弁当も含めて、1泊3食で、9200円だ。
 部屋へ案内される。2階の4畳半ほどの個室に案内された。
 少々寒い。布団を出してかぶっていたら、うつらうつらしてしまった。


太郎平小屋の部屋

 どのくらい寝たのだろう。ドアをノックする音で目がさめた。
 同室になる人が入ってきた。若い男性だ。明日、薬師沢小屋に降りて釣りをするとのこと。明後日は薬師沢をさかのぼりながら釣りをするとのこと。実家が富 山で、富山に帰省してここに来たとのこと。

 夕刻、小屋を出て、すぐ裏の太郎山に登る。小屋からわずか5分ほどの登りで山頂だ。太郎山標高2372m。
 ひとひとりいない静かな山頂。薬師岳、水晶岳などの展望がすばらしい。北ノ俣岳はガスかかかったり晴れたり。黒部五郎岳は残念ながらガスの中だ。
 しばらくたたずむ。やはりいいな〜、山は。


太郎山より太郎平小屋


手前が太郎兵衛平、奥のピークが薬師岳(2926m)

 小屋にもどり、今度は太郎兵衛平を散策する。気持ちいい。
 そうだ、さっきの女の子がいるテント場へ行ってみよう!
 太郎兵衛平のはしっこまで出たら、少々下の方にテント場が見えた。2年前は、ここにテントを張ったっけ。なつかしい。
 6張ほどのテントが張られているの が見える。
 う〜む、ここ降りてテント場行っても、さっきの女の子のテントがどれだかわからないぞ。ストーカーと思われるのもいやだしなぁ。。
 と、少々弱気になっ て、テント場へ行くのはあきらめた。


太郎兵衛平テント場


太郎山(2372m)と太郎平小屋

 小屋に戻る。
 部屋に入ると、もう一名の同室者がいた。今宵はこの部屋は3名だ。連休中なら、ふとん1枚に2名という大混雑だろう。今夜はすいている。ゆっくり寝れそ うだ。
 食事は5時30分から。食堂へいく。全部で15名ほど? 少ない。
 食堂にはテレビがあった。天気予報を見る。明日の天気は、あまりよくないらしい。


夕食

 食事は、お肉や煮つけや、デザートもある。
 おいしい!おいしい!  ご飯をおかわりする。

 食後、食堂でお酒を呑みながら、同室の釣り師さん、もうひとりの男性の3名で雑談をする。

 夜9時、消灯だ。
 昼寝をしたため?なかなか寝つけない。
 おやすみなさい。。。。



9月21日(水):太郎平小屋から高天原山荘へ。そして高天原温泉!

 朝5時すぎ、起床。
 ねむいよ。。。。
 5時30分、朝食。おいしい。
 食堂で朝食を食べたのは、昨日の半分くらいの人。あとの人は、早々に出発しちゃった? みな早いなぁ。。。


朝食


 部屋で出発の準備。
 釣り師さんとお話しをする。釣りはフライフィシングだそうだ。自作のフライ(疑似餌)を見せてもらった。いろいろな種類のフライ40個くらい? いろい ろな種類の虫に似せてつくってある。すごいなぁ。。。 

 お昼のお弁当を受け取り小屋を出発したのが、6時30分少し前だった。
 天気は晴れ。

 まずは薬師沢へと下っていく。下って、下って。。。。
 薬師沢へ下ってから、今度はほぼ水平な登山道を行く。湿原の中にひかれた木道の上を歩いていく。
 この登山道はとても気持ちいい。大自然満喫だ!


沢を渡る。


笹原の中を進む。


 太郎平小屋から薬師沢小屋まで、コースタイム2時間15分のところ、1時間30分ほどで到着した。
 小屋前では、吊橋の補修作業とやらで、数人の工事関係者がお仕事をしていた。こんな山奥で朝早くからお疲れさまです。

 薬師沢小屋から高天ヶ原へ行くには、2通りのルートがある。
 ひとつは、天上の楽園 「雲ノ平」 を経由するルート、もうひとつは、沢沿いに行く 「大東新道」 だ。
 薬師沢から雲ノ平へ行くルートは2年前の山行で通った。まずは2時間10分の急な登りが待っている。木の枝をつかみながらの急な登りが延々と続くのだ。 2年前はテント もかついでの、真夏の登りだったので、とてもつらかったなぁ。
 大東新道は行ったことがない。このルートは、まずは沢沿いに進み、そして沢、尾根を何回か横断しながら高度を稼いでいく。複数の沢を通過するので、ルー トの荒れ状況が心配だ。
 薬師沢小屋の前に、大東新道の状況が書かれてあった。今年の6月の豪雨の影響で、一部ルートが要注意になっているという。危険なので重荷の人は行かない 方がいいとも書かれている。うむむむ。。。
 で。やはり行ったことのない、大東新道のルートを行くことにした。

 時刻は7時50分。まずは薬師沢小屋前の吊橋を渡る。短いけど人一人分の幅しかない板の上を歩くのは少々緊張する。対岸に渡ると鉄の梯子を降りる。そこ から黒部川の沢を歩いていく。
 すぐに雲ノ平への分岐になる。雲ノ平への道は急な登りだ。ここだけが急なのではなく、この先2時間、同じような急な登りが続くのだ。雲ノ平への道は見送 る。大東新道は、そのまま黒部川の沢を進む。
 徒渉(沢を渡ること) はない。岩の上等を進んでいくが、特に危ないところはない。ただし、増水時には注意を要するようだ。


渡り切ったあとに振り返り吊橋を撮影。
左奥にあるのが薬師沢小屋。工事用のやぐらが建っている。



鉄はしご


吊橋と薬師沢小屋。


黒部川。この右側を沢沿いに進む。

 約1時間進んだところで、右手に大きな沢が合流してくる。A沢だ。
 かなり荒れている沢で、上部、土石流の跡がすごい。その沢を徒渉で横切る。落石が怖い ので、さ、さ、さ、っと、横切る。
 A沢を横切るとすぐに、沢はトロ状(深み)になる。薬師沢小屋に書かれていた注意書きにもあったが、このトロの部分は、トロの上の岩棚の上を進んでい く。要注意箇所だ。
 その岩棚の上に乗ってみると、うむむむ。。。。。
 足を乗せる部分がトロ側に向かって傾いている。しかもその岩は濡れていて黒い苔が生えている。そして ホールド(手でささえる部分)は、逆層の岩になっていてつかむことができない。
 う〜〜ん、これは困ったぞ。。。
 その箇所はわずか5mほどの距離だけど、すべり落ちたら高さ4mほどのトロにドボンだ。死にはしないだろうけど、ケガはす るだろうなぁ。。。
 緊張しながら、その箇所を越える。


A沢を越えてすぐの、要注意箇所。
この茶色い岩の上部をトラバースしていく。



 ふぅ。どうにか無事通過。たしかに、今回は軽い荷物だったから通れたけど、重い荷物だったら無理だったかもしれない。
 そして、岩棚はまだ10mほど続く。今度はスタンツ (足を置く部分) とホールド (手でささえる部分) が結構しっかりしているので、3点支持でトラバース していく。もちろん落ちたらケガするので、緊張する部分だ。
 その箇所も無事通過。
 ふぅ。。。

 ちょっと行くと、今度はオーバハングした岩に縄ばしごがかかっていて降りていく。
 薬師沢小屋の注意書きに、「腕力がない方は要注意」 と書かれていた箇所 だ。
 まあ、長さが5mもない程度なので、たいしたことないのだが。。。
 でもこれも重い荷物だったらたいへんだったかも。


縄ばしご

 その後は特に危険な箇所もなく、岩の上を進んでいった。
 少し行くと、右手にB沢が合流する。そのB沢の合流地点で、ばったりと数名の人に出会った。これから薬師沢小 屋方向に向かう、3人組パーティーと、2人夫婦の方だ。この先の様子を聞かれ、ここから見てA沢手前になる岩の状況を教えてあげた。
 逆に高天ヶ原方向の状況を聞くと、
 「いやぁ、大変ですよ」
 と言われた。
 う〜ん。。。。

 本流を離れ、B沢を登っていく。少々のぼってすぐに左手の尾根に登る道へ入る。尾根に向かって急登を登っていく。
 尾根に出たらその尾根沿いにまた急登を登っていく。そしてしばら く行くと今度は下降だ。
 C沢に出る。C沢を徒渉してまた尾根に向かって登って行く。
 また下降して今度はD沢に出る。D沢は2本あって、徒渉、少々登り下 り、また徒渉となる。
 そしてまた登り、下り、E沢徒渉、登り。。。。

 登ったり、降りたりで、とにかく疲れる。しかし登りは急登で長く、下りは少しなので、確実に高度を稼いでいる。
 E沢を過ぎると、沢を離れ、急斜面をつづら折れにえっちらおっちらと登っていく。
 長い登りの先ののち、尾根の上に出た。
 高天原峠だ!
 やった〜、やっと峠まで出てきたぞ!

 下ってくる尾根上の道が合流する。雲ノ平 からの道だ。
 峠を越えてくだって行く登山道は、高天ヶ原に出る。
 薬師沢小屋からこの高天原峠まで、コースタイムは4時間。実際には3時間かかった。
 いや〜、疲れた、疲れた。。。
 置かれていた道標には、
 「あせらず行こう。お花畑と温泉がまっているよ。」
 と書かれてあった。
 そう、もう少しで、温泉だ!!


高天原峠

 時刻は11時すこし前。ここで少々休憩しよう。
 太郎平小屋でもらったお昼のお弁当を開けてみる。中身は、チマキ3個とパックの烏龍茶。チマキは笹にくるまれている。チマキを開けるのに手がベトベトに なってしまったが、ちゃんとお手拭きもついていた。
 おいしい。チマキを1個だけ食べて、さあ、出発だ。


太郎平小屋から出たお弁当。ちまき3個と烏龍茶。


 峠を沢に向かって下っていく。30分ほど下って沢に出る。
 沢を渡る橋は流されてしまったらしい。少々上流にあがり、新しく作られた小さな橋を渡る。
 できたての新しい橋を渡ってから、水平な樹林帯を進む。

 と!
 突然、樹林が切れ、視界が広がる。広い湿地帯に出た。
 すばらしい!
 一面にひろがる広い湿地!
 右手には、岩峰の水晶岳がそびえる!
 左手には、薬師岳がそびえる!
 まさに、楽園だ!
 このすばらしい風景をいきなり目のあたりにして、思わず、ウルウルしてしまった。
 ここが高天原だ!
 いやぁ〜〜、すばらしすぎる!!


高天原から薬師岳方面を見る。


 少し離れた樹林帯の中に、赤い屋根が見え隠れしている。あれが高天原山荘だろう。自然の中で目立たないようにしているのがいい。
 小屋の前に出た。いかにも山小屋!という雰囲気を出している、すてきな山小屋だ。真ん中部分がひしゃげて、いまにも崩れそうだ。それがまたいい!


高天原山荘


 「こんにちわ」
 声を掛けるが、まったくだれもいないようだ。どこかへ出ているのかな。
 時刻は12時前だ。小屋の前のテラスにあるテーブルに座る。明るい日差し&すてきな展望を眺めながら、お弁当を出した。
 チマキの残りを食べる。たったひと り、大自 然の中でのすてきな昼食。
 いいね〜、いいね〜〜! 

 食事が終わって、まったりと風景を楽しんでいると、男の人がひとりやってきた。雲ノ平にテントを張り、ここまで降りてきたという。温泉に入りに来たとい う。その人は温泉方向へ行ってしまった。

 少々まったりして、で、みちおも温泉へ行くことにした。
 小屋から歩いて約10分。温泉は沢の中にあった。
 沢にかかっている渡し板を渡ると、そこに女性用の温泉。囲いがしてあるので女性も安心して入れるだろう。その少し奥に露天風呂。8m×3mほどの湯船 に、白濁したお湯が満々と湛えられている。湯船に差し出されたホースからは、温泉が常に出ていて、まさに源泉かけ流しである。
 すばらしい! すばらしすぎる!!
 こんな山奥に、こんなすばらしい温泉があるなんて。
 この露天温泉に入るには、どこから入るにしても山道を2日以上歩かなくては入れない、日本で最も山奥にある秘湯だ!!

 先の男性が入っている。みちおもすっぽんぽんになり温泉に入る。
 いやぁ〜〜、気持ちいい〜〜〜!
 やや高めながらも、ちょうどよい温度! 白濁した湯、湯の花がいっぱいだ。

 あぁ、来てよかった。。。。
 長年の夢、実現。。。\(^o^)/

 この露天風呂の上の方には、女性専用の露天風呂がある。また対岸には、2m×2mの小さな湯船があった。すっぽんぽんのまま沢を渡り対岸の小さな湯船に 入る。いやぁ〜、いいね〜〜!!!
 沢の中にあるので、水晶岳や薬師岳は見えないが、周りの山の緑がきれいだ。もう1週間ほどあとだったら、紅葉がきれいだろうなぁ。。。。
 大自然の中、素敵な展望とそして素敵な温泉、独り占めだ!
 湯の中で、体も、心も、ふにぃ〜〜〜!! となっていく。。。。


女性用温泉


女性用露天風呂 (はしご登った右側の囲いの中)


大露天風呂


野趣風呂

 時のたつのも忘れて、のんびりとしてしまう。
 いいね〜、いいね〜、いいね〜〜!

 しばらくして、若い男性がやってきた。湯の中で話をする。彼も雲ノ平にテントを置いて、ここまで温泉に入りにきたという。上高地からテントで縦走を続け ているという。

 雲ノ平にテントを置いてここ高天原温泉に来ている人たちは、2時間以上の登りで、雲ノ平にもどる必要がある。ここ高天原にはテント場はないのだ。ゆっく りしていられずに、後ろ髪ひか れる思いで、帰って行った。
 みちおは、高天原山荘に泊まるのでゆっくりできる。

 しばらくすると、数名の男性、女性がやってきた。小屋に泊まる方々だろう。ちょっとうっとおしいので、みちおは温泉を出た。
 そして、ここから歩いて20 分かかる、竜晶池へ向かうことにした。
 竜晶池へ向かうには、女性専用風呂の横を通る必要がある。囲いがあるので見えはしないが、へんな誤解を受けるといけ ない。
 「すみませ〜ん! 竜晶池へ向かうので、横、通りま〜す!」
 と声をかけた。
 「どうぞ〜」

 樹林帯の山道を進むと、道端に赤くきれいなキノコが生えていた。白い茎に赤い傘。傘には白い斑点がある。きれいだなぁ。。なんというキノコだろう。でも 赤い 色や白い斑点がいかにも
 「わたしは毒キノコよ」
 と言っている。
 あとで小屋にあったキノコ図鑑で調べてみたら、このキノコは「ベニテングタケ」 らしい。やはり毒キノコだそうだ。死にはしないが、幻覚をみた り、神経にきたり、胃にきたりするらしい。


ベニテングダケ?

 10分ほどで、竜晶池に出た。
 もちろん、だ〜れもいない。静かだ。。。鳥の声が聞こえるだけだ。竜晶池の後ろには、赤牛岳がそびえる。
 ここは夢ノ 平と呼ばれる。まさに夢のような風景だ。
 竜晶池に沿って歩いていく。池の反対側に行くと、今度は池の向こうに、薬師岳がそびえる。素敵だ。
 座り込む。
 だ〜れもいない。みちお、ひとりぼっちで、大自然を満喫する。。。。
 いいね〜〜〜〜〜!


竜晶池。バック右奥が薬師岳。


中央奥が、赤牛岳。


右側が水晶岳。


 登山道をもどり、温泉にまた出る。ふたたび温泉につかる。
 そして小屋へと戻る。

 すでに時刻は5時をすぎていた。小屋には管理人の方がいた。遅くなってすみません。
 すぐに宿泊の手続きをする。1泊3食で9200円だ。
 管理人さんに、明日登る予定の温泉沢のルートについて状況を聞いた。地図上では、熟達者向きルートとされていて、ちと心配。管理人さん曰く、
 「高齢の方の場合には引き止めたりしますが、若い方には問題ありません」
 とのこと。安心する。

 2階、というか屋根裏部屋が寝る場所になっていて、布団が並んでいる。みちおは窓際の 「7CD」  という場所を指定された。実は、この 「CD」 でひとつの布団。混雑するとき は、「7C」 と 「7D」 に分けられ、ひとつの布団で2人が寝ることになる。
 今日はもちろんすいている。なので、ひとつの布団 「7CD」 で寝ることができる。平日でよかった。。。


部屋


ランプ

 暗くなって、部屋にはランプが灯る。ランプ、いいね〜〜!
 5時30分、夕食の時間だ。今宵の宿泊者は10数名。薄暗いランプの下で夕食だ。
 夕食は、天ぷら、冷や奴、ソバもある。
 おいしい!
 テーブルは2つに別れて、みちおのいるテーブルは、単独行の男性ばかり5人になった。あまり話が弾まず、静かに夕食を食べる。
 別のテーブルには、女性もいて結構にぎやかだ。
 あっちのテーブルに加わりたいなぁ。。。
 ここにはTVはなく、ラジオが流されていた。明日の天気を聞くためだ。天気の前に相撲中継が流れていた。琴欧州の連勝を伝えていた。強いなぁ。。
 天気予報は、天候の悪化を伝えていた。


夕食

 食事が終わり席を立つ。隣のテーブルではまだ歓談が続いている。ふと聞くと、屋久島の話をしている。
 「屋久島、自分も登りましたよ!」
 と、無理やり、話に加わった。

 みんなも食事を終えて、玄関にあるストーブの前で歓談。ストーブが暖かく気持ちいい。
 みちおは下からもってきたカンチューハイを開けて呑む。おいしいね〜。
 暖かいストーブを囲み、薄暗いランプの下、キノコの話や、山の話で時が流れる。すてきなひとときだ。
 横浜から来られたという御夫婦、マラソン大会にも参加されているという。話がはずむ。

 もし天気がよければ、満天の星空を見ながらの露天風呂も楽しめただろう。残念ながら雲が出てきて星は見えない。またいつか来て、満天の星空露天風呂を体 験してみたい。

 午後8時、太郎小屋よりも1時間早く消灯時間だ。
 おやすみなさい。。。




9月22日(木):高天原から温泉沢、読売新道経由で平ノ小屋へ

 天気は、雨。小雨がぱらついている。そして風が強い。
 今日は、温泉沢を登り、2900mの稜線に出る。雨が強いと増水の危険もあり、温泉沢の登りが厳しい。でもこの程度の雨なら大丈夫だろう。しかし、風が 強いのが気になる。 ここでこの様子なら、稜線上は暴風雨だろう。
 他の方々は、大東新道を薬師沢小屋へ向かう予定だったが、雨による沢の増水を気にして、雲ノ平経由に変更するという。
 「この程度の雨なら、おそらく増水は心配ないですよ。」
 とアドバイス。みな、大東新道経由で行くことに決めたようだ。はははは、みちおの責任重大だ! A沢手前の危険個所についてアドバイスする。う〜ん、大 丈夫だったかな?

 5時30分、朝食。おいしい。


朝食

 ストーブの前に、ミッフィーのタオルが干されていた。持ち主の女の子に、
 「ミッフィーふぁんですか?」
 と聞くと、
 「いや、違います。これはもらっただけ」
 との返事。う〜ん、残念。

 お弁当を受け取る。小屋入口に張り出されている温泉沢ルートの情報に目をとおす。
 6時30分少し前に小屋を出発する。
 残念ながら小雨が降っている。


温泉沢ルートの情報


大東新道ルートの情報


 小屋を出て、まずは昨日の温泉に向かう。今日、この温泉沢ルートを登っていくのは、みちお一人だけだ。
 10分ほどで温泉に到着。
 朝温泉に入りたい!入りたい!入りたい! 
 という 欲求をぐぐぐっと堪えて、手だけ入浴して我慢した。
 今日はこの先、長丁場になる。少しでも先をいそがなくては。。。。雨も降っているし。
 高天原温泉、またくるぞ〜〜!
 そのときには、満天星空温泉と、贅沢朝露天風呂を満喫しよう!

 荒れた温泉沢を登っていく。
 岩ごろごろの沢を徒渉を繰り返しながら登っていく。赤いペンキマークがところどころ岩に付けられていて、徒渉ポイント も分かりやすい。ペンキマークを見逃さないのように注意しながら沢を登っていく。


温泉沢

 1時間近く登っただろうか、左手上方に、ロッククライミングが楽しめそうな岩壁が見えてくる。その岩壁が左手後方に見えるようになる位置で、沢は右側に 支流が出てくる。その合流点には 支流側に3本の赤矢印。
 これが 「支流に入れ」 のマークだ。
 支流を300m登ったところに、尾根への取り付きがあるはずだ。取り付きポイントを見逃さないように注意しなくては、と、キョロキョロしながら沢を登っ ていくと、
 あれま! 沢のど真ん中に、立派な道標が立っている!
 取り付きポイントだ。これなら取り付きポイントを見逃すこともない。しかし、こんな立派 な道標をよく沢の真ん中に立てたなぁ。増水したら、いっぱつで流されてしまうと思うが。。。
 沢の奥の方を見ると、立派な滝が見える。登山用の地図に書かれている 「ナメリの滝」  は、もっと下流のはず。途中に見あたらなかったけど。では、目の前の 滝はなんという滝なんだろう?

 その道標の左手に尾根への取り付きがある。尾根への取り付きには、5mほどのロープが1本ぶら下がっていた。
 そこから尾根に入る。踏み跡はしっかりしているのだが獣道のように狭くヤブに囲まれた 急な道だ。



支流への分岐。3本+1本の矢印。


支流


尾根取付点にあった道標。ここから左手の尾根に取りつく。
奥に滝が見える。



滝(名称不明)


尾根への取りつき点。ロープが1本ぶら下がっている。


狭くて急な登り

 あえぎながら登っていく。とにかくあとは稜線に向けて高度をかせぐだけだ。
 樹林帯の中の、ほんとうにほんとうに急な登りが続く。

 樹林帯を抜け森林限界を越えると、そこには暴風雨が待っていた。
 時々体が倒されそうになるような風と、横殴りの雨だ。雨の量は少なめなのでまだ助かっ た。もちろん周りは真っ白で展望などない。とにかく1歩1歩登っていくしかない。所々痩せた尾根、とにかく急だ。う〜ん、急だ!


ガスの中の登山道


 稜線上の終点、温泉沢の頭を目指す。
 「あそこが温泉沢の頭だな。」
 と思い登ってみるとその先にはまた尾根が。。。
 何回も、何回も、そんなニセピークにだまされながら登っていく。

 そして、9時すこし前、小屋から2時間30分で温泉沢の頭 (2904m) に到着!

 地図上では、温泉沢の頭のちょい北側の分岐点に出ることになっているが、登り着いた場所には 「温泉沢の頭」 の標識が立っていた。あれれ? 本当のピークはもう少し南なのだろう。
 ガスがかかっていて展望はまったくない。もちろん、だれもいない。すっごく強い横殴りの風が吹き荒れる。
 はぁ。。。
 ピークを少し風下側に回ったところで風が弱くなるところを探して腰を下ろす。
 あ〜、疲れたよぉ〜!!
 クリームパンを口に少々入れる。濡れた体、そして強風。
 寒い!寒い!
 降りるぞ〜〜〜!


温泉沢の頭


 水晶岳より温泉沢の頭、赤牛岳を経由し黒部湖へまっすぐ北上しながら降りていく尾根を読売新道という。
 東側には烏帽子岳を抱える後立山の稜線、西側には 薬師岳を抱える稜線の2つの大きな稜線に挟まれた、日本国内屈指の本当の山奥に位置する。
 烏帽子岳から西側を見ると、あるいは、薬師岳から東を見ると、赤牛岳を抱える読売新道は目の前に大きくそそり立ち、とても立派でその存在感が大きい。
 う 〜ん、かっこいい。地図上でも長くまっすぐ延びた尾根は目をひく。
 登りたいなぁ。。。。と長らく心の片隅に残してきた。
 途中にエスケープルートのない長大な尾根であるが故に、体力のある者のみが入る、登山者の少ない尾根である。体力の要求される山ゆえ、実行するチャンス を逃し、北アルプスのあちこちへは行っていながら、この読売新道だけはぽっかりと穴の空いたように残されていたのだ。
 今回の山行の目的は、日本最秘境の温泉 「高天原」 と、この 「読売新道」 だ。

 暴風雨の中、温泉沢ノ頭を出発する。次の目的地は、赤牛岳だ。
 稜線上の道が続く。大きな岩がごろごろしたりする場所もあるが、危険はなくなだらかな登山 道だ。もし晴れていたら、右手に烏帽子岳、左手に薬師岳、前方に黒部湖、そして多数の北アルプスの名峰がみえる大パノラマの、すばらしい道だったにちがい ない。
 う〜〜ん、なんとも残念!
 いまはとにかく、暴風雨に耐えながら、黙々と歩くしかない。
 温泉沢ノ頭から奥黒部ヒュッテまで、コースタイム7時間のロングコースだ。

 1時間30分ほど、暴風雨に耐えながら黙々と歩いていたら、突然自分の目の前に人が立っていて、びっくり!!
 強い風と雨を避けるため下向きに歩いて、そして聞こえる音は風の音のみだったの で、すぐ近くにまで人が近づいたのが気がつかなかったのだ。まさかこんなところに人がいるなんて思っていなかった。そんなところに自分はいるのだが。
 今日の山行中、はじめて出会う人だ。男性。前から来たということは、長い読売新道を登ってきたことになる。すごいなぁ。。。
 ちょこっと話を交わす。
 「すっごい天候になっちゃいましたね。下にある奥黒部ヒュッテを今朝出てきたのですか?」
 と聞くと、ヒュッテよりすこし上部でビバークをしたという。へぇ??
 「もうすぐそこが、赤牛岳ですよ。」
 と男の方。
 え? ありゃま、もう着いちゃったんだ。。。
 なお、その方曰く、御夫婦2名がすぐ前を、みちおと同じく黒部湖側にむかっていると言う。

 その方と別れて、わずか数10mで赤牛岳山頂に到着した。時刻は、10時40分。
 もちろんだれもいない。風雨が強い。
 行動食を少しだけ食べて、早々に出発する。


赤牛岳ピーク

 急なガレ場を下ったり、大きな岩がごろごろしている岩の上を歩いたり、広いなだらかな稜線を歩いたり、馬の背状の稜線を歩いたりして、徐々に高度を下げ ていく。
 天気がよかったら、楽しい道なんだろうなぁ。。。


ガスの中の、やせ尾根


 下を見ながらとぼとぼ歩いていると、すぐ目の前に、、、、
 あれま!! 雷鳥だ!
 雷鳥の子供10羽ほどが集団で歩いていた。なかなか、かわいい。
 雷鳥はいままで何度も見たことがあるが、子供を集団で10羽も見るのは初めてだ。しかもこんなに激しい風雨のなかで、強風に飛ばされることなく平然と歩 いている。
 雷鳥はとても臆病な鳥だ。イヌワシなどの鳥に攻撃されるのを避けて、昼間はハイマツの下などに隠れているが、早朝や夕方、あるいは天気の悪いときなどに 行動するという。だから 「雷鳥」 という名がついたらしい。まさに今、その悪天候の中を我が物顔で歩いている。

 しばらく行くと、
 「読売新道 7/8」
 の標識があった。赤石岳を 「8/8」 として、奥黒部ヒュッテのある東沢出合いまで8等分されているらしい。悪天で展望の写真もとれないので、この標識を 撮るしかない。。。


読売新道 7/8


 悪天の中を歩いていく。下を見ると真っ白い石が点々としている。周りをみると、あちこちに白い石。どうやらこの一帯だけ大理石?が多いようだ。とてもき れいな石が転がっている。もちろん、国立公園内なので持ち帰ることは厳禁だ。もっとも疲れているいまは、少しでも荷物を重くする気力はないのだが。

 暴風雨の中、でも着実に高度を下げ、次に 「6/8」 が出てきた。
 そして、「5/8」 で、森林限界の下に入る。
 と、とたんに暴風がやんだ。木のありがたさが身に沁みる。
 あとは樹林帯の登山道をひたすら下っていく。


読売新道 6/8


読売新道 5/8


読売新道 5/8 から、森林限界の下になり、樹林の尾根となる。


 ふと前方に、人がいた。ご年配の御夫婦だ。赤石岳の手前で会った人が、
 「すぐ先に御夫婦が下っている」
 と言っていた、その御夫婦だろう。こんなことを言っては失礼だが、あまり一般の人が入らないこのロングコースに、ご年配の御夫婦がいることにちょっと びっくりだ。
 あいさつを交わす。今宵、奥黒部ヒュッテ泊まりを予定していると言う。みちおも奥黒部ヒュッテの予定だ。
 「ただし、結構順調に下れているので、さらに2時間先にある平ノ小屋泊まりにするかもしれない」
 とお二人に話をした。
 
 お二人を抜いて、先へ進む。雨はやんだ。でも樹林帯なので展望はない。時々、木々の間から、遠くの山が見える。
 黒部湖が見えてきた。
 長かった読売新道も残りわずかだ。



読売新道 4/8 。やっと半分!


読売新道 3/8


樹林の中の登山道


読売新道 1/8

 1/8の道標だ。もうあと少し!

 下りの道が水平になったころ、道端に立派な遭難碑が置かれてあった。
 「黒部ヒュッテと平ノ渡しの間での土石流にて2名亡くなった。」
 とのことだ。遭難碑に向かって手を合わせる。

 そして、登山道の前が、突然視界が開け、そこには奥黒部ヒュッテが建っていた。
 やった〜!
 長年の夢、読売新道、終着! ウルウル。。。
 時刻は13時50分。
 温泉沢の頭より、コースタイム10時間50分のところ、7時間20分で来てしまった。

奥黒部ヒュッテ

 だれもいない。静かな樹林帯の中に、奥黒部ヒュッテは建っていた。
 入口部分には、平ノ渡し船の時刻表が大きく書かれていた。ここから平ノ小屋へ行くには、2時間登山道を進み、そこから船で黒部湖の対岸に渡る必要があ る。
 船の出る時刻は、6時20分、10時20分、12時20分、14時20分、17時20分だ。
 奥黒部ヒュッテに泊まって明日の朝出発する場合、6時台のでは早すぎるし、10時台のではやや遅い。もし今日平ノ小屋まで入ってしまえば、明日は船を気 にする必要がなくなる。
 いま、時刻は14時少し前。もちろん、もう14時台の船は間に合わない!
 次は17時台である。船の終着場所すぐに平ノ小屋はあるのだが、その時刻に着いて夕食も出してもらえるだろうか?

 入口に書かれた時刻表を見ながら悩んでいると、ヒュッテの中から、男の人が顔を出してきた。
 「こんにちわ。おつかれさまです。」
 「こんにちわ」
 ヒュッテのご主人のようだ。
 はじめは泊まり客だと思ったのだろう。でも、時刻表を一生懸命見るみちおを見て、
 「14時のは無理だから、次は17時だね」
 と言う。
 「この17時の船に乗って、平ノ小屋で夕食は出してもらえますか?」
 と質問をしてしまった。
 「系列小屋じゃないから、わからないなぁ。。。」
 と言う。
 「あ、すみません。。。。。」
 「ちょっと待って。。。」
 と、ご主人は、無線交信を始めた。そして平ノ小屋を呼び出して、
 「17時台の船で男性1名行くが、夕食大丈夫か?」
 と連絡をとってくれたのだ。う、う、申し訳ない。。。。
 夕食、大丈夫とのこと。平ノ小屋に行くことにする。
 「ここから渡し場まで2時間。ハシゴとかあるけど。
  まだまだ時間があるので、休んで行きなさい。水はあそこにあるので、ご自由に。」
 「ありがとうございます。」
 う〜、なんと親切な。。 ありがとうございます。
 「あとから、御夫婦2人が来ます。お二人はここに泊まると言ってましたよ。」
 と言っておく。

 とりあえず、小屋の前のテーブルに座る。時刻は14時少し前、ちょっと遅くなってしまったが、高天原から持ってきたお弁当を広げる。おいしい。
 木々がきれいだ。自然の中で食べる食事はおいしいなぁ。。。
 読売新道を縦走できた喜びもかみしめながら、お弁当を食べる。


高天原山荘からいただいたお弁当

 
 しばらくすると、御夫婦もくだってきた。
 「おつかれさま〜」
 「私たちも、平ノ小屋まで行くことにします」
 え”! さっき、ここの小屋のご主人に言っちゃったよ。ここ泊まるでしょうって。
 夕食が心配なので小屋の主人に平ノ小屋に無線連絡してもらったことを御夫婦にお話した。この御夫婦のことは、どうしよう。。。
 とりあえず、小屋に行き、主人に話をする。御夫婦が来たけど、同じく平ノ小屋まで行く、と。
 ご主人、ちょっと、ムッとした感じになって、でも、無線でまた平ノ小屋を呼び出して、夕食の準備の連絡をしてくれた。無線が終わってもまだ、ムッとして いる。
 なんだか、みちおが御夫婦に悪知恵を与えて、奥黒部ヒュッテのお客さんを奪ってしまったような形になってしまった。今晩は奥黒部ヒュッテの客はゼロだろ うなぁ。奥黒部ヒュッテのご主人、ごめんなさい。

 御夫婦は先に出発した。みちおは、もう少々休んで出発。ご主人にあいさつして出発しようと思ったが、いない。。。ちょっと心残り。ごめんなさい。
 「奥黒部ヒュッテ、今度泊まりに来ますよ〜」
 と心の中で言いながら出発した。

 奥黒部ヒュッテから平ノ渡しまでは、地図上のコースタイムは2時間だ。黒部湖に沿って、ほぼ水平な道が地図には書かれている。これを見れば、楽ちんな散 策コースとだれもが思うだろう。ところが、、、、

 奥黒部ヒュッテを出て、すぐに大きな東沢を渡る。川沿いの広い登山道を進んでいく。天気は曇り。
 読売新道を降りてきたばかりなので、結構疲れてはいるの だが、やはり水平な道は楽ちんだ。コースタイム2時間のところ、次の船の出航まで3時間近くもあるのだから、自然をたのしみながらのんびり行こうっ と。。。。
 しか〜し、その状況は、ほんのわずかで終わってしまった。


東沢を横断する丸太橋


 黒部湖を左にみて黒部湖に沿って進んでいく。右側から黒部湖に沢が注ぐ。沢はとても荒れている。
 荒れた沢に一旦おりるのに木のハシゴで降りていく。沢を越 え、今度はハシゴを登る。
 急斜面に作られた登山道は狭い。ところどころ登山道が崩壊していて、急ごしらえの木道を渡る。
 大きく崩れたガレ場を通過するとき は、登山道は大きく斜面を登る。長い木のハシゴを登っていく。そしてまた大きく下る。
 そんな木道、ハシゴの繰り返しなのだ。ハシゴの登り降りがすごく疲れるとともに、常に緊張感を保たねばならないので、それまた疲れる。
 ハシゴから滑った ら、木道からガケに転落したら、、、緊張の連続だ。
 そして、長い、長い。。。。。


崖にへばりつくハシゴ


長い、長い、ハシゴ

 この黒部湖沿いの道、今回の山行の中で、最も厳しい道だった。
 疲れていたということもあるが、それにしてもなかなか手ごわい登山道だ。
 登山地図にはなにも書かれていない一般道になっているが、 「熟達者向け」 って書いてもいいくらいだ。
 もし奥黒部ヒュッテに泊まって、早朝6時の船に乗るためには、ここをまだ暗いうちに歩くことになる。暗い中ここを歩くのは厳しいだろうなぁ。。

 途中で御夫婦を追い抜く。
 「おさきに。。。」

 そして疲れ切った状態で、平ノ渡しへの分岐点に到着した。
 あ〜〜、やっと着いたぞ〜。

 そこから、黒部湖へ降りる。急斜面に黒部湖へ向かって、急ごしらえの木の階段が延びている。そ の先には黒部湖しかない。  え?ここが船着場なの?
 カンバンには
 「下に降りて待っていてください。人影がないと欠航します」
 とあるので、登山道で待つのではなく、その急な階段を降りて待つことにする。ガレた急な斜面なので、荷物を下ろし、物を落とさないように注意しながら休 憩する。
 時刻は16時30分時すぎ。結局、コースタイム2時間のところ、ほぼ2時間かかってしまった。
 船出航は17時20分なので、まだまだ時間がある。ここで ゆっくり待とう。


針ノ木谷側の船着場。黒部湖に向かって没する階段だけ。

 夕暮れの黒部湖。だ〜れもいない。ひとりたたずむ。
 平ノ小屋が対岸にあるはずなのだが、ここからは見えなかった。

 しばらくすると、御夫婦もやってきた。3人で船を待つ。
 御夫婦がガスで湯を沸かしコーヒーを作りはじめたので、みちおも、物を転がし落とさないように注意 しながら、ガスで湯をわかして、即席お汁粉をつくった。おいしい。。。。

 御夫婦とお話をする。
 なんと 「日本1000山」 を目標にしているとのこと。「日本百名山」 は走破ずみ。山と渓谷社が出している、日本の山1000を参照 しながら登っている。今回は日本200名山のひとつである 「赤牛岳」 が目標だった、とのこと。
 1000となると、登山道がなく夏に登れないような山もある ので、山スキーも最近始めたとのこと。
 へぇ〜〜。
 たいへん失礼な言い方だが、ご年配なのにほんとパワフルだ。
 もう仕事は引退されているので、混雑する休日は避けて、平日のみで、お二人で山を楽しまれているとのこと。
 なんとも、うらやましい。

 陽も暮れはじめた17時すぎ、エンジンの音が聞こえはじめた。
 対岸の入江の向こうから船が姿をあらわした。とても小さな船だ。こっちに向かってくる。ゆっくり近づいてく る。
 そして、木の階段が湖に没する場所に船首をぶつける形で着岸した。


やってきた船


着岸

 男性1名の操舵。この方が平ノ小屋のご主人だ。黒部ダムの関西電力の委託で運行しているらしい。乗り賃は無料だ。
 船首部分より船の中に入る。10人も乗ったらいっぱいいっぱいになるくらいの小さな船だ。
 まずは、乗船名簿に名前、住所、年齢を記載する。う〜ん、この 船が沈んだら、この乗船名簿も沈んじゃうよね。と思いながら乗船名簿を記載する。
 17時20分、乗客3名を乗せた船が出航。黒部湖を横断する。
 
 船がちょっと進むと、本来の平ノ渡しが見えてきた。さっきの急こしらえの木の階段は、本来の平ノ渡しが崩壊したために急遽つくられた渡し場らしい。本来 の渡し場には、コンクリートの階段があるのだが、ぐちゃぐちゃにこわれていた。

 わずか10分ほど、船は対岸、平ノ小屋側に到着した。
 船を降りて、長い階段を登る。やはり疲れている。急な階段が足にくる。でも今日最後の登りだ。


平ノ小屋側の船着場


今日最後の登り


 階段を登り切ったところに平ノ小屋が建っていた。
 小屋の前に女性が1名。ハンモックチェアに腰掛けて缶ビールを呑んでいる。
 「おつかれさま」
 小屋の奥さんだ。
 「こんにちわ。よろしくお願いしま〜す。」
 「お風呂も入れますので入ってください」
 お〜! すばらしい!

 小屋は新築らしく立派できれいな丸太小屋だ。
 泥々の体で入るのが、申し訳なく思ってしまうほどきれいだ。
 中に入ると、これまた素敵。とてもきれいだ。山小屋の雰囲気は全然なくて、まるでどこか避暑地のウッディペンションだ。
 2階建て。吹き抜けの食堂。ステレオセットが置かれ、アウトドア関連の本が並べられている。フィシング関連の本が多い。きれいなフライが沢山並んでい る。聞くと1mを越えるイワナがつれたそうだ。すごい。1mを越えるイワナなんて想像ができない。いっしょに来た御夫婦の男性もフィッシングが趣味で、イ ワナ釣りに関して話が広がる。


平ノ小屋


書棚


 2階の部屋へ上がる。6畳ほどの個室だ。今日の宿泊は3名だけなので、この部屋はみちおの個室利用だ。贅沢にも。。。
 さっそく、お風呂に入らせてもらう。ごく普通の家庭にある小さな1名利用のお風呂だ。シャワーで体を洗って、湯船に体をしずめる。ふにぃ〜! 気持ちい い。山小屋でお風呂に入れるなんて、なんという贅沢だ。
 御夫婦もはいらなくてはいけないので、早々に風呂を出る。


6畳個室


 夕食は、肉じゃが。おいしい。
 食後、山小屋ご主人夫婦と、年配夫婦と、みちおの5名で歓談する。フィシングの話、小屋周辺のキノコや高山植物の話、いろいろな野菜作りの話、スキーの 話、話題はつきない。
 特に野菜作りに関しては、年配夫婦も自宅であらゆる野菜を栽培しているので話がはずんだ。
 山小屋の主人は、環境省の国立公園の監視官もしていて、国立公園での高山植物盗掘などの監視も行なっている。その裏話もいろいろしてくれた。ちょっとこ こでは書けないような話も。。。
 みなさん、国立公園内においては、植物1本、石1個、持ち帰ってはいけませんよ! 木道を外れて歩いてはいけませんよ!

 話をしながら、山小屋のご主人はお酒をどんどん呑んでいた。さすが山の人だ。お酒に強い。みちおもお酒を呑もうと思っていたのだが、なんだか呑みそびれ てしまった。


食堂のストーブ


夕食


 9時すぎ、小屋の主人曰く、
 「この小屋は主人みずから消灯破りの小屋だから」
 という。ははははは。。。
 明日の朝食の時刻を聞かれる。早い時刻では5時30分から用意できるという。
 明日は折立へバイクをとりに戻る必要がある。有峰口から折立へ、明日は休日 なのでバスが出る。最終バスは、昼間の12時すぎだ。それまでに有峰口に下山する必要がある。
 ここから黒部ダムまでは、コースタイム約3時間の行程。黒部ダムから観光ルートである 「アルペンルート」 で下山する。ケーブルカー、ロープウェイ、トロ リーバス、高原バス、ケーブルカーと乗り継いで立山に出る。立山から電車で、やっと有峰口だ。
 12時に有峰口、間に合うのか?

 ということで、朝食は5時30分でお願いする。年配の御夫婦は、特に急ぐ必要はなかったようだ。ここから黒部ダムまでは、コースタイム約3時間の行程。 黒部ダムから扇沢方面に降りるとのこと。なら時間的には遅くてもよい。が、みちおに合わせて5時30分でいいと言う。申し訳ない。。。。

 9時30分すぎ、部屋に戻る。6畳にひとり、布団に入る。
 今日はつかれたなぁ〜。
 総行動時間は10時間を越えている。

 おやすみなさい。。。





9月23日(金):平ノ小屋から黒部ダムへ。アルペンルート経由で折立、帰京

 朝5時、目が覚める。今日は下山日だ。
 5時30分、朝食。たまご、のり等。
 食堂にあった双眼鏡をのぞかせてもらうと、あ! 樹林の間から対岸の船乗り場が見えた。なるほど。。。向こうからはこの小屋がわからなかったが、こちら からは向こうが見えるのだ。ここから見て人影がない場合には、船は欠航となる。


朝食


 6時すぎ、小屋を出発する。
 とにかく頑張って12時までに有峰口まで行く必要がある。バスに乗るためだ。もし間に合わなかったら、有峰口からバイクを置いた折立まで、タクシー利用 になってしまう。1万数千円の出費だ。ちなみにバス利用なら2400円だ。

 天気は晴れ。あ〜、なんてこったい。昨日晴れていれば、大展望が見れたのになぁ。
 道は、昨日とおなじく黒部湖のフチを進む。昨日ほどではないが、やはり急なハシゴの昇り降りが出てくる。


崖にへばりつくハシゴ


 少し早足で進む。だんだんとハシゴのない、安定した道になってくる。ところどころ走った。
 黒部ダムが遠くに見えた。しかし、黒部湖にそそぐ沢が出てくるたびに、深いヒダに入ったり出たりなのでなかなか近づかない。
 長い、長い。いつまでたっても、おなじような道が続く。

 1時間30分ほどで、御山谷に出る。ここで今日はじめて、数人の登山者にすれ違う。
 そしてしばらくして、ロッジ黒四に到着。そこからダムまではコースタイム25分。しっかりした道なので、走った。今日は休日だ。観光客で混雑する前にア ルペンルートを通過したい。

 ダムが見えた。観光客が散策している。そんな中をサックを背負ったまま、走った。みんな奇異な目で見る。当然だ。へんなやつ! と思われたに違いない。

 トンネル内を走って、ダム内のケーブルカー乗り場到着。
 時刻は8時40分ごろだ。ちょうど8時50分発が改札されようとしていた。
 人が大勢いる。いまま でほとんど人に出会わない状態にあったので、大勢の観光客がなんだかいやなものに見えてしまう。
 急いでチケット売り場でチケットを購入する。
 はぁはぁはぁ。。。。息が荒く、汗だらけ。観光客から見れば、こっちがいやなものだろうなぁ〜。

 サイフの入った袋ではなく、PHSの入った袋をまちがって出してしまう。ありゃ、間違えた。あわてない、あわてない。。。
 PHSをジャージスボンのポケットに入れる。サイフを取り出す。
 黒部ダムから立山駅までの通しチケットで、6560円。10kg以上の荷物は荷物代も取られる。量りで測ると14kg。ありゃりゃん。荷物代400円。
 とにかく、お金がかかる!高いぞ!
 もし長野側(扇沢) へ下るのであれば、1260円で済んでいた。計画ミスだ。。。。

 改札時、ロープウェイの整理券を受け取る。番号は7番。

 これから室堂に向かう登山者、アルペンルートの観光客にまじって、まずはケーブルカーに乗る。
 まだ朝早いので、それほどの混雑ではない。これから込むんだろう なぁ。
 真っ暗な急勾配トンネルをケーブルカーは登っていく。真ん中で下りとすれ違う。そして黒部平到着。急いでロープウェイ乗り場に向かう。

 ロープウェイ改札へ行くと、あれま! 整理券5番の方のみ乗れるという。自分の整理券は7番だ。
 なんてこったい!急いでいるんだからすぐに乗せてくれよ!
 この整理券 制度は、ここのおみやげ屋でおみやげを買わせる策略にちがいない! 
 と、少々あたまに血が上る。
 なにせ 「有峰口12時まで」 がかかっているので気があせっ ていた。が、冷静になって見ていると、たしかに混雑している。これでは仕方がない。はぁ。。。

 7番整理券の改札は9時30分。まだ30分ほど時間があるので展望台へ出る。そこからは大展望が広がっていた。観光客はこれを見て喜ぶんだろう なぁ。。。
 目の前に立山。立山へロープウェイが延びている。まだ紅葉には早い。紅葉時はきれいだろうなぁ。。
 一ノ越から大斜面御山谷が広がる。昔、ここをスキーで滑ったよなぁ。また滑りたい なぁ。
 振り返ると赤牛岳。あ〜、昨日登ったピークだ。昨日の暴風雨がウソのように、きれいなピークが見える。
 近くにいた観光客が案内板を見て、赤牛岳を指さしながら、
 「あれが赤牛岳だって」
 と言っている。
 「自分は、昨日、あそこに登ったんですよ!!」
 と言いたくなるのを、グググっと堪えて、展望台をあとにする。


展望台から立山(正面)を見る。
中央に見える建物は、ロープウェイ終着駅。
ここから終着駅までロープウェイであがり、
終着駅から立山の真下をトロリーバスでトンネルを抜けて、
立山の向こう側の室堂に出る。


 9時30分、ロープウェイに乗り込む。ほぼ満員だ。
 ロープウェイは急斜面を登っていく。途中に支柱のない構造だ。
 谷間に雪渓がすこしだけ残っていた。観光客が、
 「雪だ!雪だ!」
 と喜んでいる。
 「さすが山は寒いんだね。もう雪が積るんだ。。。」
 と言っている。
 「ちがうよ! 春の雪の残雪だよ!」
 とつっこみたくなるのを、ググっと堪える。

 ロープウェイを降りてすぐにトロリーバスに乗る。
 ここにも展望台やみやげもの屋があるが、いまのみちおには関係ない。もしこのアルペンルートに、観光代というものが含まれているのなら返してもらいたい くらいだ。みちおはいま、単なる交通機関として利用している。
 トロリーバスは整理券なしですぐに乗れた。真っ暗なトンネルの中をトロリーバスが行く。途中、立山の真下を通過し、対向のバスとすれ違う。向こう側のバ スの方が混んでいるようだ。

 さきほど入手した時刻表を見ると、次に乗る高原バスの室堂からの出発時刻は10時だ。このトロリーバスは室堂に9時55分到着なので、乗り換えが、わず か5分しか余裕がない。その次のバスは10時40分 になってしまう。

 トロリーバスが室堂に到着した。あわててトロリーバスを降りる。実はこのときに、とある問題を起こしていたのだが、この時には気がついていなかった。
 走って高原バス乗り場に直行する。10時のバスの乗り込みがちょうど始まったところだ。 間に合った。

 10時のこのバスに乗れれば、「12時前に有峰口に着く」 は、もう大丈夫だろう。ほっ。ちょっと落ち着く。
 バスの終着地 「美女平」 まで約50分だ。ゆっく りできる。
 バスは室堂を出て、高原をくねくねと下って行く。バス内には観光案内のアナウンスが流れ、名所ごとに解説してくれる。
 ふぅ〜ん。
 途中、称名滝が見れるところで、バスはゆっくり運転になってくれたが、ちらりと見えたのちすぐにガスが かかってしまった。

 バスが美女平に到着。
 美女平からは、ケーブルカーに乗り立山駅へ。
 そして、立山駅から立山電鉄の電車に乗る。
 客のほとんどいないワンマン列車。2駅で有峰口駅に到着した。
 時刻は11時40分すぎ。
 よかった!間に合った!


立山電鉄のワンマン電車


 有峰口駅で電車を降りたのは、みちおともう1名の男性の、計2名のみだった。
 無人駅だ。駅前にはバスが待っていた。


有峰口駅


 折立行きのバス出発時刻は12時30分だ。出発まで50分ちかくある。しかし、自分が乗った電車以降、電車は到着していない。すなわち、あの電車にのれ なかったらこのバスに乗れなかったということだ。よかった。間に合って。
 駅前に座り込んでバスを出発を待つ。
 いっしょに降りた男性と話をすると、彼もこのバスで折立へ行くとのこと。今日は太郎平小屋 泊まりとのこと。

 駅にバスのポスターがあったのでふと見ると、東京−富山間の深夜バスが載っていた。
 そうか! 
 東京−有峰口間の深夜バスはなくなってしまったが、東京− 富山間の深夜バスに乗り、早朝に出る富山−折立間のバスに乗れば、折立に早朝に着くことができるのだ。むむ、気付くのが遅かった。

 12時30分、わずか2名の乗客を乗せてバスは出発した。ちなみに乗員も、車掌と運転手の2名だ。

 数日前にバイクで登った有峰林道をバスは登っていく。とても狭く荒れた林道を、バスの運転手はみごとなハ ンドルさばきで登っていく。感心してしまう。

 13時すぎ、折立着。
 バイク、無事再会! よかった〜。

 荷物を整理していると、あれ? あれ? あれ????
 PHSがない!!
 どこにやったっけ? 
 たしか、黒部ダムのチケット売り場で、サイフと間違えてザックから出した覚えがあるぞ。。。。
 う〜〜ん、どこにいったんだ?
 ない。ない。ない。。。。
 せっかく無事に山行を終了させたのに、最後の最後でPHS紛失!
 ちょっと、うつになる。
 しかたがない。。。

 荷物をバイクにくくりつけて出発だ。
 帰りは、有峰口へ降りるのではなく、ショートカットで神岡町へ降りるルートをとることにした。山の中を走る林道なの で、途中でオフロードになってしまうことを心配したが、バスの運転手に聞くと、神岡町まですべて舗装された走りやすい道だと教えてくれた。
 走ってみると、有峰林道よりも全然走りやすい道だった。

 さて。温泉に入ろう!
 が、今日は連休初日である。どこも混雑しているだろうなぁ。。。
 候補として新穂高温泉のバスターミナルにある無料温泉を考えた。でもでも、混雑ぶりを考 えると、躊躇する。
 ということで、往きに入った福地温泉へ行くことにした。あそこならすいているだろう。

 案の定、福地温泉はすいていた。
 温泉に身をしずめる。ふにぃ〜。気持ちいい。
 長い山旅、おつかれさまでした!
 
 バイクで安房峠を越え、松本から中央高速道路にのり、たいした渋滞もなく帰京した。
 無事、自宅へ。。。
 疲れた〜!!



後日

 自宅。
 次の日の朝。
 電話が鳴った。黒部観光の方からだ。
 PHSを拾ってくれたという。やった〜!
 このようなこともあろうかと、PHSの裏に自宅の電話番号を書いておいたのが役に立った。
 トロリーバスの中に落ちていたという。そうか。。。ジャージのポケットにいれた状態で、トロリーバスが室堂駅に着いたときに、高原バスに間に合うように と、あわててトロ リーバスを降りたっけ。あのときに落としたんだ。。。。

 PHSは後日、無事、着払い便で送られてきた。よかったっと。
 黒部観光さん、ありがとうございました。



おわりに

 前々より行きたいと思っていた、日本最奥の温泉「高天原温泉」。
 前々より行きたいと思っていた、北アルプス屈指のロングルート「読売新道」
 この2つを結んだ今回の山行、無事、実現しました。
 「高天原温泉」 は想像以上にすてきなところでした。
 「読売新道」 は天候が悪く楽しめませんでしたが、暴風雨の中の縦走もいい思いでです。

 さて。つぎはどこに行こうかな。。。

おわり。


 長文、読んでいただきありがとうございました。





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