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[3日目]

12月25日(日):入山。タカカウ滝シェルター泊。

 朝7時少し前に起床。レストランへ向かう。
 しかし7時から開くはずのレストランが開いていない。あれ?

 なんと、クリスマス特別朝食ということで、今日は8時にオープンだという。なんてこったい。
 もし昨日からわかっていればなにか買っておいて部屋で食べていただろう。いまから外に買いに行くわけにもいかない。
 しかたがなく一旦部屋に戻る。時差ぼけで眠いのでベットに入ってまどろむ。

 8時、再びレストランへ。個々のオーダーもできるのだが、今日はクリスマス特別ビッフェが用意されている。ただし通常のビッフェよりも少し高い値段設定 がされている。まあ仕方がない。その特別ビッフェにした。
 ハムやら、ベーコンやら、クロワッサンやら、くだものやらを皿に盛る。おいしい!


クリスマス特別ビッフェでチョイスしたみちおの朝食


 レストランの天井からは、ロッキーマウンテン開拓時に活躍した登山家たちの名前と肖像が書かれた垂れ幕が並んでいた。開拓者は英雄だ。

 部屋に戻り荷物を別館の前に置いておく。フロントでチェックアウト。
 山行に必要ないものを小さなバッグにまとめて、フロントに預かってもうらうようにお願いした。快く引き受けてくれた。
 昨日、ビジタセンターのBOXに登山届けを置いて来たものの、正式に渡すことができなかったので、フロントの人にも登山届けを渡す。
 「30日の夜にまたここに戻ってくる。万が一戻ってこなかった場合はビジターセンター、あるいは、警察に連絡してほしい」
とフロントの女性にお願いする。

 ロビーの公衆電話からタクシーへ電話をかける。10分ほどでタクシーがやってきた。
 「ヨーホーバレーの入り口まで」
と言っても始めは理解してくれなかった。ホテルのフロントが地図を用意してくれようとする。が、なぜか突然運転手が行き先を理解した。
 「そこまで、****ドルだ。いいか?」
と値段をずばり言ってくる。「いい」 というしかない。まあ問題ないだろう。
 タクシーを別館にまわしてもらい、荷物を積み込む。
 もう8時50分すぎだ。

 ハイウェイ国道1号線を西に進む。
 「どこから来たのか?」
 「日本から」
 自己紹介をお互いに行なう。運転しながら運転席から後ろへ握手する。おいおい、あぶないぞ。
 日本語を少し知っているという。片言の単語を並べてきた。日本人観光客を時々乗せているのだろう。

 道路が結構凍結している。自分で運転しているのではなくタクシーの運転手さんに任せているのに、少し怖い。やはり去年の事故を思い出してしまう。レンタ カーではなく、バス&タクシーという計画でよかった。

 レイクルイーズとヨーホーバレーの間には、1時間の時差がある。タクシーの中で時計を1時間戻す。

 大きな下りカーブにさしかかる。
 「先日、ここで大きなトラックがスリップして、あのカーブの先の林の中につっこんだんだよ。ほら、あとがあるだろう。」
とタクシーの運転手さんが言う。
 「我々は、去年レンタカーで来て、ゴールデンの町の近くのカーブでスリップしてコンクリートに突っ込んだ。だから今年はタクシーにした」
という話をすると、それが正解だ、と同意してくれた。そして、
 「アナタタチハ、バカ ジャナイ!」
 と日本語で言う。だれだ、こんな日本語を教えたのは。

 ハイウェイを降り、0.5kmほど雪道を入ったところでヨーホーバレー入り口に到着した。レイクルイーズから約30分だ。
 そこは大きな駐車場になっている。しかし車はない。除雪車が駐車場の雪をかき分けていた。
 タクシーの運ちゃんとはお別れ。名刺をもらっておく。

  天気はなんとポツリ、ポツリの雨! マイナス20度の世界を覚悟してきたのに、雨とは。。。。
 出発の準備をする。スキー板にシールを張り付ける。除雪車が近づいて来て運転手が降りて来て声をかけてきた。小屋まで行くことなどを話す。


ヨーホーバレー入口

 さて。出発だ。時刻は8時15分。
 みちおの荷物は、超巨大になってしまった。大きなザックだけでは足りずに、そのザックの後ろにさらにザックを重ねる親子亀になってしまった。背負う。 めっちゃくちゃ重い。この先、大丈夫だろうか。

 しばらくは、ほぼ水平の広い道を進む。トレースがひとつだけついている。数日前のトレースだろう。その上から雪がかぶっている。くるぶしより少し上くら いのラッセルを進む。
 すぐに、ロッジ村が出て来た。おそらく夏はハイカーで賑わうのだろう。いまは全く人がいない。ロッジも閉鎖されている。
 ロッジ村に公衆電話ボックスが建っていた。もし使えるのなら、かえりのタクシーをここから呼べるぞ、と思いつつも、BOXの中を確認することなく通り過 ぎてしまった。

 ちょっとした坂を登ると、スパイラルトンネルの展望台だ。スパイラルトンネルとは、大陸横断鉄道が急坂を登るために円を描きながら登っていくトンネル だ。
 もう大分歩いているのだが、このトンネルの展望台ということは、ヨーホーバレーのまだ入り口部にいることを意味している。ここからヨーホーバレーに入っ ていく。
 先は長い。

 やや登りの広い道を進む。
 くるぶしより少し上くらいのラッセルなのだが、雪が雨を吸い込んで、どんどん重くなっていく。しかもベトベトになって、スキー板にベッタリと張りついて いく。板を前に進める。板は雪の中にもぐってしまう。ずっしりと重い雪の乗った板を持ち上げて板の上の雪を振り払うが、べとついて1回では払いきれない。
 そんなことの繰り返しだ。まるでジムのトレーニングマシンを使っているような感じだ。それが延々と続く。
 いままでいろいろなラッセルを経験してきたが、くるぶし程度でこんなにも疲れるラッセルは初めてだ。日本の厳冬期の腰程度のラッセルよりも体力を使うか もしれない。


ヨーホーバレーを振り返る

 そして、荷物もたいへんなことになってきた。雨を吸ってどんどん重くなってきたのだ。異常な重さになってしまった。
 休憩時にザックを下ろす。そしてふたたびザックを背負うとき、一旦ひざの上にザックを載せる。通常、そこから勢いをつけて背中に回すのだが、いまのこの 荷物は、どうにもこうにも、ひざから背中へ、勢いをつけて回すことができない。渾身の力をこめてゆっくりと背負うしかないのだ。
 こんなに重くなった荷物、いままで経験がない。

 異常に重いラッセル、異常に重い荷物、つらい、つらい、つらすぎる!
 そして日が暮れてきてしまった。いまの時期、ここでは4時30分ころには日が暮れ始める。
 あっという間に暗くなっていく。
 ヘッドランプをつける。ヘッドランプに照らされる雪面だけを見て黙々と進むしかない。道は広く、また、わずかながら残っているトレースを追っていくので 迷うことはない。
 進んでも進んでも、先は長く、延々と道が続く。
 つらすぎる。
 もしかしたら、10月の日本山岳耐久レースでの夜間の過酷な走りが、いま役にたっているのかもしれない。

 やっと、タカカウ滝(Takakkaw falls)の駐車場に出る。
 今宵の宿泊地であるタカカワピクニックシェルタはあと1kmほどか。

 建物が見えた。
 やった!
 やっとタカカワピクニックシェルタに到着だ。はぁ。。。。
 時刻は、午後7時。
 中に入る。誰もいない。5m×6mほどの小さな建物。この建物は、夏にキャンパー達が雨の日に食事を作るための簡易小屋だ。
 四方の壁は、すべて下部に10cmほどの隙間があいている。密閉小屋ではないのだ。
 中にはピクニック用のテーブルが4つ。そのうちの3つのテーブルの上に分厚いマットが置かれていた。
 中央には薪ストーブがある。いまは薪ストーブを付ける気力はない。とりあえず夕食だ。
 ここのシェルタでは、簡単に作れる山用インスタントを考えていた。でも、ラーメンにしよう。ラーメンが食べたい。そして重い荷物をなるべく早く減らすた めに、野菜類もつかっていこう。
 う、うまい。。。。。くったくたの体にしみていく。。。。


サッポロ一番ビーフ味


夕食....サッポロ一番ビーフ味ソーセージ&野菜入り


 島津さんと、これから先のことを話し合う。
 明日はスタンレーミッチェル小屋まで行く計画だ。距離は今日とおなじくらい。10km以上ある。そして途中には急な登りがある。
 この雪の状態、そして今のくたくたの疲労から考えてとても到達できるとは思えない。途中ビバークになってしまう。
 そして、2日間かけて小屋に入ってもこの雪では上部での楽しい滑りは期待できないだろう。
 このタカカワ滝ピクニックシェルターをベースにする案もある。しかしスタンレーミッチェル小屋のガスを使うことを前提としている我々には、ここでは燃料 がない。それにこのシェルタは居心地悪いし。
 さて、どうする?

 結論は、
 「もう明日下山しよう!」
 今回はあまりにもひどい雪だ。これではしかたがない。明日は下山し、あさって以降の空いた日は、レイクルイーズ周辺の山へ日帰り入山するか、あるいは周 辺のスキー場へ行こう。

 ピクニックテーブルの上の分厚いマットの上でシュラフに入る。寝相が悪いとテーブルから落ちそうだ。

 今日は、ものすごくたいへんだった。つかれすぎ。。。。。
 おやすみなさい。




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